第17話 勝負の行方

「ひゃははははは!! おもしれぇ!! こんな女がいるとはな!!」


 ヴェルマーは鼻血を垂れ流しながら言う。

 彼は自分の鼻血と一緒に酒を飲み込んだ、

 うぇー、気持ち悪い。


 すると今度はティアが落とした大斧を上段で振りかぶってそれをレナに振り下ろす。

 そのスピードは先程より、早くなっているように感じられた。

 しかし、ティアは彼の懐に一足早く潜り込み、みぞおちに拳をめり込ませる。


「うぇっ……」


 そして息ができなくて涙目になっている彼の右頬に強烈な右フックを叩き込み、続けざま勢いそのままに左フックも反動を利用して叩き込む。

 最後、フラフラになって倒れ込みそうになったヴェルマーの顎にアッパーカットをクリーンヒットさせた。

 ヴェルマーはアッパーカットによって少し宙に浮いた後、ドスンと勢いよく床に倒れた。


「どう、ティアとフィオナは大丈夫?」


 勝負がついたと見たレナはヴェルマーに背を向けて、負傷を負った二人を気遣う。

 しかし――――


「おい、まだ勝負は終わってねえぞ」


 いつの間にか立ち上がり、レナのすぐ後ろまで来ていたヴェルマーはレナの耳元でそう言った。

 レナは振り返りざまに裏拳を放つが、それはヴェルマーに躱される。

 そしての回転に勢いのまま右上段からフック気味に拳を振り下ろすが、ヴェルマーはそれを躱した上でレナの顔面に拳を叩き込んだ。


「ぐっ……痛ってぇ……」


 すると殴った方のヴェルマーが自分の拳を痛そうしていた。


「てめえの顔面は鉄ででもできてんのか? なんだその硬さは……」


 マナ闘気術は通常の身体強化よりも大幅に身体を強化するので、身体強化に特化した闘気術の運用をするレナほどになるとその身体は鋼鉄のように硬くなる。

 驚くべきはそのレナのスピードを少しでもヴェルマーが上回ったことだった。


「なるほど、あなたの狂戦士モードは傷を負えば負うだけ強くなるのね? 先ほどより明らかに攻撃スピードが早いもん」

「ああそうだ。これは攻撃を受ければ受けるほど強くなる。故に俺は無敵だ!」

「あら、そんなことはないわよ。それを遥かに凌駕すればいいだけですもの。流石に30%では少し低かったみたいね」


 レナはマナ闘気術のマナを更に濃縮して、彼女のオーラは薄いグレーから少し濃くなる。


「ほざけぇ、負け惜しみを! じゃあ、これについてきてみろ!!」


 ヴェルマーは懐から拳の先に爪をつける暗器を取り出して、手に装着する。

 そして目にも止まらないような速度の攻撃を両手で繰り出した。

 しかしそれをマナはなんなく躱す。

 普通の人であれば最早何をしているかもよく分からないだろう。


「その程度?」

「馬鹿な!? ぐぅぞおおおおおお!!!」


 ヴェルマーは限界を超えてさらに速度を上げるが、その攻撃はレナにかすりもしない。

 

 レナは攻撃の隙をついて軽くジャブを繰り出す。

 そのジャブがヴェルマーに直撃すると、大きな衝撃音が生じるととともに彼は後ろに大きく吹っ飛んだ。


「…………」


 彼はそのまま地面に倒れた後にはピクリとも動かず戦闘不能になっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る