✧ エピローグ
💙
「あらあらまぁまぁ、ごきげんよう、お疲れの様子…あらあら、うふふ、すみません、冗談ですよ」
「…ありがとうございました、私の一世一代のわがままに付き合ってくださり」
「いたっ…え?話し方、ですか?…ええ、そうですね、ふふ、確かに…家族にする話し方じゃない、ですね」
「あ、そう、シエルは………そうですか、いえ、信頼出来る方の元なら、なんの杞憂もありません、ありがとうございます、彼女たちを保護してくれて」
「卒業式ですか?ええっと…うふふ、恥ずかしくって…あわせる顔がありません、魔法少女部の方には迷惑ばかりおかけしてしまいましたから…」
「私はただ、魔法少女ちゃんが幸せであれるように祈ることしかできません…きっと、思い出にできます……私は魔法少女ちゃんたちの素顔は知らないけれど、世界に真剣になれる、いい子たちばかりですから」
「………………怖くなんか、ありませんよ。私は私の願いを果たすだけですから…わたしは、【トネリコ】と成ったのですから、そこに恐怖は、必要ない」
「…あっ、そうだわ。これを持っていてください!これは…ふふ、日記です、私の大切なものなので…うふふ、大切な人に持っていて欲しいんです」
「………魔法少女ちゃんたち、お元気で」
「また会いましょう、兄さん。」
髪が青く染まり、長い髪は次第に短くなっていく。唯一残った揃いのプリムローズとダージリンの匂いが春風に吹かれ、散るように香る
マントから覗く宇宙が煌めき、雫のような瞼を閉じる
魔法少女は死ねない、魔法少女の力は魔法少女を殺せない
お互いが同じ力量で干渉しあい、自然の摂理に基づき相互作用して消えていく
彼女は今、宇宙を視ている
別の世界に住む宇宙を視る存在に魔法で干渉しているのだ
干渉して、消えていく
そうしてまた、彼女の願いは果たされるのだろう
人智を超えた力が存在を尽くすまで、ずっと、ずっと同じことを繰り返す
自分も変わらず、力を貸すのだろう
全てを隠して愛するものを守ろうとする彼女の傲慢な願いは、彼女だけを犠牲にすることで許しが降りてしまったのだから
どうしてそこまでするのか
それもこれも、知らない誰かのためになんて
数分後には起きてくるであろう彼女がどうか、まだ、愛しい人でありますように
そう願いながら託された日記のタイトルを指でなぞった。
🌈
どこまでも白い空間、いつも通り歩いているはずの足音が大きく聞こえるほど長く無音な廊下。
部活動をしている生徒たちの声と差し込む夕日が忙しく揺れる。見慣れた校舎。
6階突き当たり、右側にある真っ白な扉。
部活棟3階、中央階段から上って左側、一番端の教室。
アールグレイとプリムローズの匂いが漂っている。
扉の向こう側。
開けるとピロティ風があなたの髪や服を激しく揺らす。
あなたは匂いに頬を撫でられ、咄嗟に腕を前に出し顔を守る。
そんなあなたの様子を目の前の少女がクスクスと嫋やかに微笑みながら見守る。
ふわりと髪を靡かせ、にこやかにあなたに問いかけるだろう。
「あらあらまぁまぁ、うふふ。」
「あなたも、魔法少女ちゃんなの?」
🌈
虹のソルシエールたちへ @tororo_xox
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