第6話
3週間が経った。その間私は一度も寮を出ず、大学の授業も欠席していた。
「また手紙来てたよ」
2週間くらい前から、手紙が届くようになった。送り主は
「捨てといて」
読んだら会いたくなってしまうだろうから、私はいつも理子にそう伝える。
「事情はわかるけどさ、たまには読んであげてもいいんじゃないかな。
「……どうしたの」
不意にでた疑問の声が気になった。
「なんか、送り主が違うの。
「ちょっと見せて」
いつもとは違う茶封筒に、
「拝啓落葉の候、いかがお過ごしでしょうか。私は
中身を見るとそんな言葉から始まって、後に続いている。
最初は無視しようと思った。でも最後の、「来てくれるまで毎日、決まった時間に指定のカフェで待つ」という言葉が私を引き留めた。
「負担を負わせてしまう」
最終的にそんなことを理由にして、翌日、私は指定されたカフェへと向かった。
「こんにちは。昨日は急にごめんね。来てくれてありがとう。なんでも注文してよ」
店に入るとスーツ姿の
「来てくれたってことは、まだ叶のことが好きと捉えていいのかな」
しばしの沈黙の後、注文したコーヒーが運ばれてきたことを
「君の意思を
どう答えていいかわからず沈黙していると、彼は優し気な声で催促する。
「好き……です」
「……そっか。よかった。嫌いになったのかと心配だったんだ」
すると
「でも、こんな想いを持っちゃ……」
「少し、僕の話をしてもいいかな」
『いけない』と続けようとして、
「……どうぞ」
「ありがとう」
そして
亘さんが恵のことを好きになった時、彼女は既に
叶えられない、叶えてはいけない恋だったこと。
でもそんな矢先に、
隙があろうとなかろうと会いにいって、仕事や家事、育児を手伝い、
そうして数年後、見事に
「こんなところかな」
「……。後ろめたさとかは、なかったんですか」
話し終わった彼に
「まったく、ないよ。むしろ絶対に手に入れてやろうと思ったね」
「でも、倫理的に」
「そんなの関係ない。むしろ倫理がどうとか言うんなら、僕こそ彼女を手に入れるべきだと思ったね」
意味を理解できない私を
「僕は
もし彼女に先立たれたって、絶対に忘れない。ましてや、その気持ちを抱えたまんま他の人と付き合ったり、結婚したり、子どもを作ったりなんて絶対にしない!
僕は絶対に彼女だけを愛する!そのためならなんだってする!倫理的におかしいことも
だからもし僕が
だから僕は……!香苗と一緒にいたいって夢を、諦めたりなんかしない!!!
だから、香苗も……。諦めないでほしい」
段々とヒートアップしていく
「僕と私の問題」?「私と、一緒にいたい」?
「……少し、やりすぎたかな」
戸惑う私を前に
そして店の入口に向かって手を挙げたかと思うと、
「過去の話以外は全部、
びっくりして固まる私に、
「それじゃあ、あとは二人でね」
彼は伝票を取ると席を立ち、店を後にした。
「
瞬間、涙がこみあげてきて思わず泣いてしまった。
さっきの言葉の数々が、頭の中で
そんな状態の私を無視して、彼は続ける。
「また、僕と付き合ってくれますか」
こんなの、胸を張れた恋じゃない。美しくなんかない。不気味で、おぞましくて。びっくりするくらい汚れてて。
でも、それでも。私は。
彼と一緒にいたい。
「はい。よろしくお願いします」
私の恋は四次元を越えて。 葉式徹 @cordite
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