シキ
雨読弧々
第1話 別れは突然、出会いも突然
2度目の夏が来るね。
緑と海が見える外を眺めながら血の繋がりのない親父・南川篤志はそう言った。
夏は嫌いだ。暑いし、虫も大量だし。そして何より、あの日のことを思い出してしまうから。
今から2年前の夏まで、俺はシングルファザーの父と暮らしていた。金に余裕があるわけでもなかったがそれなりに楽しかった。春は男だけのお花見をして夏は毎年海に行って遊び、秋は倉庫で焼き芋を焼いたりして冬なんかはでかい鎌倉作ったり四季様々な楽しみ方を教えてくれた。なのに
2年前の夏、父は溺れた子供を助けて死んでしまった。
傍から見たらかっこいいヒーローなんだろうけど僕にとっては大切な父親だった。
父が死んでからも溺れた子の親は何度も頭を下げては感謝を伝えて嬉しそうに帰っていく。
そりゃあそうだよな。失った悲しみなど失った者にしか分からない。身寄りもない俺は養護施設にでも入れられるのだろうかと思っていたら父の幼い頃からの知り合いが俺を引き取りたいと言い出した。顔も名前も知らない父の知り合いが何故?なんのため?と疑問が浮かんだがとりあえず会ってみることにした。
「やぁ、君が志希くんだね?」
40代の父の幼い頃からの知り合いと言っていたが故、中年男性が来ると思っていたがそこには清々とした青年が待ち構えていた。綺麗な茶髪に二重タレ目の瞳、鼻筋が通っていてすれ違う女子達がきゃーきゃーいいそうな顔だった。
「僕の名前は南川篤志、37歳の会社員だよ」
「さ、37!?もっとお若い方だと思ってました。」
「志希くん〜そんなこと言ってもなんも出ないよ〜?」
「いやいや、どう見ても20代にしか見えないですよ!」
南川と名乗る青年はくしゃっと笑うと更に絵になるものだった。血は繋がってないとはいえ、これからの関係は親子で事情の知らない人はどうして似なかったのだろうと哀れな目で見てくるに違いない。
南川篤志との出会いはまるで真冬の中の突然の春の訪れだった。
それからというもの俺と篤志さん、じゃなくて親父はすぐに打ち解けて気づいたら親父のことが大好きになっていた。親父も俺の事を本当の息子のように甘やかしてくれて、父であって、親友のような存在だった。この幸せがいつまでも続いて父の分も生きようとそう思い親父の寝顔を見ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます