青春が、人生が、音楽だ


幼い時から音楽に包まれるように生きてきた主人公の蔵土佳音。音楽が大好きな母親の影響で大声で歌うことが大好きな彼女だが、ある日「慰問」という名のカラオケ大会で歌声を披露するも周囲からノイズと揶揄され心を塞いでしまうのです。大好きな歌を排除しようとする心の葛藤が痛いほど伝わってきます。

そんな打ち拉がれた心を救ったのがギタリストの耶麻人でした。気さくに話しかける彼に突っかかっても次第に突き動かされていく心。何気ない会話で心を通わせ、彼女の気持ちが角が取れるように綻んでいく、その先に――歌に対する心の強さへと変わっていく。

心の機微が繊細で美しく、とても読み応えがあります。
個人的にギターの弦に近い感覚です。
ライブの光源を収束し輝ける一弦のような美しさと、長く弾いても切れようとしない芯の力強さを感じます。

君が教えてくれた。
もう、音楽なしでは生きられない。
ハートに火をつけろと、心が叫びたくなる作者渾身の一作です。