第51話 売上報告
「あ~・・・・・頭が痛い。」
「全く。飲みすぎるからですよ?」
朝。
僕が頭を抱えてリビングで座っていると、レインがコップに水を入れて持ってきてくれた。
「・・・・・ありがと。レイン。」
「どういたしまして。」
「・・・・・酒は飲んでも飲まれるな。・・・・・だよ。」
ジェミが止めをさす。
はい。ぐうの音も出ません。
昨日は三ヶ月に及ぶグッズ販売の最終日。
初日以外、パニックになるから顔を出さないで欲しいとアルフィンに言われ、様子を見に行けなかった。そして昨日の最終日の閉店間際に行って、『アーツ帝国学園』の学生100人にお礼とねぎらいの言葉をかけたのだ。
流石に三ヶ月間、ボランティアでタダ働きなのは人としてどうかと思い、賃金を出すと言ったのだが頑なに断られた。それならせめてと、帽子をあげようとしたのだけれど、『それだけは受け取れません!リスナーの誇りとして、絶対に買います!』とか言われて、結局全員お金を出して買ったのだ。
因みに使徒の仲間達もお金を出して買っている。・・・・・レイン達はち~ちゃんの家庭教師代という事で、クロックさんからお金を貰っているらしい。
リスナーの誇りってなんだよ?
誇りって。
これだと僕の立つ瀬がなかったので、飲み屋を貸切って慰労会を開いたのだ。
めちゃめちゃ盛り上がった。
やっぱり全員がリスナーだから、会話も弾むし親近感もあって、皆が和気あいあいとしていて、とても雰囲気が良かった。だから僕もお酒が進む進む。
結局飲みすぎて、家に帰って【ゴースト】から解放されたら、緊張の糸が切れて一気に酔いつぶれた。
僕は水を一気に飲む。
「ふぅ。」
飲みすぎた後の水は、何でこんなに美味しいんだろう。
少し頭がまわりだすと、昨日の事を思い出す。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
「【ゴースト】様!」
慰労会が終わり、家に帰る為に【ホール】に入ろうとすると、りゅう君が僕を呼びとめる。
「どうした?」
「はい!グッズ販売の初日に約束した、【ゴースト】様の拠点が出来たら呼んでもらえる件ですが、僕の彼女も連れて来てもいいでしょうか?」
「ハハッ!そんな事か。りゅう君の彼女なら大歓迎だ。もちろん連れてこい。・・・・・だがいいのか?ちゃんと卒業してから来ても遅くはないんだぞ?」
「いえ!早く【ゴースト】様にお仕えしたいのです!出来ましたら【キューブ】で必ずご連絡ください!すぐに馳せ参じます!」
「そっ、そうか。」
・・・・・
・・・・・
・・・・・
僕は念じると、いつものスキルが表示される。
『寿命/残り1,989年』
【使徒】残り7名
ナンバー0:レイン=シルバー
ナンバー1:ジェミニ
ナンバー2:ミリオン=ロード
ナンバー6:リュート=ファーマン
ナンバー9:クロック=ロドリゲス
「・・・・・はぁ~。」
僕は表示を見ながらため息をつく。
やっちまった。
本当にやっちまった。
グッツ販売の初日の夜に、りゅう君とサシで飲みに行った時に、気分が良くて昨日と同じ様に飲みすぎた勢いで【使徒】にしちまった。
【使徒】にした瞬間に、他の【使徒】にした仲間達も表示が現れるらしく、家に帰ったら、それはもう・・・・・めちゃめちゃ問い詰められました。
結局最後は、僕が選んだから間違いないだろうという事になって終わっているけどね。
今さら酔った勢いです。
なんて、とてもじゃないけど言えなかった。
でも、りゅう君本人が凄くなりたかったみたいだし、彼女も連れて来るみたいだから、まぁ結果オーライという事で!
僕はポジティブに切り替える事にした。
すると玄関の扉が勢いよく開き、ち~ちゃんが笑顔で入って来た。
「ヒカリ様!お父さんが帰って来たよ!」
「えっ?本当?」
ち~ちゃんが僕の手を掴むと、そのまま外へと出る。そして後に続く様に仲間の皆も外へと出た。
小さな庭にいたのは、クロックさんと同行していたサスケだ。
クロックが会釈をして笑顔を向ける。
「ヒカリ様。只今帰りました。」
「うん。お帰りなさい。クロックさん。立ち話も何だし、中で話そうか?」
「いえ。ヒカリ様には、これからすぐにお連れしたい場所があります。」
「えっ?そうなの?」
「はい。・・・・・実は新しい新居が先程完成いたしまして、是非見て頂きたいのと、建築をしてもらった者達にも会ってもらいたいのです。」
「へ~!とうとう出来たんだ!もちろん行くよ!」
「そうと決まれば、すぐに参りましょう。」
そう言うと、サスケが【ホール】を開けて、すぐにクロックさんは入って行く。
「ヒカリ様~♪ お父さん達先に行っちゃったよ~。早く行こ~!」
「ハハッ。はいはい。」
ち~ちゃんは嬉しそうに僕の手を引っ張って、【ホール】の中へと入って行った。
入ると、すぐに景色が変わる。
僕は周りを見渡す。
ミリに貰った島に着いたのか、周りは自然に覆われているが、この場所だけは様子が違った。
色とりどりの花が生けられ、バランスよく木も配置された、とても広い庭園。
そして『これってどこかの旅館?』って思うほどの、大きな館が目の前にあった。
「ここが新しい新居となります。部屋は50室ありますし、台所もお風呂もトイレも全て完備しております。」
「凄いね!」
僕が驚いていると、ち~ちゃんが続ける。
「わ~♪ 凄い!凄い!お父さん!見に行っていい?」
「あぁいいよ。走って転ばないようにね。」
「うん!」
「ほら!危ないから待つっす!自分も行くっすよ!」
ち~ちゃんの後に、しずくが付いて行く。
僕が住んでいる今の家の何十倍はあろうかと思える程の豪邸。
今の僕達が住んでも、部屋は全然空いている。
これなら仮に仲間が増えても問題はないだろう。
「・・・・・まぁ、この館も仮の住まいなんですけどね。」
「ん?何か言った?」
「いえ。何でもありません。」
「そう?でもこれだけの豪邸だと、結構お金がかかったんじゃない?大丈夫なの?」
「それでしたら何の問題もありません。昨日終わったグッズ販売と、露店の売上の利益の一部を使わせてもらいますので。」
「へぇ!それは良かった!そんなに帽子が売れたんだ!」
グッツ販売は成功したようだ。
こらからも仲間が増えるなら、資金はいっぱいあった方がいい。
クロックさんは僕を見て、笑顔で続ける。
「はい。それで総売上ですが、メインの帽子の売上と、露店販売の売上も含めて・・・・・・・しめて約30億ゴールド。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
思わず声が出た。
異世界でパーソナリティしたら周りが病んだ。 もっさん @kamikazerock
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