第1話 俺は私?私は俺?
個室病室 翌日の2024/5/15 AM6:24
「......うぅ......んぅ............あ、朝だ!やったー!夢じゃない!本当に助かったんだ!!............ん?」
俺は歓喜の自分の声に違和感を感じた、喉を痛めたとか壊したとかそんなんじゃあないレベルで声が変わっていた。それに胸も何故だか物理的に苦しかった。
「ん??お、俺に胸が......デケェ胸がある?も、もしかして女になっちまったのか!??......なんで?」
そう言うと自分の股間に手を伸ばす、だが男だよと言わんばかりのデカい陰茎があった。おかしいと思い更に奥を触ると穴が二つあった。つまり、自分は両性になってしまったと即座に何故か理解出来た。
意味不明であり得ない事象だが見て触って感じたこの感覚は確かに夢では無い。そして股間を触っていた時に気づいたが無い筈の太腿がある。驚きのあまり布団を全部退けて全身を見る。
「あ......ああ!足が!足がある!すげー美脚にて美白!?こ、これは俺の顔面にも期待しても良い......よな?でも両親からの最初の贈り物である顔が変わるのはなぁ............てか髪の色は青色になってるし長く伸びてんな???もうマジで意味がわからん、とにかく早く鏡の前にっ」
そう思いベッドの横の車椅子を退けて久しぶりに自分の足で床を踏み歩き鏡の前に立つ。
「ふぇ!??何このイケメン美女は!?アイパッチ外すか......し、視力も治っている!?それに顔面ハリウッド級だし、目の色が赤と青とのオッドアイに......?なんだ......身長もかなり高くなったし、流行りの異世界転生を異世界抜きが俺の身体で起こっている......いや、もう俺じゃなくて私でいいか。自分の心の性別なんてどうでもいいしパンセクシャルだし......でも本当に私は昨日の私、
今の自分は本当の自分かと不安に思っているとノック音。いつもなら食事を知らせる嬉しいこの音も今は不快なアラート音の様。
「ま、マズイっ......少し早いが多分朝食だ。どう見ても梶原貴音じゃない私が今バレたら、巡回の警察官に逮捕されかねない......」
そう思い窓から逃げようかと思ったがここは低階層では無い為ほぼ不可能、下手に隠れるよりもここで入院していた時期の貴音と相手しか知らない思い出を話そうと貴音は考えた。そうしているとドアが開かれた。
「失礼します〜!おはようございます!!梶原さん!隕石が無くな......り......???えっ、あ、貴女は......」
そらそうなるわという反応をする。だが幸いいつも私を担当している看護師さん。私と看護師さんだけが知る事を話せば信じてもらえるはずだと貴音は話す。
「お、おはよう......ございます............朝起きたらサプライズ受けちゃったみたいで............わ、私はホンモノの梶原貴音です。まずは......そう!そうだ、私の話を落ち着いて聞いてください。私と看護師さんが............」
苦笑いしつつ何故か片言になりながらも、入院期間に会話した内容や、看護師さんの誕生日を祝った事など互いしか知らない事を伝えた。いつもの悪い癖でいらん事も話し過ぎてしまったがちゃんと聞いてくれた。
「............その雰囲気に話し方、姿は変わっても中身は本当に梶原さんですね。私は貴女を信用します!それに私の誕生日をわざわざ祝ってくれた患者さんは貴女だけですから......忘れるはずがありません」
そう言いながら手を出してきたので握手する。どうでも良い事ではあるが、よく見ると自分の手は細く白い綺麗な手をしている事に気づいた。本当に女体ベースの両性になってしまったんだなと再度思わされた。そんな事を考えていると看護師さんが戸惑いつつ口を開く。
「ど、どうしますか?こんな事......経験が無いですし、全く聞いたことも無いです............目の色や髪の色は自然な物とはとても思えないです......あ、ついすみません......」
「いえ、全くその通りですから......そうですね、取り敢えず血液型の確認、DNA検査で家族から何か貰うか、変身する前の私の毛髪を病室から探してするとか......ですかね?取り敢えず、私を担当してくださっているお医者さん方を呼ぶのが1番かなと......」
「そ、そうですね!梶原さんはAB型RH-という珍しい血液型なので、それだけでも多少の信用になるかなと思います!今呼んできます!......あ!メインを忘れていました、これどうぞ!お祝い仕様です!」
そう言うと足早に退室して行く看護師さん。置かれた病院食とは思えない豪勢な食事を見て我慢できず待っている間に食べていたら、走ってこちらに来る音が聞こえたので食事をやめ少し待つと扉をバンっと開けお医者さんが来る。
「梶原さん!?梶原ァ↑!??......な、何という......看護師の浮かれたくだらない冗談かと............と、取り敢えず、この病院で出来る検査を全てしましょう。ご家族と警察にも連絡をさせて頂きます。警察への通報は形式上なのでご安心ください。私どもは貴方を守りますので......なんせ隕石が落ちる前にお世話になりましたから」
(色々デカいなぁ。美人だなぁ......しかし、この細い腕は我々を守った時の様な戦闘の強さは残っているのだろうか?)
「お気遣い感謝します......」
(ねぇ?胸ばかり見てない?気のせい?......それより驚き過ぎて呼び捨てになってるじゃん......それより警察か......相棒来ないかなぁ............でも私居なくなって更に暇じゃ無いだろうしなぁ)
貴音はこの病院が悪党に襲撃された時にも撃退しに出動していた。暫くすると医者に血を抜かれたり、院内の警察官に指紋を取られたりと全身を検査しデータを取られていると夕方になってしまった。
――――――――――――――――
病室 PM4:01
「家族は結局ドタバタして今日は来れないってなんだよ......寂しいじゃん............携帯も修理に出しているし......にしても私の見た目って俺の好みそのものだよなぁ......不思議な事もある物だなぁ......待て、フィクションだと私みたいなのは研究用に実験されバラバラにされるんじゃないか?..................」
1人で色々と考えネガティブになっていく貴音。そんな事を延々と考えていると強めのノック音が聞こえた。
「はいー?大丈夫ですよー」
(検査は終わったよな?ダチの
そう考えているとガラガラとドアが開き女性が入って来る。
「よっ!私だけの相棒君!!......いや、もう君では無いかな?にしても、かじ〜!本当に全く見た目に原型が無いじゃないの!横顔だけでもカッコかわいいわねぇ〜化粧とかいらないんじゃない?身長も190超えかしら?まるでスポーツマンかモデルね」
この声は!俺の相棒とも言えるあの人だ!そう思いそちらを向いた。
「九条さんっ!!来てくれたんですね!暇だったんで嬉しいっす!なんか仕事があるから来れないと聞いていたのでビックリしましたよ〜......っとはっコーラっすか!」
九条さんとは26歳のキャリアの警察でもう警視になってどっかの課長をしているイカれ美人エリート婦警だ。それと私が足を切断された時に助けてくれた人だ。まあつまり互いに恩人だ。
ほぼバディな関係で半年近く一緒に治安維持をしていた、私はその実績と緊急時を理由に国から特別な扱いを受けており民間人なのに警察官などが持つ権限を有していた。......なのに俺だけ平和賞って意味がわからないよな、市民だから警察官だからとか関係無い。全ての正義の人に与えても良かったと思う。あの頃は人類が助かるかも微妙だったのだから。
「その仕事の特例でね!私も会いたかったわ!それに、あなた
(何とか貴音に質問する担当を私に出来て良かったわ......それに職務関係無く無事かどうか気になっていたから、あなたに本当に会いたかった)
そう言いながら彼女はベッドの横の椅子に座り、笑いながらいつものノリで貴音の頭をわしゃわしゃする。
「ありがとうございます!って、もうっ!いつもより強めだし、毎度会うとされるけど照れるっすよ〜。それに仕事で特例?何です?私達がムショぶち込んだ奴らがお祝い脱獄みたいな事をしましたか?」
「いや......いつもなら、そのつまらない冗談、くだらないと笑えるけど............面倒なことに違うのよ。単刀直入に言うわ、かじ......あなたの能力は容姿の変化と両性だけ?」
九条から笑顔は消え真剣な表情で貴音の目と目を合わせゆっくり話す、だが威圧的では無く声に優しさがあった。友人を心配するかの様だった。
「の、能力??」
(能力ってなんだ?わざわざ聞くって事は、私以外にも似た様な人がいるのか?)
貴音は混乱した、なんせ情報源はTVのみで自分の様な人間がいるなんて報道はなかったからだ。
この質問を聞き貴音は波乱の予感を感じた。
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