願いを叶えて欲しい彼女たちと願いを叶える俺

@sink2525

第1話 〇〇な彼女と〇〇な彼女

 立派な高校の前に立ち、深い深呼吸をする。桜の木が咲き誇り、少しずつ散っていく。

 春だな、自分に問いかける。

 

 緊張で胸が張り裂けそうだ、だってこれからこの高校で3年間過ごすんだぞ? 緊張しないはずがない。

 どんな人と友達なるか、どんなクラスか、どんな先生か、どんな高校か。

 

 すべてが気になってしまう。

 

「早く行かないと遅刻するよ?」

 

 ふと、後ろから声が聞こえた。

 

 後ろを向くと、美味しそうにチョコを食べている謎の彼女が立っていた。

 見た目から考えて同じ、学年だ。

 

 てか、そんなことはどうでもいい、今俺に声をかけたのか? 多分そうだよな。 俺のこと見つめてるし。

 

「さ、早く行こ」

 

 そう言って、彼女は走り出す。

 

 初日から遅刻はありえない、そう思いながら彼女の後を追った。



 ここが、今日から通う教室なのか。

 

 上を見上げる。

 

 1年3組と書かれた名札に目が行く。

 

 まず、雰囲気を見極めるんだ、どんな雰囲気かを。そこからやっと始まるんだ俺の高校生ライフが、まずは。

 

「ちょっと通っても良いかな?」

 

 後ろから声が聞こえ、後ろを向く。

 

 何度もガムを噛みながら俺を見つめている謎の彼女が立っていた。

 

「あ、ごめん、邪魔だったよね」

 

「いやいや、緊張してるなーって思ったよ」

 

 そう言い、何故か彼女は俺の背中を押しながら教室に入っていく。

 

「ほら、緊張してる時は笑顔だよ!」

 

 肩をポンポンと叩き、笑顔を送る彼女。

 

 朝からどうなっているんだ? なんか可愛い人多くないか? それに優しい人が多いな。そう思いながら指定された席に着く。

 え? 俺の席は窓側の席だった。それは嬉しいことだが、前に座っている人は校門前で会った彼女で、横に座っているのはガムを噛んでいる彼女だった。

 これは、運命と言うべきだろうか。

 

 俺は鞄を横にかけて座る。

 

 前に座っている彼女は何故かチョコが入って袋を机に広げていた。ここは駄菓子屋か? 一人ツッコミをかまし、横に座っている彼女に目を向ける。

 横に座っている彼女は何故かガムとカロリーカットのお菓子を広げていた。

 

 この学校は生徒が販売をするのか?

 

 俺は首を傾け、自分の席に目を向ける。

 

 いつの間にか、チョコとカロリーカットのお菓子が置かれてあった。

 

 えーと、え? 何で俺の席にチョコとパンが置かれてあるんだ?

 

 ふと、前を見る。

 

「これ、飽きたからあげるよ」

 

 前に座っている彼女が俺の顔を見て、優しく微笑む。

 

 天使なのか? それとも悪魔なのか? そんなバカことを考えていると横に座っている彼女が照れくさそうに言い始める。

 

「これ、なんとなくあげるよ」

 

 なんとなくで、知り合ってすぐにパンをあげる人が居るのか? 居るなここに。

 

「えーと、二人ともありがとう」

 

 二人は頷き、体を前に向ける。

 

 扉が開き、先生が入ってくる。

 

「みんな、今日から1年よろしくな」

 

 長い髪で眼鏡をかけている先生に目が奪われる。

 

 この人本当に先生なのか? モデルとかの方がイメージつくけど。

 

「では、みんな自己紹介を始めよう」

 

 先生は黒板に自分の名前を書き始める。

 

「まず、私の名前は東山光だ」

 

 名前も美しいな。一人で鑑賞に浸っていると、隣に座っている彼女が俺に向かってガムを投げてくる。

 

「どうしたの?」

 

「別に」

 

 え? もしかして、俺はもう嫌われたのか? そんな。

 

「では、始めよう」

 

 光先生の一言で生徒たちは自己紹介を始めていく。

 

 何分経ち、横に座っている彼女の番になる。

 

「私の名前は、嵐山水樹です」

 

 深いお辞儀をする水樹。

 

 クラスに居る男子生徒は目が光り輝いていた。

 

 嵐山水樹は綺麗な短髪で制服も美しく着ており、まさしく天使に近かった。

 まぁ、俺はガムを投げられたがな。

 

 そして、俺の前の席の彼女の番になる。

 

「初めまして、私の名前は新島沙也加です」

 深いお辞儀をする沙也加。

 

 これまた、男子生徒が目を光らす。

 

 新島沙也加は長い髪を垂らし、まるで花のようだった。

 

 はきっり言って、この二人は容姿端麗だ。そんな二人に囲まれているのは不幸に近くないか?

 

「えーと、真治斗真です」

 

 俺は深いお辞儀をする。

 

 すると、何故か横から『ふん』と声が聞こえてきたが無視しよう。

 

 無事に自己紹介が終わり、放課後を迎えていた。

 

 今日のお昼はコンビニで買おうかな。財布の中身を確認して斗真は教室を出る。

 

 その背中を見つめる二人には気付かずに。




 「合計、1550円です」

 

 最近のコンビニは全部が高い、とにかく高い、高すぎて高い。

 

 そう思いながら、支払いを済ませコンビニを出る。

 

 だいたい、お昼だけで1550円もいくのは俺の食欲の問題だな。

 

 自分の家に向かっている時、ふと公園に目を向ける。

 

 公園か、小学生の頃はよく遊んでいたけど、遊ばなくなったな。

 

 え、あれは見なかったことにした方がいいか?

 

 ブランコに乗りながら泣いている、水樹と沙也加が居た。

 

 何があったんだよ経った数時間で。

 

 はぁ、どうしようなか。でもお菓子貰ったしな。

 

 別に助けたくないわけじゃない、ただ、買ったアイスが溶けてしまうし、絶対に恋愛関係の話だ。俺には分かる、なんせ俺はラノベをよく読んでいるから。

 重たい足を公園に向けて歩き出す。

 

 「その、二人ともどうしたの?」

 

 俺は少し距離が離れた場所に立ち、二人の顔を見つめる。

 

 二人ともやっぱり泣いていた。

 

 こんな短い時間で恋愛問題があったのか? どんだけ最近の高校生は恋が上手くいかないんだよ、てか初日で恋愛問題ってなんやねん。

 

「私ね」

 

 水樹は泣きながら口を開ける。

 

 振られたの、とかだろうな、多分。

 

「私やせたいの」

 

「へ?」

 

「私はね太りたいの」

 

 俺の言葉を無視して沙也加が言った。

 

「へ?」

 

 待てよ、そうじゃない、えーと、へ?

 

 えーと、沙也加が泣いているのは太りたいから。

 

 それで、水樹が泣いてるのはやせたいから。

 

 えーと、えーと、これは夢だな、そうだ、夢だな。

 

 斗真はバレないよう公園を出ようとするがもう遅かった。

 

「ねぇ、私のやせたい願いを叶えて」

 

「ねぇ、私の太りたい願いを叶えて」

 

「無理です!」

 

 まさか、泣いてる理由がやせたいから、太りたいから、で泣いとるとは思わないだろ。

 てか、泣く要素はどこにあるんだよ。

 

 あと、沙也加に関しては太るメリットがないし。まして、水樹もやせるメリットないだろ。

 二人とも他の生徒から見たら美人だし、人気者になるだろ。

 

 これが、やせたい水樹と、太りたい沙也加との出会いだった。

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