第3話

 街の外れの教会、そこの隣にオレの家はある。母のハンナが教会の牧師で、父のナトリが街中の病院の医者。

 ナトリはユイを家に通すと、すぐに傷の処置をしてくれた。


 幸い、傷は浅かった。ちょっと傷跡は残るかもしれないけど、安静にしていればすぐによくなるという。


「……傷の手当て、ありがとうございました」

 ユイは、ぺこりとナトリに頭を下げる。


 ちょっと前まではもうひとりのお父さんとばかりに、ユイはナトリに甘えたり、いたずらをしかけたりしたこともある。

 でも13歳にもなって、大人びてきた。子供みたいに甘えたりしない。


「ソフィアさんの家のほうから火の手が上がっていたから。驚いた。君が無事でよかった。でも、ソフィアさんは」


 ナトリに聞かれて、ユイは下を向いてしまった。

 歯を食いしばって、涙をこらえているのが痛々しい。


「ソフィアさんなら、街の人たちが何とかしてくれてるはずだよ」

 オレは横から声をかけた。

「とりあえず、ユイはこの家にいてもらうってことでいいでしょ。いつも使っていた部屋があるんだし」


 オレに、ユイのそばにいる資格なんて、本来ない。

 でもユイの家が燃えてしまって、こいつに帰る場所はないのだ。


「コリスの言うとおりだ。ここで寝ていきなさい」

「あ、ええっと、いいんですか? ナトリさん」

 ユイは、すっかり遠慮している。


「この家にはたくさん来たでしょう。いいの。ごはんも食べていって」

 ハンナがユイの頭をなでる。


「ありがとう、ございます。お手伝いもしますから」

「そんなこと気にしなくていいの。休まないといけないし、家族みたいなものじゃない」

 ハンナは、どこまでも遠慮がちなユイの頭をなで続けた。固かったユイの表情が、ちょっと緩んだように見える。

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