過去編:神々への挑戦



ザルヴァス超構造体の最上層、「超知覚領域(Hyper Perception Zone)」は、ゴブリン文明の中枢とも言える場所だった。ここでは、ゴブリン族が全宇宙から集めたデータが統合され、高次元の解析と実験が行われていた。


「私たちの科学はもはや物理次元を超越した。次に探求すべきは、存在そのものの本質だ。」

主任研究員であるアルファスは、神々を「高次元情報存在」と定義し、その解明に没頭していた。



「エネルギーの法則に従わない存在がいる」という最初の報告は、外宇宙探査船からもたらされた。星系をまたぐ探査中、船は謎のエネルギー場に包まれ、乗員の一部が「何か」を見たと証言したのだ。


「それは無限の知恵を持ち、形なき光のようだった。」

この情報をもとに、ザルヴァスの研究員たちは、神々を解析可能なデータとして観測する手法を生み出した。彼らは量子次元の「エネルギー断層」を追跡し、その中にある未知の存在を検知することに成功する。


研究結果がもたらした仮説は衝撃的だった。


「神々とは、宇宙が持つ潜在的なエネルギー場の自律的知性体であり、意識の集合体である。」



コンタクトの準備は慎重に進められた。ゴブリン族の研究者たちは、神々が「言語」や「肉体」を必要としないことを理解し、高次元波動を使った情報交換装置を開発した。これを**「アルカナ・リンク」**と呼んだ。


初めての接触が試みられた日、研究施設全体が緊張に包まれた。アルカナ・リンクを通じて発せられる信号は、次元を超え、神々に到達するはずだった。


「送信開始。……反応なし。いや、待て――」

突然、装置が異常な光を放ち始めた。研究員たちはその場で意識を失い、リンクに接触していたアルファスだけが叫び声を上げた。


「こ、これは……!」


彼の脳内に直接流れ込んできたのは、膨大な情報と共に放たれる「声」だった。


『貴様ら、何者だ――』


その声は怒りと威圧に満ち、アルファスの精神を激しく揺さぶった。しかし彼は冷静を保ち、問いかけた。


「我々は探求者だ。神々よ、その力の本質を教えてほしい。」


だが返答は予想外だった。


『愚か者め。我らの存在を知った以上、お前たちに待つのは滅びのみ。』



アルファスはこの接触で一つの確信を得た。神々は恐れている――自分たちがゴブリン族に「解明されること」を。


彼らは神々を倒すための兵器、**「デウス・ブレイカー」**の開発を始めた。この兵器は、神々を構成する高次元エネルギー場を反転させ、崩壊させる仕組みだった。


同時に、神々との接触を繰り返す中で、ゴブリン族の中には異変をきたす者も現れた。彼らは「神の呪い」を受けたとして恐れられたが、その一部は新たな能力を得ていた――次元を超える「視覚」と「力」を。


「神々が恐れる理由がわかった。我々が到達した科学は、彼らを無力化する手段をすでに持っているのだ。」


アルファスの決意は揺るがなかった。ゴブリン族の中には反対する声もあったが、多くはその意志に賛同し、「神殺し計画」は全文明を挙げた一大プロジェクトとなった。



しかし、神々もただ手をこまねいていたわけではなかった。ゴブリン族の技術が神々の領域に近づくにつれ、都市全体に異常が起こり始めた。防護シールドが突如として崩壊し、無数のエネルギー干渉が発生した。


「これは……神々が仕掛けた反撃か。」

アルファスは事態を理解したが、すでに手遅れだった。神々は「存在そのもの」を武器に変え、ゴブリン族の文明を次元ごと破壊しようとしていたのだ。


彼らの最後の希望であるデウス・ブレイカーの完成も間に合わず、ザルヴァスはブラックホールの中へと消えていった。



それでも一部の研究データはアークコアに保存され、辛うじてゴブリン族の生き残りへと引き継がれた。そのデータの中には神々の最後の言葉も含まれていた。


『愚かなる者どもよ。知りすぎた代償を、永遠に払い続けるがよい。』


こうして、かつてのゴブリン文明の栄華は歴史の闇に消え、神々の支配は再び確立されたのだった。

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忘れられた種族〜宇宙でゴブリンが帝国の復興を目指す成り上がり物語〜 @ikkyu33

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