第57話 薫の気持ち

★side:笹内薫


「薫ちゃん!仁美ちゃん!これ可愛くない!?」

「そうだね。凄く可愛いと思うよ」

「そうね。きららちゃんに似合いそうね」

「それじゃあこれにするね!」


 きららちゃんは自分の服を長い時間選んだ後にそう言ってレジに行った。


「楽しそうだねきららちゃん」

「えぇ。でも私も聞いたけど今までの事を考えると楽しそうで良かったわね」

「それはそうだね。幸せそうな事に越したことはないしね」


 実際にきららちゃんは出会った時と比べて笑顔が自然になってる気がする。

 と言っても別に前から無理してるなって思っていた訳じゃないけど、今思えばそんな気がするってだけなんだけどね。

 きららちゃん自信も気が楽になって今は凄く楽しいって言ってたしね。

 

 ――それから私たちはお店を出て歩いていた。


「そろそろ解散の時間かな?」

「そうだね。そろそろ暗くなって来る頃だしね」

「そうね」

「それじゃあ、話しながら帰ろっか」

「「うん!(そうね)」」


 そうして今日は午前中から遊んでいたのだが、私たちは帰る事になった。


 帰っている途中私はちょっと気になっていた事があったので、どうやって聞こうか迷っていた。

 これは私の勘違いかも知れないけど、最近きららちゃんは海斗君の事を意識しているように見える……いや、実際にはきららちゃんは海斗君の事が好きだけど、自分でも気付いていない、そんな感じがするのだが、それはほぼ間違いないと思う。

 まぁ、正直に言うと海斗君と一緒に居る時間はきららちゃんも多いから、そうなるのも無理はないかなって思っている。それ位海斗君の魅力は凄い。

 それに海斗君も私がきららちゃんには優しくねって言った事が、理由の一つかもしれないけど、きららちゃんの事を大切にしている様子だったしね。

 

 私は前にきららちゃんが海斗君の事を好きになったらその時は一緒に……そんな事を考えた事もあったのだけど、その考えは今でも変わっていない。知らない他の女子だと嫌だけどきららちゃんだったら大丈夫、それも変わっていない。

 何度も考えたし、本当に嫉妬もしないのか?それも考えた。

 でも海斗君ときららちゃんがイチャイチャする、そんな場面を想像しても嫉妬どころか、不思議と嬉しい気持ちになっていた。


 それで私は思った……私は大好きな二人には幸せにになって欲しいし、きららちゃんともずっと仲良くしたい。

 仮にきららちゃんも含めて三人で付き合う事になっても、将来的にみんなで幸せに過ごせるビジョンが見えた……私の勝手な願望だけど、そんな未来も良いなって思った。それに海斗君は基本的に悪く見られがちだから、一緒に海斗君の良さを共有できるのも嬉しいし……


 それにもしそうだとしたらきららちゃんは初恋って事になるし……私の初恋は余りいい思い出が残っていないので、きららちゃんには同じ思いをしてほしくない。

 勿論海斗君の意思が一番大切だけど、海斗君がきららちゃんの事が好きならば皆で仲良く出来るんじゃないだろうか……海斗君がきららちゃんの事を恋愛対象として見ているか……それはは分からないけどね。


 そう思った私はまずは仁美ちゃんに話を振る事にした。

 まぁ、それ以前に気になっていた事でもあるし丁度良い。


「そういえば仁美ちゃんって海斗君の事、最初から怖がって無かったよね?」


 私ですら最初の頃は海斗君の事はちょっと怖かった。

 勿論それは入学して最初の一週間くらいで、一緒に夜を過ごした次の日からは全然怖くは無かったけどね。

 でも仁美ちゃんはクラスの人が誰も海斗君に話しかけないのに、一人だけ提出物を出してとか、遅刻しないでとか話しかけていた。

 それを見たクラスメイト達は凄く驚いていた。

 今思えばそれもクラスメイト達が、仁美ちゃんを勘違いして怖がっている理由の一つになっていたのかも……


 私がそんな事を思っていたら仁美ちゃんが言った。


「え?そうね。怖がっては無かったわよ。噂は聞いてたけど別にどうでもよかったもの……それに明らかにあの時の彼は褒められる感じじゃなかったから注意するのは当然よ。大体私は不確定要素の多い噂なんて信じないしね」

「本当に噂なんて信じるべきじゃないよねー。私も自分で見て確かめるタイプだからその気持ちは分かるかも。まぁ、最初に海斗君と話した時はいきなりでちょっと失礼な感じになっちゃったけどね……」


 きららちゃんと海斗君が初めて話した時の話は一応聞いている。

 海斗君も驚いてはいたけど、俺を怖がっている感じはそんなにしなかったって言ってたしね。

 そう考えると、私だけが海斗君の噂を聞いて信じちゃったんだね……あの頃の私は今よりもずっと弱かったとはいえ、ちょっと悔しいな。

 まぁ、今更それを気にしていても仕方ない事なんだけどね……


「二人ともそうだっただね……私は海斗君の彼女なのに最初は怖がってたのに…」

「別に良いんじゃないそれは?話さないと人の事なんて分かる訳ないものね。それに過去にそう思っていても今は違うんでしょ?」


 私に仁美ちゃんがそう聞いてきた。

 それは当たり前だ。私は誰よりも海斗君が良い人だって知っているし、誰よりも海斗君の事が好きだ。


「それは当然だよ!」

「でしょ?だったらそれでいいじゃない。王豪君だって噂は全部が間違っている訳じゃないって言ってたし、薫ちゃんがそれを気にする事もないと思うけれどもね。彼の事だから彼もそんな事は気にしてないだろうしね。」

「そうだね。大体私たちから見て二人は本当にラブラブだもん!」


 私は二人の言葉を聞いて思った。

 確かにそんな事を気にしていても仕方がないし、海斗君も全然気にしていないだろう。

 だったら気にしている時間があればもっと海斗君の事を思って尽くした方が良いと。


 ……ていうかきららちゃんが海斗君の事をどう思っているのかを確認しようと思ってたのに、全然そんな感じじゃなくなってるよ。

 でも気になるし……やっぱり聞きたいな。


 私はそう思ってちょっと遠まわしに聞くことにした。


「ありがとう二人とも。もう気にするのは止めるよ。それで……きららちゃんは最近どう?海斗君の家で働くのももう慣れて来た?」

「うん!もうすっかり慣れたよ。海斗君も優しいしすっごく楽しいよ!薫ちゃんも良く来るしね」


 きららちゃんは凄く良い笑顔でそう言って来た。

 私はそんな楽しそうに笑うきららちゃんを見て思った。

 これだけの質問じゃよくわからないけど、別にそんな急いで知る必要もないんじゃないか。きららちゃんは最近やっと自由に恋が出来るようになったばっかりだし。


 仮に好きなんだとしてもこういう事には時間が必要だ……初恋なら尚更。

 それに私が必要以上にお節介するもの違うかもね……恋は凄くデリケートな問題だし……もし困っていたら私が助ける位が丁度良いのかな。

 

 私がそんな事を思っていると仁美ちゃんが言った。


「それにしても王豪君って何者なの?」

「それってどういう事?」

「薫ちゃんから色々と話は聞いているけど、彼ってなんでもできるじゃない?とてもじゃないけど同じ高校一年生とは思えないわよ」

「たしかにそうだよね……それにすっごく優しいし、カッコいいのに性格まで良いもんね。私も友達は多い方だけど、海斗君に関しては他の人と全然違うんだよね。もちろんいい意味でね」


 二人の疑問はごもっともだと思う。

 私も最初は同じことを思っていたからね。

 でも今となってはその疑問は消えている……いや、消えていると言うよりかは、気にしなくなったと言った方が正しい。

 海斗君と一緒に居て分かるけど、海斗君は確かに大人っぽいけど、私に甘えてくれることもあるし可愛い所もある。

 大体海斗君は海斗君だしそれ以上でもそれ以下でもない。

 何者か……そう聞かれたら答えは簡単だ……海斗君は私の大好きな彼氏、それで充分だ。まぁ、私だからそう思えるだけで、海斗君の事を分からない人からしたら全然答えにはなってないんだけどね。とにかく素敵な男性……それが海斗君だ。


「そうだね。確かに海斗君は凄いし同世代の人とは違うのかもね……でも私はそんな海斗君が大好きなんだ……」

「それもそうよね……」

「本当にラブラブだね……ちょっと羨ましいな……」


 きららちゃんは小さな声でそう言った。 


「きららちゃんだって素敵なんだから直ぐに良い人に出会えるんじゃない?」

「そう……だね……そうだと良いな」


 そして仁美ちゃんがそう言うと、きららちゃんは微笑んでそう言った。

 そんな時だった……私のスマホに電話が来た。


「あ、海斗君からだ!」

「出て来て良いわよ」

「いってらっしゃい」

「そうだね。ちょっと待っててね」


 そうして私は二人から距離を少し開けて電話に出た。


『どうしたの海斗君?』

『薫、実は……』


 海斗君からきららのおばあちゃんから夕飯に誘われたと知らされた。

 海斗君は彼女じゃない女子の家だから伝えてくれたのだろう。

 でも、きららちゃんのおばあちゃんからって話だったら私がダメって言う事でもないし、言う気もない。

 

『もちろん薫が嫌だったら断るから思った事を言ってくれよ』


 海斗君は何でも私を最優先で考えてくれている、それが嬉しかった。


『ふふふ、勿論だいじょうぶだよ!きららちゃんのおばあちゃんのお願いだったら断れないよね!それに感謝の気持ちは素直に受け取らないと!』

『それじゃあ。夕飯はきららの家で食べて帰るな』

『うん!楽しんでね!』

『あぁ。それじゃあな』

『うん!あと、私たちももう少ししたら解散するから、きららちゃんもすぐに帰るからね!きららのおばあちゃんが待ってるんだよね。それあだったら待たせるもの悪いから行ってあげて!』

『分かった。ありがとな』


 私はそうして電話を終えた。


「きららちゃんにも教えた方が良いかな?」


 でも言わなくても良いかな……きららちゃんは驚くだろうけど、もしかしたら自分の気持ちに気付くチャンスになるかも知れないしね。

 

 今後どうなるかは分からないけど、今はきららちゃんも楽しそうだしそれでいいよね。

 

 私はそう思いながら二人も所に戻った。


「お待たせ二人とも!帰ろ!」

「そうね」

「お帰りー。凄い笑顔だけどどうしたの?」

「ううん。なんでもないよ」

「そう?」

「そうだよ!」

「ほら。二人とも行くわよ」

「「うん」」


 私たちはそう言って歩き出した。

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エロゲの強すぎる竿役に転生した俺は既にヒロインの一人を抱いた後でした…… タコタココタ @takotakokota

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