第2話 抗えない病
「うーん、39.9度かー、多分夏風邪だとは思うけど高熱が続くのは怖いねぇ」
頭がクラクラしてたまらない。目を開けているのでさえ億劫に感じる。昔からよく風邪をひく方だったがこんな風邪は初めてだ。病院に行って薬を貰ったのにも関わらず高熱がもう何日も続いている。咳などは出てないし喉も痛くない。町の病院の先生も首を傾げていたがひどいものではないだろうとあまり重要視はされなかった。
「明日、大きい病院に行ってみよう。何かわかるかもしれない。」
心配性な親父だなと思っていたが後になってそれが正しかったのだと気づいた。
県で1番大きい大学病院へフラフラの足で親父の肩を借りてやっと着いた。やはりいちばん大きいだけあって人で溢れかえっている。待合室の椅子ににもたれかかっているときも親父は大丈夫?と心配してくれた。
「南川志希さん」
という看護師の呼ぶ声に対して親父が応えた。
診察室の椅子に座り、先生が「随分辛そうだね、横になるかい?」と言ってくれ重い頭をゆっくり縦に振った。
「何日も続く高熱、風邪症状はないと、、うーん、詳しく検査しないと分からないねぇ」
先生にそう言われ色々な見たこともない機械の部屋に転々と転がされた。
もう意識が遠のきそうな中、先生に言われたのは原因不明。腫瘍なども見つからず、血にも臓器にも以上が見つからなかった。そして東京の大きい病院への紹介状を書いてもらい強力な解熱剤を飲んでその日は終わった。
帰ってきてからも親父は俺のそばを離れず、
「何とかして楽にさせてあげるからもう少し頑張ってね、」
と言いそのまま2人で夢の中へ落ちた。
次の日は東京の大きい病院へ向かったがこの日も高熱のままだった。車の後部座席で横たわっていて東京まで1時間弱の短い道のりでも俺にとっては生死を彷徨っているようだった。
ようやく着いた頃には体に力が入らず親父におんぶしてもらい病院へ入った。若い見た目なのに身体はがっちりとしていて中学2年生の俺を軽々と持ち上げた親父は息をひとつもきらずに俺を診察室へ連れていった。
一通り診察を受けると医師からこう告げられた。
「まだ治療法も見つかってない不治の病」だと。
発症例も数える程度しかないため確実な治療法が分からないのだという。
そんな先が見えない病に心配性の親父は不安から怒りへ矢先が向かっていく。ただでさえ自分で何も出来ないのに医者すらも治せないものなどもう手の施しようがないの同然だった。
ここにいる医師ではどうもできないし海外から出張して来る医師と話してみると言われそのまま診察は終わった。そして念の為、入院をすることが決まり海の見える部屋で1人俯いていた。
これからどうなってしまうのだろうか。治らない病なんて医学が発展した今でもあるのか。もしかしたら死んでしまうのでは?来年には受験があるというのに。もうどうしたらいいのだろうか。
不安が募って押し潰されそうだ。
それなのに容赦なく明日からは苦しい治療が始まる。
俺は一体何の大罪を犯してこんな目にあわなきゃいけないのだろう、、、
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