第13話 馬鹿とはさみは使いよう
「ひょっひょっひょっ……」
邸宅の明かりが漏れている部屋からは聞き覚えのある商人の笑い声が漏れていた。
俺は浄氷の結晶を片手に明かりが漏れている部屋を外からこっそり覗く。
素材を手に入れたので早速渡しに来たのだが声が聞こえてきた為、こっそり聞いてみる
「今回もボロ儲けでゅふ。良いお金のなる木を見つけたでゅふ!」
「で、今回は一体いくらで売れたんだ。浄氷の結晶は?」
サイモンと向かい合って酒を飲んでいる男がサイモンに聞く。
部下と思われる男たちがサイモンと彼の周りを立って囲んでおり、彼がそこで身分が高いことが伺われた。
「白金貨3枚に金貨20枚でゅふ。ひょっひょっ、笑いが止まらないでゅふ。この調子でもっともっと搾取するでゅふ!」
サイモンは宝箱一杯に敷き詰められた金貨をじゃらじゃらと天高く掲げながら言った。
浄氷の結晶を売っただと?
霊薬の結晶の錬成に浄氷の結晶が必要という話じゃなかったのか。
どういうことだ?
「いままで何個の浄化の結晶を納品させたんだっけ? 夜の町で男に奉仕させるよりもよっぽどいい金を稼がせてんじゃねえかよ。うらやましい限りだな」
「今まで10個以上納品させているでゅふ。ヴェルマーに負けじと吾輩もなかなかやるでゅふ?」
「ああそうだな。なかなかやる」
男はヒューと口笛を吹きながら答えた。
「霊薬の結晶のレシピなんか吾輩が知るわけないでゅふ。騙されているとも知らずに、馬鹿とハサミは使いようでゅふ!」
「頭が足りない女って最高だよな。バカ女にかんぱーい!」
「乾杯でゅふ!」
ヴェルマーとサイモンはグラスに注がれていた琥珀色の酒を一気に飲み干す。
「あいつら……」
レナたちの優しく誠実な気持ちを踏みにじりやがって。
握った拳に力が入る。
「くぅーー! 効くでゅふーー!!」
「そういえばこの前納品したガキはどうなったんだ?」
「ひょっひょっひょっ、ロリコン趣味の変態貴族に高値で売れたでゅふ。もっと少女を攫ってくるでゅふ。吾輩が売りさばいてやるでゅふ!」
もう聞くに耐えない。
あいつら、とっ捕まえて警吏に突き出さそう。
立ち上がり、商人の屋敷に乗り込もうとした時のことだった。
「ロイ君、こんな所で何をしてるのかな?」
聞き覚えのある声が後方からする。
恐る恐る振り向くとそこには見知った花々が立ち並んでいた。
「レナ姉ちゃんたち、なんで……」
「なんでってそれはこっちの台詞よ、ロイ君!」
「そうっすよ。討伐にはいかないって言ってたじゃないっすか!」
「ご、ごご、ごめん……」
結果嘘をついていたことになるので、謝ることしかできなかった。
「まあ、それはいいわ。私たちのことを思ってのことだろうからね。無事でよかったわよ。で、あいつらだけど……」
レナを筆頭に集まった面々は肌にひりつくような強烈な殺気を発する。
それで彼女たちが先程のサイモンたちの告白を聞いていたことを知った。
「舐めた真似してくれるじゃない。バカ女ですって? ドブネズミは駆除が必要ね!」
レナは拳を鳴らしながら言う。
「取り巻きのゴミも掃除しないとですね。町の大掃除の時間です!」
ティアは大斧を肩に担いでいる。
「ここで会ったが百年目。後方支援は僕に任せて思う存分、暴れるのだ!」
エミリアは杖を両手に掴んで宣言する。
「生まれてきたことを後悔させて、一人残らず消し炭にしてやるっす! あいつら――」
フィオナは狂気に満ちた笑みを浮かべながら続ける。
「「「「ぶっ殺す!!!」」」」
ティアによってドアが蹴破られて勢いよく吹っ飛んだ。
サイモンやヴェルマーたちは目を見開いて驚いた表情で、邸宅に侵入してきた麗しき乙女たちを確認した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます