第2話 ウキ浮き


「ごめんね、少し言葉が足りなかったわ。他に何か変化や出来る事が増えたとか......ない?例えば手から炎が出るとか?分身するとか?巨大になるとか......まあ、本当は外部には秘密だけど、あなたはいつも通り例外だから特別に言ってしまうと隕石落下後に異変が立て続きに起きているのよ。この写真を見て」

 

 そう言うと全焼した家の前で燃え続けている人が余裕な態度でピースしている写真だった。


「えっ何ですかこれ......?人?人が燃えている?私にはこんな事出来ないですよ!起きたらこの姿になっていただけ!ただ未だに胡蝶之夢としか思えないです......」

 

 そう手を広げ自分は見た目が変わっただけとアピールする貴音。


「っ......この人は人体発火現象が起きて家ごと燃えてしまった人よ、今は火傷無しで元気に保護されているわ。............正直、好き好んで警察官になったけど嫌になるわ......こんな意味不明な事件を担当されて、全国で報告があるのにお上は隠蔽しようとしている......私も隠蔽の一環で消されるかもしれない。それに数日前に会った貴方と喋り方も同じ、記憶だって同じなのに見知らぬあなたがいる......これが現実だと思うと頭が痛くなる、嫌になるっ......ごめんなさい............あなたはあなただものね......私はあなたが梶原貴音と信じているのに......こんな事を............」

 

 少し涙を流し私を抱きしめてくる彼女。九条さんは正義感が強く警察官になった事を誇りに思っている様な人間。


 そんな人が警察官にならなければ良かっただなんて初めて聞いた。昨日から寝ずに働いているのか憔悴している彼女の両肩に両手を置いて話す。


「私の見た目に混乱するのは当たり前ですよ九条さん......気にしないでください......貴女、少し疲れているんですよ。私を理由に少し休んだらどうです?それに貴女が消される?俺が己の命に変えても絶対にそんな事をさせないです。俺は九条さんの味方だから......」


 必死に励ます貴音。恩人が辛い思いをするのは耐えられない、こんな姿になっても何があっても味方であると強く話す。


「......約半年の付き合いなのに平気で命を賭けちゃうその発言、本当にあなたらしいわ。ふふっ、3歳歳下に心配されちゃあ歳上の面目丸潰れねっ。でも、ありがとう。本当に嬉しいわ」

 

 少しの涙を拭い微笑む九条。見せた写真や書類などを片付けて外に出る準備を終えた彼女は貴音の手を掴み言う。


「あなたからは何だか強い力を感じるわ!警察の訓練場で何か力が無いか試しましょう!あなたがいつも言っていたなヒーローになるのよ!」

 

 そう言いながら貴音を立たせようと彼女は手を引っ張りベッドから出そうとした、その瞬間に貴音は立ちあがろうと足を床に落とそうとした瞬間に浮遊し空回りした。


「キャッ!?......う、浮いているわね!やっぱりあなたに力はあるのよ!気分は?それってどんな感覚なの?」

 

 貴音本人より何故か喜んでいる彼女は連続で質問をする。


「マジか......き、気分は浮いているからウキウキ............なんちゃって............感覚としては体験した事ないですが無重力に近いんじゃないんですかね〜?それより有名な青狸みたいに少し浮いているとかじゃないと良いのだけれど............おお!天井に張り付ける!多分、それなりに飛べますよ、これ!」

 

 貴音は浮遊し天井に背をつけて髪を下に垂らしながら九条に見せつけた。

 

「あ、ああ......わ、わ、わかったわ......その、お化けみたいで......その......怖いから早く降りて......髪長いし、肌白いし患者衣のせいで余計に不気味だから............早くっ!降りてっ!」


 幽霊が大の苦手な九条は子供の様に怯える。


「う、うっす......なんかごめんなさい......」

 

(見た目だけじゃ無く、そんな可愛い所があるんだ......すごく意外だなぁ。低身長なのに巨漢にステゴロで勝つくらい強いのに......あと射撃訓練とかも1発も外さず且つ迅速にでスコアが常にトップなのに......)


 そう言いながらフワッと着地して九条の方を見ると驚く程に怯えていたので、つい彼女の手を両手で握った。


「あ、ありがとう......い、いや、私こそ大人なのにごめんね。ちょっと最近金縛りとか悪夢が多くて......」

 

 過労による精神状態の悪化が原因であると自覚しつつもやはり怖いものは怖い。


「......知っていると思うけど私は躁鬱だし解離性障害?とか不眠症とかだからわかるんだけど、九条さん心が疲れているんだよ......病院行って何かで癒しを得ないと......俺が癒せたら............」


「そ、そうね。ありがとう......。取り敢えず、私の車で訓練場に行きましょう。使用許可はもちろん取ってあるわ」


(癒し......約半年間の貴方との思い出とかかな。親孝行の為とは言えつまらない勉強に訓練、仕事ばかりの人生だったから......あなたはもう十二分に私の心にアツい光を与えているのよ......これからも......)


 九条はポケットから鍵を出して部屋を出て行こうとするが貴音はある事を思い出す。


「あ!!すみません、服無いっす......こんなに身長伸びちゃあ元の服も着れないです......」

 

 身長が30センチ以上伸びた上に飛び出たデカパイとデカチンぶら下げている為に服に困った貴音。


「あら......そう言われてみれば当たり前ね......身長はいくつ?バストとヒップは?足のサイズは?まだ店はギリギリやっていると思うから買ってくるわ」


「それが......まだその辺は急ぎじゃないとかで計測してなくて......あと手持ちもあまり無いですし............」


 貴音は困り顔で頭を掻く。


「えっ、病院は何してたのよ......それと、よく見たらあなた......それノーブラよね?それで行動していたのっ??......ちょっと計測器具借りて来るわ。それに馬鹿ねぇ私の奢りに決まっているじゃないの〜!............ん?でも、なんで今年唯一のノーベル平和賞の英雄なのにお金無いの?警察から給料貰ってないの?」


「それが......今までボランティア扱いで交通費や武具などは支給されていたんですけど、給料的なのは......一銭ももらってないです......自分から金くれと言うのは何か憚れて......ノーベル平和賞の報酬は柄にも無く大半は戦争孤児とか、ワクチンとか井戸、学校建設やら色々と日本政府を通して寄付しちゃって残りは趣味と無職だから出来なかった親孝行に............一応口座には数百万ありますが私病気なので念の為の貯金と仮想通貨の運用用でして......今ある収入は配信者もしていたので動画投稿サイトとSNSの広告収入ですかね......それもやれなくなったら怖いので別口座に貯金してます......」

 

(※ノーベル平和賞の賞金は約1億5千6百万円)


 気まずそうに貴音が話していくと目に見えて九条は怒り始める。


「は?意味がわからない。あいつら、病気で早朝起きれないあなたを朝早くから関東圏のあっちこっち行かせて、元々守られるべき民間人なのに部隊のリーダーにしたり、新型兵器のテストプレイをさせたりと酷使した癖に何にも払ってないの?臨時で作られた課の、警視庁特別日本治安維持課の長の私には給料、手当やボーナスで合計何百万を何度も貰っているのよ??それに、警察官では無いあなたも名簿や書類上では所属しているのよ???ふざけんじゃないわよ、面倒ごとが一旦全て終わったら文句言うわよ。あのクソが......あなたの優しさに漬け込んで............そして改善されなければ弁護士用意して訴えるわ。あなたのファンも多いし海外からも支持されているから負けない筈............とそれは忘れないとして計器を借りて来るから」


 そう言うとバンッと扉を閉め出ていく彼女の背中を無言で見送る貴音。


(あの人がクソがとか言っているの久しぶりに聞いた............やっぱりボランティア扱いっておかしかったんだ......アメコミのヒーローも無休、無給でやっているからそんな感じかと思ったけど......いや、ヒーローは無償の愛ある奉仕が大切何だけども............)


 そんな事を座りながら思っていると戻ってきて計測した。結果は以下の通りだった。


 身長約200cm超え

 体重約170キロ超え

 Kカップ超え(整形したかの様に形が綺麗で垂れてない)

 ヒップ不明(結局九条が測り方を知らない為だが巨尻)

 足のサイズ27

 など


 貴音の写真とデータを元に急いで九条はの服を買いに行った。貴音本人は九条から借りたパッドでZSNSを見たりして情報を得ていた。そんな事をしているとまさかの1時間もせず戻ってきて着せ替え人形にされる貴音。


「ほら!似合っているわ!」

 

(体重が意味不明な程重いけど肥満とは対極のプロポーションだから関係ないわね。何か理由が他にあるだろうし考えなくちゃね............可愛いしかっこいい......男の時からイケてると思っていたけど、この姿も悪くないわね♡)


 九条は本人より満足気に鏡に映る貴音を見ていた。


「ひゃー......確かに私暑がりですけど露出多くないですか?本当に変じゃないです?それにこれ......ブランドに疎い私でもわかるくらい高いやつでは............」


(これどこにチンコあるのかわかるな......)


 ホットパンツにヘソだし谷間丸見え白タンクトップに丈の短い黒のジャケットである。完全に九条の趣味である。因みに下着もちゃんとエロい。


「だからそんな事を気にしなくて良いわ......にしても、良い!本当に美しいわ......あ!これ靴ね、運動靴と普段使いでこのスニーカーとハイヒールをあげる!今は運動靴を履いてね......よし、靴下もサイズも問題ない!色々終わったら一緒に服買いに行くわよ!全部好きな物買ってあげるから!!」


(ちんぽの位置丸わかりね............)


 貴音を着せ替え人形にするのが楽しいのかニッコニコの九条。でも今の頭の中はチンポジ。

 

「ありがとう......ございます............あ!アトピーとかも治っているのかな?」


(なんか九条さんすごいウキウキしているなぁ......そう言えば体型も顔も綺麗なら肌荒れとか治ったんかな?)

 

 そう言いながらわざわざいきなり上裸になり鏡を見て治っている事を確認して喜んでいると九条が言う。


「ちょっ......もう......あなたはほぼ女性なんだから気をつけなさいよ......」


(やっぱりすごく色気......あるわよね............)


「っ......そうですね......分かりました!じゃあ、行きましょうか!」


「えぇ」

 

(貴音......この変わりつつある世界のせいで、あなたの味方が誰1人居なくなっても私だけは......絶対にあなたの味方よ............私の命にかけて)

 

 そうして2人は外に出て九条が車に乗ろうとする所で、後ろから不意打ちで抱きしめてゆっくり飛び立って行った。

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メテオブレイカー 〜特殊能力持ち両性の属性過多系美女?になった俺は憧れだったスーパーヒーローになる〜  (処女作のリブートです) 月影光貴 @manjusaka

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