メテオブレイカー 〜特殊能力持ち両性の属性過多系美女?になった俺は憧れだったスーパーヒーローになる〜  (処女作のリブートです)

月影光貴

第0話 世界のハッピーエンドと一般英雄

 都内某所 PM10:57


「......成功しました!情報によると我々人類が一致団結し作り上げたミサイルと計画の勝利です!我々人類は今!生き残りましたァ!!!繰り返し............」


 


「そう......か......。俺の......俺の命懸けの半年のヒーロー活動は間違って無かったんだな............」

 

 俺は熱い涙を拭う。

 部屋のTVからは約半年前から騒がれていた巨大隕石が破壊されたと言う事実に喜びに満ち溢れ、嬉し泣きし叫ぶ老齢のアナウンサーの声、この部屋の扉一枚越しからもナースや医者に他の入院患者の喜びの叫びが聞こえる。窓の外から眩い流星群と夜中だと言うのに老若男女の歓喜の叫びと希望で満ち溢れている。

 

 ああ、この幸せな喧騒で遂に......世界は救われたんだと実感する。

 

 隕石が落ちるまでの期間、この世界の治安は最悪だった。悲しい事に例外無く日本も......。どうせ死ぬのだから好きに人を殺し好きに人を犯す、そんな事を平気でやりやがる守るものもない負の意味の無敵の人間そんな輩で溢れた。それらを救済しようとする新興宗教。それを無視して悪人を集めた巨大な反社組織が複数でき、日本含め全世界は悪化の一途を辿った。

 

 一方、その頃の俺は自衛の為にギリ違法な武器を作り、いつも通りダチと遊び、ゲームして過酷なオナニーをしていた程度。ヒーローには幼少から強く憧れていたがやるつもりなんて無かった。寧ろ、何なら自分も好き勝手にやりたかった。だが、たまたま強姦殺人寸前の婦警を助けてから流れで日本の関東圏(東京メイン)の治安維持に努め、慈善活動や日本から死刑、無期懲役を無くしヤケクソ犯罪者の社会復帰更生プログラムの追加などを間接的にした。世界でも数少ない人類滅亡の絶望に抗い希望を振り撒くヒーローとしてノーベル平和賞を受賞した......自己顕示欲と承認欲求の塊の俺は漏らしかける程嬉しかった。

 

 だが得た物とは釣り合いが取れない、俺の大切な片目が失明し、両足は謎の暴漢達によって切断され失った事。だが、切断して来たあいつらはおかしい、絶対にここ地球では無かった............。


――――――――――――――

 

 約1ヶ月前、東京都の市街地 PM7:42


 この日の俺は警察官などの人手不足の為に、手が離せない仕事中の警察の仲間に止められたが単独で救援の依頼に駆けつけた。1人でも多く助けるために......だが嘘だった、俺の善意は踏み躙られ本当の狙いはまさかの俺だった。

 

 俺は通報の座標データの付近に到着するなり手を振り焦る様子の男性を見つけ駆け寄り声をかけた。


「通報者ですか?場所はこちらですか!?」

 

 この時の俺は、俺にとって万全の装備では無かった。特殊警棒、ナイフにスタンガンと木刀を合わせた自作武器、防弾チョッキ、プロテクター入りズボン。そして奥の手で自作散弾マスケットなどを隠し持っていた。

 

 俺は通報者から、仲間が暴漢に襲われて今争っていると言われ、その路地裏に入って行く。そこは人通りが多い道から離れていて危険な場所だと、今考えてみたら罠だった事も考慮するべきだった。


「そうです!あそこです!」

 

 そう男が奥を指を刺す、俺は数人が掴み合っている様に見えた。その為木刀を抜刀し近寄ろうとした。


「分かりました、貴方は援軍を更に集めるか安全な場......っ!?......なっ何を......?」


「チッ......人類の失敗作のクセに感が良い野郎だ。それにしてもこんな怪しい通報に単身で駆けつけるとは本ッ当にお人好しで失敗作中の失敗作だァ!」

 

 そう辛辣に言う男は後ろから不意打ちで鉄パイプで殴りかかって来ていたが、戦闘の経験から来る勘で俺はノールックでギリ避けた。


「なんだよぉ......確かに俺はチビでつまらない顔しているけど、そこまで言わなくて良いじゃねえか......でも俺は恋人もできた事が無いし、学歴も............はぁ、無駄な事を言い過ぎたよ。あのカス2人も走って来てるし、テメェらまとめて豚箱送りだっ!」

 

 そう威勢良く言うが念の為の保険に人生初の救援信号をこっそり発信し、ジャキっと警棒を取り出して木刀と二刀流にする。この時、俺は何故か犯罪者相手に運良く勝ち続けていたのもあり慢心があったと反省はしている......だが、慢心よりも決定的な原因があった。相手が悪かったとしか言えない。


 

「さあ!失敗作同士仲良く殺し合おうか!」

 

 揉めてるフリをしていた暴漢の自分も人類の失敗作と言う自認があるのか、そう言い狂気的な笑顔でシンプルに拳一つで殴りに来る、電気ショックのボタンを押し改造木刀で受け止めた。ここで敵は感電し身体が脱力していつもならケリがついた、だがその男は感電をものともせず木刀を片手で麩菓子の様に握り潰し破片を俺の目と腕に刺して来た。


「ぐわあぁあ............根性で耐えれるモンじゃねぇぞ......なんせ、俺で感電実験したんだからヨォ......」

 

 そう言いながらも根性で追撃に警棒で殴るが容易く弾かれる。


「1番の失敗作のお前には流石に負けんよ。............はぁ隕石があるのになんで俺らが............」

 

 そう言うと見た事もない刃物を出す。形状はマチェーテに近いが刃が謎に青く光っていた。それを俺の太腿の根本にいとも容易く突き刺し貫通させ、人生で初めての骨が断たれた苦しみを味わう。


「あ゛あ゛あ゛っ!!!......はぁ、はぁ......グスッ。で、でもッ......この距離なら避けられないなっ」

 

 俺は痛みの反射で出た涙を無視し、ここで苦しみに耐え刃物を握って至近距離にいるニヤついた男の頭に向けてマスケットを発射した。正直、ここで初めて人を殺したく無かった............なんて思っていたが杞憂だった。


「......ヒュッ!ガツンと来たぜぇ......ここでも古いんじゃないかぁ?それ?博物館にある遺物みたいだな、自分で作ったのか?」

 

 男の顔は皮膚と肉が多少抉れ出血している程度であり、余裕とばかりに煽り抜きのガチ質問までしてきやがった。この時、俺は心底恐怖した。至近距離でこの銃を喰らい擦り傷で済む様な人間がいる事に。だって実験では薄い鉄板を一部貫通させたんだぜ?おかしいだろ?


「ヒッ......くっクソッ............ぐわぁあっ......あ、足が......完全に......ど、どんな怪力してんだ......傷口があ、熱い......熱いよ......」

 

 この時、よく話で聞いていた銃で撃たれたりナイフを刺された傷は熱く感じるを、この身で実際に強く感じた。そしてこの痛みよりも猛烈に熱い独特な感覚が俺を苦しめ行動不能に。


「これ、俺らとは違い傑作でなぁ力は要らねえんだ。こんな感じでスッとなぁ。まるでハムだな」

 

 そう言うともう片足をサクッと軽く振るだけで切断し、手術で接合不可にする為なのか脚をバラバラにした。そしてこの時、俺はこの時点で物理的に立てなくなった。寝転がり芋虫の様にもがく俺に3人はゆっくり寄り囲んで来た。


「はっ!はっ!これで!!俺らは失敗作じゃなくなる!」

 

 なんの根拠で失敗作じゃないのか、何が目的なのか全く意味不明であったが3人は勝ったと確信し慢心しながら憎たらしく大喜びしていた。


「へっ、こっちも笑わせんな。このチビ男を救援と騙して呼び不意打ち、更にそれを躱されて人数差で追い詰めてやっと!やっとそれで結果がまだこれ生存なのに勝ち誇るのか......ふふっ!ははは!............喰らえッ不意打ち!」

 

 俺は身体の胸と腕などに付けていた目眩し用の、赤と青のハイパワーLEDを高速で点滅させ目潰しをした。どんなに屈強な生物だろうと目は鍛えられない。


 この作戦は大成功し俺はナイフを抜き、激痛に耐え身体を跳ねて飛びかかり敵の1人の腹部に渾身の一撃で突き立て刺す事に成功する。だが、その男の反応が異常だった。本能からこいつは俺ら地球人と同じではないと感じた。


「ぐぎゃあああ!!!」

 

 そう叫ぶ割には出血は少なく、しがみ付く俺を数メートル先に軽々しく蹴り弾き飛ばし壁にぶち当てた。だがその時に見てしまった、奴は苦しみで目を瞑る為に瞬きをしたが縦では無く横、人間の瞬きのそれでは無かった。まるで両生類や爬虫類、エイリアン映画の最初とかでよく見るやつであった。それに深く刺さった筈なのに奴は痛みに慣れるのも異常に早かった。


「うるせぇよ馬鹿ッ!それにテメェ!それ隠せって言っただろ!」


「そうだ!俺だって色々我慢してんだぞ!」


「それそれ、お前らがうるせぇ!どうせもう俺らの勝ちなんだから関係無いわ!」


 


「もう勝ち......?それは............どうかな?俺の仲間......いや、相棒が必ず......来るっ」


(さ、寒い............な、なのに変に熱い傷口......でも何も感じなくなってきた......ああ、相棒............)

 

 そう言う男はもう腹部の傷を完全に気にしていなかった。3人は壁際で血塗れになった俺にジワジワと近づく。強がろうと笑っても万策尽きた、もう俺はここで死ぬんだと思った。大量失血で片目の視界もボヤけ、口の中も切ってしまったのか鉄の味に満ち、変な汗で腹や背がびちゃびちゃで惨めだった。


 だが、その瞬間に路地裏の入り口から異常にどデカい発砲音が聞こえ、前に助けた婦警......つまり、相棒が助けに来てくれた。この時、俯き顔をそちらに向ける力も無かったが、俺は見ずとも直感で助けに来てくれたのは相棒だと分かった。それと武器の殺意が高いのも感じた......。

 

 男達はあの武器には流石にあまり耐えられないだの、だが逃げても死ぬのは変わらないだの喚いて走り消えていった。俺は婦警の相棒に抱きしめられ何かを必死に言われたが、何を言われたかは覚えていなかった。その後本人に聞いても救助の為に無難な事を言っただけと言われてしまった。


 それに瞬きの話をしても誰も信じてくれなかった、俺も見間違いなんじゃないかとまで思うよ。だが己の魂?本能?アレを忘れてはいけないと訴えかけられる感覚がある......。


――――――――――――――――――


 って俺は安心し過ぎて誰に心の中で語ってんだか............まあ、それで隕石が落ちるかもってのに大怪我による入院で愛している俺の大切な家族と一緒にいられなかった。そしてそいつらはまだ逮捕されていない、それどころか完全に行方不明だ。その為、俺が入院している病院のセキリュティは最高レベルで守られている。アメリカの映画でしか見た事が無いレベルの武装をした自衛官と警官が扉の前に立っているし、巡回もしている。ナースコールとは別に警察、自衛隊の人が直ぐにこの部屋に来る緊急ボタンもある。何なら噂だが、近隣のビルにスナイパーがいるとかいないとか......。ここまでされると逆に死亡フラグな気も............。

 

 だが当然心強いし、ありがたいがこんな時にも仕事を増やして申し訳ないとも思う。彼らも結果論としては助かったとはいえ家族と居たかっただろうに............ああ、テレビの7チャンの特番を見ていたが、みんなが助かった実感と昔を思い出し更に泣いてしまった。


 夜風が気持ち良い......何だか疲れてしまったし、そろそろ精神安定剤と睡眠薬、抗生物質を飲んで寝よう......。

 

 俺に足はないが明日がある。宇宙から人類が勝ち取った明日以降の世界に期待して......眠ろう............。

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