第13話 ホルンじゃないけど「ホルン」なもの
ところで、ここまで述べてきた、円く巻いた金管楽器のホルンのほかに、イングリッシュホルンというものがあります。
イングリッシュホルンもホルンなのかというと、ぜんぜん違います。
木管楽器の一種です。
オーボエの仲間、「低い音の出るオーボエ」です。オーボエともまた違う、落ち着いた、より「郷愁をさそう」的な音が出せます。
有名なのが、ドヴォルザークの交響曲第九番「新世界から」の第二楽章のソロでしょう。
この曲については、『続・台風の話』で取り上げています。
https://kakuyomu.jp/works/16818093087694159171/episodes/16818093087897562262
「なんで台風の話なのにドヴォルザークの話なの?」というような話も含めて、そこに書いています。
気象の勉強をしていると、ときどき音楽とかぶるものが出て来ます。
作曲家のドヴォルザークと、気象学者のドヴォラックが、じつは同じ綴りだったり(チェコ人またはチェコにルーツがある、という点が共通しているだけで、血縁関係はないと思います)。
また、音楽では「ヘルムホルツ共鳴管」というものがあります。オカリナのように、管の形ではない共鳴装置のことをいうようです。
気象分野ではケルビン‐ヘルムホルツ不安定波に伴う雲という、とても自然に発生したとは思えない、「江戸時代の絵師がデザインしたんじゃないの?」というような芸術的な雲があったりします(実見したことはありません)。
これはどちらもヘルムホルツという科学者の業績と関係があります。
イングリッシュホルンと区別するために金管楽器のホルンを「フレンチホルン」ということがあります。
しかし、別にイングリッシュホルン(フランス語でコーラングレ)がイングランドだけで発達したわけでも、フレンチホルンがフランスだけで発達したわけでもありません。
オーボエの仲間は名づけかたが独特です。「イングランドのホルン」のイングリッシュホルンのほかに、オーボエとイングリッシュホルンの中間の音高を持つ「オーボエダモーレ」という楽器もあります。「愛のオーボエ」です。
ほかの楽器のように、「バリトンオーボエ」とか「バスオーボエ」とかいわない。
なんでなんでしょう?
ほかに、サクソルン属やサクソルン属系の楽器が、ホルンとは違うのに、「フリューゲルホルン」、「アルトホルン」、「バリトンホルン」などと呼ばれるのは前に書いたとおりです。
さらに、ジャズでは、管楽器全般を「ホーン」といいます。たぶんポピュラー音楽でもそうです。
たとえば、ジャズで「ワンホーン編成」というと、ホルンが一人入っているのではなくて、ホルンではない管楽器が一人入っている編成のことです。ドラムス、ベース(コントラバスまたはエレキベース)、ピアノの「トリオ」に、アルトサックスの奏者が一人入ると、アルトサックスのワンホーン編成(ワンホーン・カルテット)になります。
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