第16話 マナ闘気術
「死ねぇ!!!」
気勢を上げて一見悪役かと思われるような台詞を吐いているのはフィオナだ。
彼女は手の平に炎球を作り出しそれを敵に投げつける。
「あちぃいいいい!!! あちちちちっ!!」
直撃した敵の男は燃え上がってのたうち回る。
「せっい!!」
ティアは大斧を薙ぎ払い、チンピラたちを複数人吹き飛ばした。
敵は防戦一方で明らかに、強さに差が見えた。
マフィアといっても所詮はこの程度なのだろうか。
「ここは私たちがやるからロイ君はそこで見ててね」
まだ手を出していないレナが俺にそう告げた。
十数人いたチンピラたちは瞬く間にレナたちに制圧されて、残りはヴェルマー一人となる。
「どうまだやる? それとも降参する?」
「降参? そりゃあ一体なんの冗談だよ。ったく、クソ役立たずどものがよ」
ヴェルマーは地面に倒れてる味方の顔を踏みつける。
「仲間じゃないのか?」
「役立たずは仲間じゃねえよ。めんどくせえ戦闘押し付けやがって」
ヴェルマーは地面に転がっていた酒瓶を拾って残っていた酒を喉に流し込む。
と次の瞬間には酒瓶だけがその場の空中に取り残されていた。
「うぐぅ」
激しい衝撃音の後にフィオナの呻き声が聞こえる。
ヴェルマーは床に転がっていた椅子でフィオナを激しく殴打したようだった。
殴打した椅子は粉々に粉砕されている。
それは攻撃の強さを物語っていた。
フィオナはふらふらとその場に倒れ込む。
そこへすぐさまエミリアが駆け寄り治癒魔法を施す。
「ああーー、今日はよく飲んだから調子がいいな」
ヴェルマーは背伸びをしながら気持ちよさそうに言う。
彼はまた酒瓶を手にしており、それを一気に流し込んだと思ったら、また姿を消した。
「うぎっ」
ティアはヴェルマーがいつの間にか手にした鉄の棒で横薙ぎに払われ、大きくふっ飛ばされる。
「ぎゃぁ!!」
壁にのめり込むほどのスピードで衝突し、そのまま気を失ったようだった。
「狂戦士か…………トリガーはアルコールか?」
ヴェルマー今度は棚のガラス窓の向こうにある高そうな酒をガラスを叩き割って取り出して飲む。
「ぷはぁっ!! ああ、その通りだ。俺は酒を飲めば飲むほど強くなる。最もあんまり量を飲みすぎちまうと俺が何やってるのか、俺自身が前後不覚になって分からなくなってしまうけどな」
「厄介だな……」
そう呟きながら今度はレナが前線へと歩んでいった。
「今ので実力の差は見せたと思ったがな。まあいいぜ、折檻されるのが好きってんならいくらでもいじめてやる!」
またヴェルマーは酒を宙に置き去りにして瞬間的に移動する。
次の瞬間、強い衝撃音と衝撃波とがその場に響き渡った。
「ほう、防ぐのか。生意気に!」
ヴェルマーの手刀による攻撃をレナはこての部分で防いでいた。
「ふん、こっちの台詞よ!」
マナ闘気術によってレナの内部に濃密なマナが蓄積されていくのを感じ取る。
彼女は薄っすらとグレーのオーラを纏う。
今度はレナの番だ。
初撃の右ストレートは躱されるが、それから一転、下段の足払いをしてヴェルマーの足を払って態勢を崩れさせる。
そしてそこから間髪入れずに中段に蹴りを入れ、それがヴェルマーの脇腹に突き刺さった。
苦痛に歪んだヴェルマーの顔面に膝蹴りの追撃が入る。
「ぐはぁ!!」
彼の鼻血が宙を舞った。
レナの一連の攻撃は流れるような美しい連撃だった。
ポニーテールにまとめられたダークブラウンの髪は艷やかに光を反射しており、その強く美しく気高い姿は正に
マナ闘気術は師匠の下で共に学んだ、マナを濃縮して戦う術だ。
通常魔術で魔法が使われる場合もマナが使用される。
例えば身体強化の魔法が発動された場合は、魔法発動の為に消費されるマナのうち、およそ30%程度しか実際には使用されない。
ほとんどのマナは魔術の専用術式を介する時、非効率に霧散するのだ。
それがマナ闘気術でマナを運用する場合、その効率は50%以上へと跳ね上がるのだった。
「これで実力の差は分かったかしら?」
今度はレナがやり返すようにヴェルマー言った。
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