第23話 終演の混沌
邪神会議から数日が経った。俺の前に広がるのは、かつての平和だった世界とは程遠い光景――崩壊しつつある空間と、歪み続ける現実が混ざり合っている。暗黒のファラオ団がついにその切り札を用い、アザトースの完全覚醒を試みているのだ。
「主よ、彼らは既に限界を超えた領域に踏み込んでいます。このままでは宇宙そのものが崩壊します。」
ニャルの念話が耳元で響く。
俺は拳を握りしめた。この世界を守るため、俺の力――アザトースの半身たる混沌の力を完全に解放する覚悟が求められていた。
「…ここまで来たら、もう迷う理由はないな。」
俺の隣には、友人であり、時に頼れる味方でもあるハスター。黄衣の王としての姿を纏い、静かに頷く。
「融君、僕も全力で君を支える。黄衣の王としての務めは、この世界を守ることだからね。」
そして、俺の背後にはシュブ=ニグラスが立っている。彼女は師として俺を見守りながら、その膨大な力で現実の崩壊を一時的に食い止めていた。
「弟子よ、私の教えを超えてみせろ。それが最後の試練だ。」
さらに、橘も護符を掲げながら俺に力強い声をかけてくる。
「阿佐間君、絶対に負けないで!私も精一杯サポートするから!」
すべてが終わる戦い――俺は仲間たちの力を背に、最終決戦の場へと足を踏み入れた。
決戦の場:アザトースの門
暗黒のファラオ団の幹部たちが陣取る中心には、歪んだ光が収束する巨大な門があった。その向こうには、狂気そのものの存在――完全に覚醒しかけたアザトースの影が見える。
「来たか、阿佐間融。」
暗黒のファラオ団の指導者が俺を見据える。その目には狂気と歓喜が宿っていた。
「お前の存在こそ、全ての鍵だ。お前が混沌を解放すれば、この門は完全に開く。さあ、我らの神を目覚めさせろ!」
「ふざけるな…!」
俺は邪眼を解放し、彼らの術式を封じるべく力を放つ。しかし、門の力はそれ以上に強大だった。
「主、迷わないでください。貴方の邪眼は世界を超える力を持っています。」
ニャルの言葉に、俺は躊躇を振り払うように力を込めた。しかし、その時だった。
「阿佐間君!」
橘の叫び声が響き渡り、彼女が前に飛び出してきた。幹部たちが放った攻撃が彼女を狙っていたのだ。
「橘さん!」
俺はとっさに彼女を抱きかかえ、邪眼の力で攻撃を防ぐ。だが、その隙を突いて門はさらに開き始める。
「くそ…!」
ハスターがすかさず黄金の光を放ち、門を抑えにかかる。
「融君、急いで!このままじゃ僕でも抑えきれない!」
シュブ=ニグラスも触手を伸ばし、門の力を削ぎ落とそうとしているが、限界は近い。
「……仕方ない。」
俺は覚悟を決めた。
「ニャル、最後の力を貸してくれ。俺が全てを終わらせる。」
「承知しました、主。」
ニャルが俺の後ろに立ち、全ての力を注ぎ込むような感覚が広がる。邪眼が完全に開き、俺の体から膨大な混沌のエネルギーが溢れ出す。
混沌の解放
「これで終わりだ――!」
俺の邪眼が門に向けて全ての力を放つ。同時に、ハスターとシュブ=ニグラスも全力で門を押さえつけた。その圧倒的な力が門を包み込み、徐々に崩壊していく。
暗黒のファラオ団の幹部たちは次々と倒れ、指導者も狂気の叫びを上げながら消え去っていく。
やがて門は完全に消滅し、周囲の狂気が静まった。
戦いの後
全てが終わった後、俺は地面に崩れ落ちた。
「融君、大丈夫!?」
橘が駆け寄ってくる。その顔には安堵の色が浮かんでいた。
「なんとか…な。」
ハスターも隣で微笑みを浮かべながら言う。
「やっぱり君は僕の友人に相応しいよ。立派だったね。」
シュブ=ニグラスは満足げに頷きながら一言。
「よくやった、弟子よ。」
ニャルは俺の隣で控えめに言葉を投げかける。
「主、貴方が混沌を制御できる存在であることを証明しましたね。これからも、どうぞよろしくお願いします。」
「…お前は本当に楽しんでるだろ。」
そう言いながらも、俺は仲間たちの顔を見て少しだけ笑った。この戦いで失ったものも多いが、得たものも大きい。それが、これからの俺の支えになるだろう。
そして、俺たちは再び歩き始めた。終わりなき混沌を超えた先に、いつか穏やかな未来を取り戻すために――。
【完】
転生したらクトゥルフ神話の力で無双かなって思ったらめんどい事がありすぎて辛いンゴ @LAINtyuni
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