第2話新生活のはじまり

 俺は買い出しを終えて部屋に戻ってきたのだが、二度寝するといっていた陽葵は普通に起きておりメモ帳に何かを書き込んでいた。


「ただいま。結局、二度寝しなかったのか?」

「いや~、保険会社の人から電話が来てね……。んで、言われたことを忘れないように、色々とメモ帳にまとめてるところ」

「なるほど。で、補償とかは大丈夫そうなのか?」

「なんとか大丈夫っぽいね」

「ならよかった」


 もうちょっとだけ陽葵との生活は続くと思ったが、意外と終わりは早いようだ。

 これで平穏な日々が返ってくると安堵していたときだった。


「ねえねえ、新しい部屋が見つかるまで居てもいい?」

「さっき大丈夫って言わなかったか?」

「んー、さすがにホテル暮らしを続けられるような金額は支払われなくてね。ただ一応、自治体?の制度で格安で都営住宅に住むことはできるらしいけど……、タダじゃなくてお金も掛かるし、普通にずっとは住み続けられないんだって。だからまぁ、何度も引っ越すの面倒だし、それなら晴斗の部屋にお世話になった方がいいかな~って」

「お、おう」


 俺は良いけど、陽葵はそれでいいのか? なんだか腑に落ちないでいると、俺の部屋にお世話になることを決意した理由を陽葵が親切にも教えてくれた。


「昨日、一緒のベッドで寝たけど普通に手を出されなかったしね」

「なるほどな」

「で、お世話になってもいい?」

「お前がいいなら別にいいけど……」

「んじゃ、部屋が見つかるまでよろしく!」


 本格的に新しい家が見つかるまで陽葵が俺の家に居候することが決定した。

 ゆえに俺は陽葵に悪い顔を浮かべながらビシッと告げる。


「俺はお前を甘やかさないからな?」


 居候は居候らしく弁えるべきだ。

 これから生活を共にするのなら、きちんと陽葵には働いて貰おうじゃないか。

 俺の邪悪な狙いを感づいた陽葵は苦笑いする。


「ま、居候だしちゃんと働くよ」

「ならいい。というわけで、最初のお仕事だ」

「ん?」

「ちょうどそろそろ洗濯機を回そうと思っててな。俺の代わりに洗濯をよろしく頼む」


 いくら俺達は仲良しな幼馴染とはいえ、さすがに陽葵もブラとかパンツとかを俺に触られるのはきっと嫌なはずだ。

 なので、当面の間の洗濯は陽葵に任せることにしたのだが、陽葵はにやにやと俺を揶揄ってきた。


「うん、洗濯は任せて。だってまぁ、私のブラとパンツを見たら、晴斗は興奮しちゃうもんね?」

「家族みたいなやつのパンツを見ても有難くもなんともないから」

「またまた~、そんなこと言っちゃって。ほんとはドキドキしちゃうんでしょ?」

「いや、ガチでお前のパンツとかブラに興味ないって。ただ、俺は平気だけど、お前は見られるの嫌だろうな~って気を遣ってやっただけなのに……」


 陽葵のブラとパンツを見ても正直なところ何も思わない。

 ただ単にお前が見られるの嫌かもと思って気を遣ってやったのにな。

 なんだ、その態度は? あまりにもふざけた陽葵に俺は睨みを利かせる。

 すると、俺を確かめるかのように陽葵はジャージのチャックを下げ、勢いよくジャージの中を見せつけてくる。


「これを見てもそう言えるのかな?」


 陽葵はブラを見せたつもりだったのかもしれない。

 しかしまぁ……、陽葵はブラをしてないかったのを忘れていたようで、がっつりと慎ましやかな胸が曝け出される。


「ず、随分と透明度の高いブラを使ってるんだな」

「どういうこと?」

 

 意味が分からないと不思議そうにしている陽葵は自身の胸元を見た。

 そして、苦笑いしながらジャージのチャックを上に上げながら俺に言う。


「……あ、うん。シャワー浴びた時に替えのブラが手元になかったし、しなくていいやってブラしてなかったんだっけ……」

「なんか悪いな」

「……あははは。まったくだよ。可愛い幼馴染の胸をタダで見れるとか、サービスしすぎちゃったかな?」


 にしても、あれだな。俺は陽葵の綺麗な胸を見たというのに、うんともすんとも反応を見せない自身の下腹部を見て改めて実感した。俺にとって、陽葵は本当に妹みたいな存在なんだなと。

 だが、そんな俺に対して異性である俺に胸を晒してしまった陽葵はというと、それなりに気まずくてしょうがないようだ。


「さてと、洗濯を頼まれたからにはちゃんと洗濯をしないと追い出されちゃうしね」


 陽葵は気まずいのはごめんだと言わんばかりに、素直に洗濯をしに洗濯機の元へと歩き出した。

 陽葵との暮らしが始まったものの、この調子で本当に大丈夫なのだろうか?

 今ならまだ引き返せることもあり、俺は陽葵に聞く。


「やっぱ、今みたいなこと起きるかもだしさ。俺の部屋に居候するのやめとくか?」

「え、なんで?」

「いや、今のお前思いっきり気まずそうな顔をしてるだろ?」

「うん、気まずいよ。でもさ……」

「でも?」

「どんなに仲が良くてもさ、普通に気まずくなることは起きるんじゃない?」


 ちょっとくらい気まずいことが起きたって、それは普通のことであり別に大した問題ではないでしょ? そうと言わんばかりに、陽葵はニコッと俺に笑うのであった。

 

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幼なじみとルームシェアを始めたらめっちゃ可愛い件 くろい @kuroi

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