第5話第三幕・解決

 第三幕


 第三幕は2つの構成要素からできている。


 クライマックス


 エンディング





クライマックス


 クライマックスは物語一番の盛り上がりであり、セントラル・クエスチョンに対する回答となる。


 本作では京本の部屋の中に入り、回想シーンがおこり、漫画制作に対する本心を吐露する藤野が、なぜマンガを描いているのかきかれ、京本に漫画原稿を手渡し、京本の笑顔を浮かべるシーンがこれに当たる。


 セントラル・クエスチョン(権能を失い筆を折る藤野)の問いに対し、


 筆を折ったのは面白い漫画を作れると言う権能を、漫画の面白さ=画力の高さと勘違いし、筆を折った事実とし、


 逆説的に、どうすれば漫画家は筆を折らないのか? という問いを建て直せば、


 その答えがこのクライマックスの京本の笑顔であり、観客を楽しませるために描かれたエンターテーメントが漫画であり、観客が楽しめばその権能は失われず描き続けられるという答えになる。


 クライマックスで描かれたのは、漫画=エンターテーメントの権能の本質である。

 




エンディング


 エンディングはオープニングの結果である。


 本作では最初の表紙であるオープニングイメージ、机に向かい漫画を描く小学生の藤野と対になる漫画を描く大人になった藤野のシーンがこれに当たる。


 藤野はクライマックスで権能を回想の中で再獲得し、立ち上がり、京本の部屋を出ていく。そしてまた作業スペースに戻り漫画を描き始める。



 漫画を描くシーンから始まり、漫画を描くシーンで終わる円環構造を持っている。





 

 ここまでをまとめるとルックバック第三幕は2つの構成要素によりできている。



 クライマックス(京本が藤野の原稿を見て、笑顔を浮かべ、藤野はその笑顔を見て、エンターテーメントの権能の本質を思い出し取り戻す)



 エンディング(権能を取り戻した藤野は漫画を描く)

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