短編 全てを失いしものと全てから嫌われた忌み物の邂逅、世界はどのような変化を遂げるのか?

ナリゾー

第1話、

この国はいつの日か、ある種族と手を取り合うことにした。窓の外を除くと人とまるで【蟲】

のような生き物が仲良くしている


それを見たある男がつぶやく


「あの頃が懐かしいな」


『またあの日のことを思い出してるんですか?』


「いや今までのこと全てだよ」


そういい男は玉座に座り今までのことを思い出す


【2週間前】


「ハッハッハ!流石はカリュオン殿、貴殿の話は聞いてて飽きませんな!」


片手にワイングラスを携えた小太りのおっさんがそう言う


「そうですか?気に入ってくれて光栄です。しかし流石に客人にもてなしができないなんてしれたら我が家の恥ですからね」


僕『カリュオン・バイパー』はバイパー家の跡取り息子だ。


バイパー家は過去産業で繁栄し最終的にこの大陸の中で王国を除く中でのトップである3大貴族のうちの一つに成り上がった貴族なのだ


「はは、しかし最近は我が家が流通させなくともそれなりの物流ラインが形成されてます。今のバイパー家は影響力が少ないのも事実です。」


そういうと我が家のお得意先の商隊『黄金色の蝶』のリーダー『オルトネス・ランド』の目が点になる


「確かにその節はある、だが私はカリュオン殿に期待を抱いておるのだよ」


その一言に言葉を失う


「貴殿は過去の栄光に縋ることなく、今の状況を把握できている。商売の基本は引き際を見つけることと、自分の弱みを知ることだと思っていてね、貴殿はよく理解しておる。取引の世界のことや、今自分が置かれている立場のこと...だから今回このような催しが開かれたのであろう?」


オルトネスの言うことは全て正しい、まだ16年しか生きていない僕の何倍も場数を踏んでいるのであろう


「そうですね、全て図星です。だからこそさらなる繁栄のために新たなる事業に手を出さなくてはならないと考えました。父上は最後までふんぞり返ってるだけの木偶の坊でしたから。だから最終的には領民の怒りを買い暗殺された。だからこのパーティーを開いた、王族や3大貴族や位の高い貴族を呼んで次に新たに実施したい事業についてプレゼンしたいと思っていてね」


「そのプレゼンではどのような内容を話すのかな?」


どのようなことをするのかと興味津々に聞いてくる


「オルトネスさん、忌み物ってご存じありますか?」


「ええ、長年生きとるものですからある程度の情報はしっとりますよ。しかし忌み物とはまた珍しいものに目をつけますね」


忌み物、それはこの世界で最も嫌われている存在だ。見た目こそは蟲系の魔物みたいなものなのだが、強さが格段に違う蟲系の魔物が1とするのなら忌み物は50位である


「忌み物は、この世界で最も嫌われている存在ですからね、精鋭が集まって戦ったところで勝率は低いでしょう。そのしぶとさも忌み物言われる所以ですからだからこそ誰にも目をつけられない存在なんですよ」


僕の計画に興味が出てきたそうでオルトネスはさらに興味が湧いた顔をしている


「最近魔物が人里に降りて来る確率が上がってきています。そこで忌み物を使います」


「なるほど忌み物を手懐けるということですな。しかしそう上手く行くとも限らんだろう?」


「僕が独自に調べた結果、忌み物と魔物は敵対関係であるということがわかりました。人間を襲う場合も人間側から攻撃しない限り攻撃はしないということもわかりました」


その事を聞くと驚いた顔でこちらを見てくる


「それは本当か!?」


「はい本当です。研究結果で忌み物は明確な知能があります」


「そうなると、忌み物との協力関係が出来て、共生できるということか」


「まさにその通りです。」


すると商人の顔になり


「私も貴殿の計画に加担させて頂きたい」


たった一言それだけを言い僕に頭を下げる


「あなたを私の手札に加えるために話したのですから、こちらこそ喜んで迎え入れましょう!」


感激したような顔で


「ありがとうございます!」


とてつもなく感謝された


「そろそろプレゼンの時間です、この事業を発展させてまた3大貴族に返り咲いてやりす!待っててください」


僕はそういい皆の前まで移動した


しかしパーティーの中1人怪しげな笑みを浮かべていたことには誰も気づかない


【そこから数時間後】

プレゼンが終わり安心していたのもつかの間


終わりの始まりを迎えた


パーティーの最中照明を切られ当たりが真っ暗になる


すると鈴を鳴らすような音が聞こえた


これは精神干渉魔法だ術者が人にこの魔法を使うと一定期間その人を言いなりにすることが出来る


しかし魔法耐性が高かったり、メンタルが強いとレジストができる


僕は生まれつき魔法耐性が高いため今回もレジストできた


「この魔法出力、魔法具でブーストしているなこれは普通の人は精神が崩壊して廃人になるぞ!」


大方力が弱まったバイパー家を潰すためのものであろう


しかしこんなに手際がいいなんて、やはり密告者がいる


計画の大体を知っており、このパーティーの開催をいち早く教えた人がいる


その時後ろから後頭部を強い力で叩かれる


そいつの顔は誰よりも見知った顔


オルトネス・ランド


くそっ...はめ..られた


そこで意識を手放した


【そこから幾日が経ち】


僕いや俺は全世界のお尋ね者になった


オルトネスの策略により俺の研究結果が王国にわたり自国強化のために活用するそうだ


オルトネスの最後の言葉は


「簡単に人は信用するものじゃありませんよ、時代遅れの蛆虫がせいぜいお前の研究結果は上手く活用させてもらうよ。あっ次に顔を合わせることになるのは処刑台の上かな?ギャハハ!」


そう俺は国家転覆を狙った大罪人という罪を課せられ極刑になるところだったのだ


しかしどんなに落ちぶれても名家の跡取り息子それなりに実力は持っているのだ、だから俺はその力を使い脱獄した


脱獄から数日後


今は魔法の力によって髪を青から白色とバイパー家特有の碧眼を赤い眼にした。そして今向かっているところは忌み物達が住み着いているという『穢れの森』に向かっている1度忌み物達にコンタクトを取り今後の事を考えるつもりでいるのだ


「はぁ〜長かった道のりもあと数時間、魔法の効力が解けかかって来ているな...流石に数日間飲まず食わずだと魔力も切れるか...」


俺は疲れたようにフラフラと歩く


「っとそろそろ辺境の街カラムに着くな、バレないように外套を被らないと」


ここまでの道のりの中で様々な所を歩いてきたがそのどこにも俺の指名手配の紙が貼ってあった


「ここで捕まっちまったら、数日の道のりも水の泡どころか天国への片道切符だからな」


すると茂みの中から何かが飛び出す


「よォ兄ちゃん、命が惜しくば身ぐるみを剥いで行きな!」


盗賊だ魔物の影響で働き口を無くすのは例外では無い彼もその1人なのだろう、口は達者だが何せ手が震えておりこう言ったことには慣れていなさそうだ


「それは無理です、もう少しで目的地に着くんだここで失うわけにはいかない」


「ふん、な、ならその命頂戴する!」


彼が扱う獲物であるロングソードが無慈悲に振り下ろされる


がそれが俺に当たることは無い


黒いオーラをまとった何かがロングソードを止める


「え?は?」


俺は睨みを聞かせこう言う


「最後の忠告だ次は無い」


そういうと盗賊はそそくさと逃げ出す


このくらい物体については俺自身何かわからないが、命の危機に瀕するとぜったいたすけてくれる頼れる?存在だこれのせいで家の中じゃ化け物扱い実質忌み物と何ら変わりない仕打ちを受けていた、しかしある時これが暴走し幾人の命を奪ったそうだ


俺には記憶が無いがそれ以来俺にちょっかいを出す奴らは減ったなんなら家の中じゃいないモノ扱いのオンパレードだった


「俺を助けてくれてありがとう、だがお前は一体なんなんだ?」


もちろんそれは答えてはくれない、何も反応を示さないまま虚空に消えていった


ようやく街の関所までたどり着いた日が落ち始めている


街にはいるためには身分証明が必要で、証明できない人は犯罪歴の有無を問われるそれさえ越えてしまえばあとは入るだけ


それから数十分俺の番になった


「この街にはどのようなご要件で?」


「この世界を旅してるものでして偶然この街を見かけたのでこの街を堪能しようかと思っています」


すると門番の傭兵は


「その外套かなりボロボロですね、旅をし始めてどれくらいで?」


「軽く数ヶ月程です、この外套はうちの祖母の形見でしてこうして身につけてるとあの頃に戻ったような気がするんです」


半分ホント半分冗談の方便を使う


「それはさぞかしおつかれになったのでしょう、しかし最近この国を脅かした大罪人が脱獄し今も行方を眩ませているので、この先の旅ては気をつけてください。」


「大罪人?」


すると傭兵はハッとした顔で


「かなりの辺境の地に住んでいたようなのでご存知ないとは思いますが元3大貴族のバイパー家の跡取り息子が国家転覆を企てたそうなのですよ。」


「なるほど」


「今もどこに潜んでいるか分からないので十分気をつけてください。我々カラムはあなたを歓迎します」


そうして長かった旅路ももう少しという段階までやってきた


「とりあえず出費を抑えてきたから宿に泊まるくらいの資金はあるな」


そうして俺は格安の宿に泊まることになった


久しぶりのベットはどんなに粗悪品でも今の俺にとっちゃ天国でしかない


「あぁ〜疲れた〜安心したら眠気が、早いけど寝るか」


そうして俺は微睡みの中に落ちていく


夜中やけに街が騒がしいので目が覚めてしまった


俺は窓から外を見る


「な!?」


そこに広がるのはあんなに長閑な場所だったのに今や街中火に包まれている


「忌み物が出たぞ〜!みんな避難しろ!」


おそらく成人男性であろう声が街中に響き渡る


俺は急いで外に出る


火の中心にそいつはいた


「あれが忌み物...」


見た目は蟲系の魔物の『ヘルマンティス』分かりやすく言えば大きくなったカマキリそっくりである、しかし違う点で言えば禍々しいオーラをまとっている


その瞬間俺の右腕が根元から切り離された


「っ!?」


突然のことに痛みを嘆く声すら出ない


おそらくやつは目に見えない速度で俺の腕を切り裂いた


右腕がないはずなのに嫌に冷静だ


「やめてくれ!俺は敵対意識は無いただ君の親玉に会いたいだけだ!」


意を決して紡いだ言葉を聞いたカマキリは更に殺気を辺りに放つ


「災難だよな、ただ生きてるだけなのに嫌われて」


カマキリはお前に何がわかると言いたげに威圧する


「分かるさ!生まれ持った力のせいで他者から避けられるのは俺だって十分に経験した!お前は人が嘘を言ってるのかそう出ないのかわかるのだろう?ならその目で俺の事を確かめろ!」


カマキリが俺を凝視したその時カマキリからは殺気が無くなった


ジリジリと躙り寄ってくるカマキリ


「人間嫌いなんだろ?俺も同じさ」


俺はカマキリに手を差し伸べるカマキリは頭を下げ頭を撫でろと言わんばかりに俺の手に擦り当ててくる


俺の意識が朦朧とする


「そういや俺片腕落とされてたな立つのですらもう...限界だ」


そういい俺は倒れる


俺は目が覚める


「俺生きてたのか」


自分でも流石に右腕を切り落とされ生きているとなると驚愕である


あたりは木々が生い茂っている


「まさかここが穢れの森...なのか?」


それから数分たち俺は見知ったやつに出くわした


人を容易く両断できるであろう鎌と獲物を偉っているかのような目、正しくカマキリであった


「おはよう?でってるのか?」


そういうとカマキリは頭を下げる


俺が困惑していると鎌を器用に動かし俺の手を頭にのせる


「頭を撫でろってこったな?いいぜ」


俺は少し強めに頭を撫でる、心做しか少し喜んでいるように見えるのは俺だけでは無いはず


ある程度満喫したのか頭を上げ俺の体を持ち上げ背中に乗せる


「うわっ」


俺の命を刈り取ろうとしたヤツだ畏怖の対象として見ない方がおかしいだろう


俺はそのまま背中に乗せられたまま移動することになったようだ


リズムよく左右に揺られながら約10分


「なんだここ...」


目の前に広がる光景はこの世の穢れ全てを集めたと言っても過言では無い程の禍々しいオーラが充満している


このまるで蛇に睨まれた蛙のような身体がすくむ感覚が俺を襲う


そうチンたらしてると後ろからトンっとカマキリの鎌で押された


「おっと」


俺はバランスを崩しその建物の中に倒れ込む


『おやおや、客人に対して無礼ですよノーチラス』


あのカマキリノーチラスという名前なんだと思いながら声がする方を見てみるとそこには女王蜂をかなり大きくしたような見た目の忌み物がいた


「あ、あなたは何者なんだ?」


そうすると蜂特有の獲物を萎縮させてしまうような目がこちらを見た


『私はゼノビア、魔蟲族の長人間界で言うところの忌み物の族長です』


忌み物の族長に会えたことで気分が高揚するのがわかる、さっきまであった恐怖も寒気も全て吹き飛んだ


「私は元3大貴族のカリュオン・バイパーです以前からあなたに会いたいと思っておりました」


俺は彼?彼女?の前に跪く


『そんな畏まった態度は取らなくとも良いです』


少し焦ったような声色で俺に話しかける


「あなたがそういうのであれば少し崩させてもらいますね」


その一言でほっとしたのか安堵した声で


『それで良いのです、それより私に聞きたいことがあるのでしょう?』


「はい、質問したいことがいっぱいありまして、大丈夫ですか?」


『いくらでも質問してください、最近はおしゃべりする相手がいなくて困っていました』


案外ゼノビアさんっておしゃべりなんだ...


「まず人間のことをどう思ってるか教えて貰えますか?」


さっきまでの態度と変わり周囲が殺気に溢れる


『一言で言えば復習の標的ですかね、我々の一族も大抵は人間に殺されています。一族を殺されてなんとも思わない家族はいないでしょう?だけれどもそのせいで人間とのイタチごっこが終わらないのもまた事実なので少々不服ではありますが、人間と協力関係になり共に生きていきたいと思っていますね』


これは彼女の思いの丈を吐いてくれたのであろう


「なるほど、人間との共存も視野には入れているということですか?」


『そうですね、けど私たちは皆こんな外見だから人間ウケは良くないのよね』


これはいい情報を聞けた


「実はですね私が拘束される前は忌み物達と手を取り合う計画を立てていたのです」


すると驚いたように言った


『えっ!?そうなの?私が言えたことじゃないけど貴方は物好きなのですね』


「いえ、私の調査結果によるとあなた達忌み物は魔物とは敵対関係に位置してるという考察が出ました。他には人間達には正当防衛になるように立ち回ってるということですね」


『ほう、それは何故かしら?』


少し試すような口調で問いかけてきた


「まず第一にあなた達の見た目は人間にとって畏怖の対象、穢れの集大成見たいな言い伝えがされています。その見た目から無条件で攻撃されることも少なくはないでしょう、しかもその一族の長が人間との和解を望んでいるならその臣下も長の意向に従うはずだからです。魔物に関してはどの文献を調べても魔物と共に人間を襲ったなどの情報がないからです。」


すると少し驚いたように


『凄いですね、ほぼ当たりです。魔物に関しては逆に足でまといだからなんですけどね、それにしてもカリュオン様はかなりの観察眼をお持ちで』


「いえ私はそれほど見る目はありませんよ、人を信じ裏切られたのですから」


するとゼノビアは怒りを露わにして


『このような聖人君子を裏切るとはかなりの外道ですね』


まぁ確かにオルトネスは昔から黒い噂が絶えなかった、言葉の裏には何かが潜んでいるそんな感じがしてならなかった


「そこまで言われる程俺はできた人じゃないです」


『まぁこの話は置いておいて他には何かありますか?』


そうだな、このオーラと俺の謎の能力には少し関係性があるはずだ、それを聞いてみよう


「俺は昔から謎の力があるんですよいつもは使えないのに命の危機に瀕した時だけ守ってくれるんですよね」


すると興味深そうに


『へぇ〜1回見てみたいものね』


その一言に俺は賭けに出ることにした


「なら俺を殺す気で攻撃して見てくださいください」


『いいのですか?』


「貴方はそれを見たいのでしょう?俺のわがままを聞いてくれたから俺にも恩返しをする必要がある」


するとゼノビアの前に魔力が集中する


これほどの膨大な魔力を練っているのにムラがない...魔力操作の高さが垣間見える


みるみると魔力でできた剣が出来上がった


『それではいきますよ』


その一言の後にかなりの衝撃波が俺の身を襲う


『なるほどね』


何かに確信を得たのか納得したような声で言う


『単刀直入に言うわ、貴方は人の形をした忌み物よ』


「は?」


俺は言葉を失った


「それはどう言うことですか?」


『分かりやすく言うと私たちの周りには禍々しいオーラが出ているでしょ?それを普段隠しつつ宿主が生命の危機が訪れると勝手に守ってくれる自動防御ね現に切り落とされたはずの腕があるじゃない』


説明を受けたが頭に入ってこない


確かに俺は確かにノーチラスに腕を切られた、目覚めた時には何ら違和感など感じなかったのはこのせいか


俺の予想では精神崩壊するような場面に出くわした時に都合の良い方向に意識改変をさせられる場合もあるということになるはずだ


だから俺は腕が再生してることに気が付かなったというわけか


『だからよほどの事がない限り貴方は死ぬことは無い』


「なら俺をもっと強くしてください」


ノータイムでその言葉が出た


『どうしてかしら?』


「俺にはまだやることがある、腐った国を変えること、貴方たちと共存する未来を作ること。これをやるためには強さが必要になるだから俺を鍛えてください」


するとゼノビアは笑を零した


『ふふふ、随分と面白いことを言うのですね、だがその意気やよし!忌み物の族長として貴方を育て上げます!』


それからゼノビアさんとの地獄のトレーニングが始まった


『カリュオン様、避けないと四肢欠損ですよぉ』


妖しい目付きで超高速度の斬撃を飛ばしてくゼノビアさん


最初の頃は反応出来ずに手足を切り落とされだるまになることも少なくはなかった


けど俺にも変わったことがある


「ああ畜生!こんなん避けれるわけねぇだろうが!」


そうボヤきながら手に忌み物のオーラをまといガードする


そう俺も少しだけ忌み物の力を引き出せるようになったのだ


けどまだ不安定なので少しでも気を抜くと


「あっ」


オーラが霧散し俺の腕は切り落とされる


こんな訓練を何回も続けてるうちに痛みには慣れてしまったのでリアクションは少ない


片腕がない状態で俺は避けまくる


『そろそろラストスパートです!私も本気出します!』


本当の地獄はここからだ


斬撃の量はさらに増え弾速も上がるしかも途中で爆発する弾を不規則性に打ってくる


その状態のまま数分が経過し


『だいぶ良くなりましたね私も驚いています』


スッキリしたような声でそう言う


『これなら次のステップにいけそうですね』


地獄はまだ終わらない


次にやるトレーニングは力の制御だ


このオーラは魔気と言うらしく普通は忌み物にしか扱えない代物だと言う


魔気は性質変化の特性を持っており魔力を流すことで大抵の事はできる


『カリュオン様魔気は感情の昂りで放出される量も変わります、この世で1番憎いやつや嫌いな奴を思い浮かべてください』


そう言われ俺は思い浮かべる


頭に浮かぶはやはりオルトネスだやつの顔面を殴りまくってやりたいくらいには怒っている


『おお〜上手です!このままだとあと一ヶ月後にはマスター出来ますね』


この感情をコントロールし腕に魔気を纏わせる


「せいやっ!」


その一言で放たれた正拳突きは岩盤を捲れさせながら高威力の衝撃波を生み出した


『やはり貴方は素質ありますね魔力制御も一流、魔気にも慣れてないはずなのにそれを応用すぐさま自分なりに変質させ攻撃に移す。まだ変質させるのに時間はかかっていますが改善も時間の問題でしょう』


どうやら俺の評価は自分が思った以上に高そうだ


それから1年の月日がたった


日常生活はゼノビアさんの館の一室を借りた


忌み物達の住処は森の中にぽつんとたっており案外賑やかだった。最初はみな俺の事を見るや否や殺気を向けていたのだがさすが1年経つとみんなが慣れてきて普通に仲良くしている


そして最終試験


俺の周りには他の忌み物達と比べて遜色ない魔気を纏っておりそれを抑え込む


目の前にはかなり巨大なドラゴンが俺に睨みつけていた


ゼノビア曰くこれが卒業試験だそうだ


溜めた魔気を一気に解放し目の前にいる巨大なドラゴンに向けて一撃を放つ


「なんの罪もないが死んでもらう!」


その一言ともに突き出した拳からは忌み物よりも濃く誰よりも憎悪がにじみでていた


その魔気の波動に飲まれたドラゴンは荘厳とも言えるその巨躯が破裂した


『おお〜お見事!これにてカリュオン様の特訓は終わりです!』


僕は昔から自分が嫌いだった、だれからも相手されずに孤独に過ごす自分がホントに嫌いだった


今でも脳裏にチラつく昔の僕、今の僕を人たらしめている唯一のストッパー


だがそんな過去の僕、いや俺はここでサヨナラだ


今は仲間がいる、見た目はあれだが信頼出来る仲間がね


だから僕はもう眠っていいよ、これからは俺が僕として生きるのではなく俺が俺として生きるから


『さよなら俺』


そんな声が聞こえた気がした


『おーい、聞こえてますか〜?』


さすがにぼーっとしすぎたか


「今までほんとにありがとうございました!」


するとゼノビアは咳払いをして


『コホン、カリュオン様の卒業記念として円卓のみんなと宴をやりましょう!』


円卓とはゼノビアさん直属の部下で円卓のメンバーは13人だ


円卓のみんなとの仲は良好だ、初めはあんまり印象が良くなかったみたいだけど気づいたら懐かれてた


それと新たな発見をした、忌み物達は言語を持っていないと思われていたが実際は触覚のようなものを震わせてエコーロケーションをしていたそうだ俺はと言うと魔気を振動させゼノビア以外とも会話をすることが出来た


そのことに気がついたのはゼノビアさんが素直に教えてくれたからだ


そこから一日中宴を楽しんだ


その後にこれからの計画を練ることにしたその内容とは世界の中心であるシュベルト王国に物理で直談判をすることである


「ところでゼノビアさんが着いてくるって大丈夫なんですか?あなた族長ですよね?それとその姿はなんなんです?」


そうゼノビアさんが着いて行きたいと言ったのだしかも原寸大の蜂の姿になって


『これは魔法の力を使いチョイっとサイズ変更しただけですこれでなんら問題ないでしょ?』


そういい俺の肩に乗る


『それに私は大丈夫と信じています、カリュオンさまならやってくれると』


ほんとにずるい人だ


「当たり前だ、ここまで育ててもらった恩を仇で返すような真似はしませんそれじゃそろそろ行きますよ」


そういい俺は王国に向けて歩き出す


今まで色んなことがあったな〜と思い吹ける


けどもうそろ俺の夢が叶う


「かなり遠いけど大丈夫ですか?」


俺の肩でくつろいでいるゼノビアさんに話しかける


『私は別に大丈夫です、長いけどその分カリュオンさまと話せるので気になりません!』


そんなことを言われて俺は嬉しくなり人差し指の先でゼノビアさんを撫でる


『わわっやめてください!』


照れたような声で言われる


「ぷっはは」


俺はその姿に耐えきれず吹き出した


『何よ〜』


「いやいつものゼノビアさんと比べたら気が抜けちゃって」


その後も談笑しながら旅路を進む


楽しかった時間は直ぐに終わりを迎えた


「そこのお前、止まりな」


柄の悪そうな男の声が聞こえてくる


こういう時にこう話しかけてくるのは盗賊だな


「ん?なんですか?」


俺はそう答える


すると俺の体を見て


「お前、かなりいいもの持ってんな死にたくなければ身ぐるみ剥いでいきな!」


はぁめんどい


『ゼノビアさんちょっと面倒事が起きたので隠れてください』


俺は魔気を使いテレパシーのように扱いゼノビアさんに声をかける


『いえ、私だって戦えます!』


その言葉に俺は


『ダメです、貴方は一族の長こんなところで傷を負ってしまうと貴方の部下たちが人類を滅ぼしかねません』


そう言うと不服そうに『わかった、無事に勝ってくださいね!』といいポケットの中に隠れる


「ところで俺は先を急いでんだ、さっさと道を譲れ。これが最後の警告だ」


俺は語気を強め殺気を放つ


「っ!?何もんだてめぇはよォ?」


俺の殺気に当てられ怖気付く盗賊たちその頭は俺に抵抗し続ける


「あぁ?ただの旅人だよ」


そこで俺はわざと隙を見せる


「おいお前たちかかれ!」


そう言われた盗賊達はいっせいに襲いかかってくる


この数前の俺だったら少しきつかったかもな


ただし【昔】の俺だったらの話しだ


俺は魔気を使い罠を張り巡らす


奴らの武器が俺に当たることは無い


魔気の障壁は人間数人では破れないほど硬い、あの物理最強と名高いサイクロプスでさえも突破できないほどだ


「お前らそれが全力か?」


俺は最大限に挑発する奴らの気を引き判断能力を鈍らせるためだ


「舐めんなよ小僧!」


「黙って死ね!」


これで準備は完了だ


「チェックメイト」


そう言うと


魔気を鎌状に変質させ奴らの体を切り離す


「はぁ?お前何言ってんだ?」


「いいのか?周り見なくて」


頭以外の盗賊は胴体と下半身がおさらばした


「な、何をしやがった!」


「俺は言ったよ?これが最後の警告って言ったからね。君たちの自業自得だよ」


そう言い放ち俺は踵を返す


後ろからは乾いた笑いが聞こえた


人の1番の絶望は自分の大切なものを全て失うことだだから俺はやつの大切な【仲間】を奪った


『カリュオンさまご無事でよかったです!』


胸ポケットに隠れていたゼノビアさんがひょっこり顔を出す


「当たり前だあんな攻撃よりもゼノビアさんの攻撃の方が何倍も速いし鋭い」


そう言うと


『えへへ~そんなに褒められると照れちゃいますよ〜』


と照れながら答える


ううーん褒めるってよりかは畏怖の念の方が強いかなだって俺にこの力がなかったら即死だったし


まぁけど最近のゼノビアさんは妙に俺に甘い、そこが可愛いと思えてくる俺も感覚が麻痺している


そうして数日が経ち俺はシュベルト王国にたどり着いたそこで俺は


「門番、王に伝えろ。国家転覆の大罪を犯したカリュオン・バイパーが戻ってきたと」


一芝居打つことに決めた


その日のうちに国中は大罪人の自首してきたと言う話題でもちきりだった


俺は拘束され留置所に入れられている


あまりにも突飛な出来事だったらしく色々と落ち着くまでは留置所に拘束するということだった


『カリュオンさまこのようなことをして大丈夫なのですか?』


ゼノビアさんは不安そうに声をかける


『こうなることは予想していた。無理に王城に侵入しても俺の話を聞いてくれる耳を持たないだろう。だからこうして自首している』


留置所内の小さな寝床に寝転びながら会話する


「なぁあんちゃん、相当なことをやらかしたそうじゃないか。若いのにとんでもないことをするねぇ」


俺の向かいにいた人は俺にそう話しかけてくる


「ああ、あの時はああするしかなかったんだよ。俺は夢が叶ったからなだから生きる意味もなくなった。だからこうして自首してるだろ?」


俺は嘘を混じえつつそう語る


「はは、根性だけはいっちょ前じゃないか、だがなお前は長らくの間逃亡してたからな。かなり残酷な処刑方法だろうよ、それか晒し首」


確かに俺の罪状を考えるとそれが妥当だろう


「だろうな、だから最後の1秒まで大切にするよ。かなりの長旅だったからな俺は寝る」


「すまねぇな、俺も元気にやっとくわ」


ああ疲れた、穢れの森にあるベッドより品質は劣っているが野宿が続いてたからか俺は目をつぶるとすぐさま微睡みの中に落ちていった


そこからまた数日がたち


「大罪人、出ろシュベルト王がお呼びだ」


俺は内心でほくそ笑む


「わかった」


俺は一言そういい牢を出る


そこからしばらく歩き玉座の間にたった


「お久しぶりですシュベルト王、最後はあのパーティ以来ですね」


そういい俺は跪く


「そのような堅苦しい言葉は不要だ。カリュオンよなぜそなたはそのような蛮行に出たのだ?」


彼の目からは俺を信じている目をしていた


「あの夜のことですか、今更説明しても遅いかもしれませんがあの時嵌められたのです。バイパー家と親密に関わっていた黄金色の蝶の団長であるオルトネスに」


俺はそう言うと玉座の間がざわつき始める


「我はそなたの計画には興味があったのだ、我ら人類とは相容れない忌み物を手懐け共に生きて行こうなどとは人類どこを見てもそなた1人だけであろう。馬鹿らしいがそなたの熱量に負けての、王室内では支援するという声が多かった。そこでそなたの国家転覆の疑いがかかっての我はなんともできなかった。それは本当に申し訳ない」


そういい頭を下げるシュベルト王


この王様が何故賢王などと言われ民に慕われているのかがわかった気がする


「やめてください、王様が1大罪人に頭を下げるなど、変な噂がたってしまいます」


何度かなだめた後に頭をあげる


「ところでそなたは長い間どこを住処にしておったのだ?」


そう聞いてくる


「私は忌み物の住処、『穢れの森』にいました。そこで忌み物達の長とも話してきました。」


するとさっきよりも騒がしくなる


「な、なんと!忌み物達は人間の言葉が理解できるのかの!?」


「はい、彼らは彼らにしか伝わらない言語や生活をしていました。」


王は落ち着かせるために水を一気飲みして


「と、ところでどのような会話をしたのだ?」


「人間のことをどう思っているのか、これからどうしたいかなどは聞きました。」


するとゼノビアさんがおもむろに飛び立ち元の姿に戻る


『これからは私が説明致しましょう』


そう言うと近衛兵は武器を構えて警戒態勢をとる


「やめよ、これはあの忌み物とて我の客人だ。武器をおろせ」


そう言うと警戒しながら武器を下ろした


『ありがとうございます。ところで私はお願いをしに来ました。人間の皆様にひとつ提案があります』


禍々しいオーラをある程度抑えてゼノビアさんは話している


「うむ、その提案というのはどのような内容だ?」


未知との遭遇だと言うのに王の威厳を損なわなように立ち回る王もすごいと思う


『私は人類との共生を願っています。我々は見た目と魔気の所為で人類では嫌われています。だがしかしこのままの関係を続けているといつまでたってもイタチごっこが収まりません。だから今回カリュオンさまを仲介しお話をさせてもらうことにしました。提案というのは私たち忌み物もとい魔蟲族を不当に扱わない。人間と種族間の争いを無くすこと。たったこれだけです』


シュベルト王はゼノビアさんの声を聞き熟考する


「我としてはそれでありがたいのだが、シュベルト王国とその周辺の領の民が受け入れられる までかなりの時間がかかることが推測される。民の間で浸透するまで何世代もかかるだろう。それでも良いのなら提案を飲むとしよう」


王国のために動き、国民の象徴としての思考それはこの人が王たらしめているものなのだろう。


すると玉座の扉が派手に開けられる


「王よ!忌み物などと言った下等生物と手を取り合うなんて私は反対ですぞ!」


やつの見た目は俺はいやでも覚えている。


「オルトネス...」


オルトネスは俺の事を見つけると


「な、なぜお前がここにいる!王よ!この反逆者を捕らえてください!」


その言葉にシュベルト王は頭を抱える


「オルトネスよ、貴様の方が反逆者であろう?」


俺はその言葉に目を疑う


「何を頓智なことをおっしゃるんですか!そのような証拠など何処にもないではありませんか!」


オルトネスはまだ余裕そうだ


「宰相、あれももってこい」


宰相はまるでこのようなことが起きると見透かしていたかのようにある書類を取り出す


「僭越ながら王に変わりオルトネス・ランドの罪状を読み上げます。第1に国家の財源の横領、部下に対し適切な対価を払っていない、それに王を暗殺しこの国の手綱を取ろうとしたと掘れば掘るほど色んなことが出てきますね」


そう淡々と告げる宰相に対しオルトネスは心当たりがあるのか顔が真っ青になっている


「そんなのはデタラメだ!そ、そうだそこの大罪人が擦り付けてきたのだ!」


はぁこいつはこの期に及んで悪あがきするのか、俺は心底呆れていた


ゼノビアはと言うとかなりお怒りのようだ俺が事前に止めて居なければ確実にやつの首が物理的に飛ぶだろう


「何を言いますか、罪をなすり付けたのはあなたでしょう私は全て知っております私の異能をお忘れで?」


この世界には異能を持っている人がごく稀に産まれてくる。


たしか【真理の目】と言って嘘をついているのか否かがわかるらしい


「ぐぐっ、こうなればここにいる奴らは皆殺しだ!行け劣等種どもよ!」


そうすると忌み物達がぞろぞろと入ってくる


『皆、行方不明になってたものたちです、あなた何をしたんですか!』


そうすると下卑た笑みで


「そこにいる、ガキの研究結果を使い忌み物どもを従える機械を作ったのだ。せいぜいもがき苦しんで死ねぇ!」


その言葉と共に忌み物達は襲いかかってくる


「シュベルト王よお下がりください、こいつらは私たちが何とかします!」


そういい俺とゼノビアさんは忌み物と対峙する


『カリュオンさま、どうか時間を稼いで頂けますか?』


俺は頷く


「当たり前でしょう?だって貴方には俺の子がいるんだからな。大切な人は守りますよ!」


実は俺たちは婚姻を結んだ、告白してきたのはゼノビアさんの方で最初はびっくりしたが俺は告白にOKを出した


【この戦いの数日前】


『あ、あのカリュオンさま。ひ、ひとついいですか?』


その日のゼノビアさんはとてもキョドりながら話しかけてきた


「ん?どうしましたか?」


『恋中の人とかはいたんですか?』


俺も元貴族だからそういうパーティーには参加したことがあるがかあまり親密になることは無かったな


「いえ、いませんよ。元々貴族は政略結婚が多いのでもし貴族のままだったら結婚してたかもしれませんね」


そうすると意を決したように


『あの、カリュオンさま私と婚姻を結んではくれませんか?』


その時俺の顔は豆鉄砲を食らったかのような顔をしていたであろう


「えっ、それはどういうことです?」


『そのままの意味です!その、気づいたら好きになっちゃいました』


彼女の見た目は完全に蟲そのものではあるが内面はかなりの乙女であることには変わりないし、俺も少し好意を抱いているのは間違いない


「わかりました、私もゼノビアさんのことが気になっていましたから。だから貴方と共に生きると約束しましょう」


その後はみんなで婚姻式を上げたりなどでドタバタした日もあったがそれはまた別の時に話そうか


人間と忌み物の共存。その象徴に俺はなったのであった


そんなことがあったのだ、だからここで俺がやられる訳にはいかないんだ


おそらくオルトネスは魔蟲族を洗脳しているに違いない


俺がみんなに声をかけても何者かにシャットアウトされるそんな感じだ


「ゼノビアさん、どのくらい時間稼げばいい?」


『5分程度稼いでくれれば間に合います!』


これが成功すれば俺たちの勝ち


俺が負けたり、ゼノビアさんが攻撃されれば負け


対するは魔蟲族のみんな、俺の関わってるヤツらよりかは弱いはずだが多勢に無勢だ。全力を出して耐え切れるかどうかだ


「あの地獄のような日に比べちゃこんなんは辛くねぇんだよ!」


俺はその場で気分を高めるために咆哮をあげる


「久しぶりに全力と行きましょうか!魔装『天鱗』いざ参る!」


魔装とは魔気を変質させ身体中に纏わせることだ。


様々な魔装があるがそれは全て円卓の人たちを真似た力だ


次々と俺は魔蟲たちを捌く、彼らの攻撃は苛烈であり防ぐのさえキツイ


一瞬の隙を見て俺はカウンターを入れるが彼らの外皮はとても硬い


「かなり力入れたんだけどヒビだけかよ」


このままだとかなりキツイ持ってあと1分だろう


そのまま俺は耐えたが限界がきた


俺の足から力が抜ける、体が上手く動かない


クソっこんなところで終われっかよ


「おやおやぁ?カリュオン殿?もう限界ですか?あんなに意気込んでいたのにいとも容易く終わりましたね〜、早く起き上がらないと私があの族長を殺してしまうかもしれません。見てくださいこの剣は特別製でね、忌み物どもですら致命傷をおわせることの出来る剣なのですよ〜ほら早くたたないと死んじゃいますよ〜?」


ニヤニヤした顔でオルトネスは俺の顔を覗き込む


クソが俺の思考が全て怒りに変わっていく


俺は力を振り絞り身体を動かす


フラフラとした足取りで俺は立つ


「てめぇみたいなクソ野郎にゼノビアは殺させない!」


そういい俺は怒りを力に変える


魔気とは負の感情に影響を受けやすいだからそれを利用した


「....こい『アブソリュート』お前はここで殺す」


そう言うと魔気が大量に集まる


体を構成してるものが1から作りかえられてるような気分に襲われる


表すのが難しい感情に支配される


安心と不安普段いり交わらない感情が俺の中で渦巻いている


『やぁ、はじめましてかな?単刀直入に聞くね?お前はどうしたい?』


ん?俺は殺したい


『それはほんとに君の気持ち?』


何が言いたい


『君のホントの気持ちはみんなを【守り】たいんでしょ?』


ま...もる?


『そう君がこうやって感情に支配されてる今でも君のことを信じてくれる子がいるじゃん?君はその子に傷ついて欲しくないんだよね?』


そうだだから邪魔者は殺す


『何も殺すことだけが守ることじゃないよ、先に言っとくとこのまま感情の思うがままに支配され動くと、君は君でなくなる。お前はあの子が好きだから守りたい、だからこそ力を使ってでも守りたい、違うかい?』


そうだ、俺はゼノビアを守りたいたとえこの命が枯れ果てても彼女を守りたい!


『おっコントロール出来たみたいだね、それじゃまた君が必要とした時に出てくるよ』


お前は一体何者なんだ?


『ん?僕はね■■■■■だよ。それじゃまたね!』


そういい俺の前から消える


気がついたら俺は変な鎧を纏っていた。


何が起こったか分からない


分からないけど、これはみんなを守るために使うって言うことだけはわかる。今ならなんでも出来る気がする


「な、なんなんだお前は!その鎧はなんだ!」


オルトネスが喚く


「うるさいな、お前が殺そうとしてるのはお前ごときが触れていい存在じゃないんだ」


俺は淡々と言う


「まるでさっきとは雰囲気が違う、何をしやがった」


「ただ俺が何をするべきかわかっただけさ」


俺は高速で間合いを詰める


「いいのか?お前の生殺与奪を握っているのは俺だ、そのくだらない武器をおろせ」


後ろからみんなが襲ってくるが俺は左手をかざすと魔気が放出される。いつもとは違い優しいオーラをまとっていた。それを受けた彼らからは凶暴性が消えた


「しねぇ!」


オルトネスが剣を振るってくるが俺に届くことは無い


「そのような生ぬるい攻撃なんて通じないぞ?これは最後の忠告だ武器を下ろして投降しろ」


「ふん、誰が貴様などの言うことなど聞かなければならない!」


こいつはほんとに状況が分からないらしい


「忠告を破ったな、それじゃ来世は家畜にでもなっとけ」


俺はそういい彼の首を刎ねる


俺は全て終わったんだなという安心感と疲労で意識を手放した


俺は何をしていた?全身が痛てぇ


『あっ起きましたか?』


「ああ、何とかな」


俺は疲れが溜まった声でそういう


『ほんとに良かった、よがっだでずよ〜』


泣きながらに俺の無事を喜んでくれた


俺は泣き止むまで頭を撫で続けた


その後は色々とあった


変わったことといえば正式に魔蟲族と人間が手を取り合う世の中になったこと。


それと人間と魔蟲族の共生の象徴として俺とゼノビアの銅像が立てられたこと。そして


「カリュオンよ、我はそろそろ歳だ。だから王位をそなたに献上する!」


王様の突飛な発案により俺が王様、ゼノビアが王妃になった


やっぱり王様になったのが1番驚いた、元大罪人がまさか一国の王になるなんてまるで夢物語のようだ


そして私とゼノビアの間に女の子が生まれた


名前はアリス


人間と魔蟲のハーフであるからどちらの特徴も引き継いでいる


見た目は人に近いが、おしりには蜂特有の毒袋と針が着いている


それからは毎日が楽しくてしょうがない。


人生ってのは諦めない限り光り輝くんだと思った


「あぁ〜ほんとに懐かしいよな」


『ええ、まるで昨日のように思えます』


「パパ?ママ?また昔話?それより遊んで!」


アリスを見てゼノビアが笑う


『この子の好奇心は誰に似たのかしらね?』


「それはお互い様だろ?」


『それもそうですね、カリュオンさま愛してますよ!』


少し照れて言う彼女に悶えながら俺も言う


「ああ、俺もゼノビアのことを愛してる」


そうして今日も平和な一日が過ぎるのであった。

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短編 全てを失いしものと全てから嫌われた忌み物の邂逅、世界はどのような変化を遂げるのか? ナリゾー @kamui0327

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