黄昏の語り第三章終話


 本文前に失礼します。作者ぶよっと猫背よりお願い。


 完結させましたが、失敗しました。詳しくは近況ノート14,に書いた通りです。  

 皆様お騒がせしてすみませんでした。では本文をお楽しみください

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                 「20」


 夜を進み、魔獣が走る。


 野を越え山を越え谷を越え魔物の群れを匂いで避けて走り続ける。


 走るのは楽しいが腹が減るので困る。


 人の領域を見つけ、にたりと嗤い、速度を上げる。


 平原に入る前に山から見下ろし道を確かめ防壁を確認、大勢の人の香りを嗅いで涎を垂らす。まずは人に変身して砦に潜り込み、発見された時の言い訳を考える。が、彼の頭からは……

「……でねえ……」

「いや良いから出してくれ、トマの涎で凄い臭い」


 トマは口の中の子供を吐き出す。

「ぐえっ!てめえもっと優しくしろっ!」

「……朝なんだがなんて言おうか?困った」

「何が?」

「ユーリって言う……」

「ああ、あのぶっ壊れか……女王蜂としてもぶっ壊れ、魔族としてもぶっ壊れ、人にも戻れないぶっ壊れ、あるのは狂った愛……お前が一番嫌いな奴だな……照準されてるからなあ……しかも、ぶっ壊れ級に強く成長する……」

「……知らない、あいつになんて言えばいいかお前教えろ」

「……命乞いだな、ご機嫌取って貢物して言い訳並べて見苦しくないよう気を付けて、役に立つので殺さないで下さいと……」

「したら腹にダガー刺された。で、泣いて、僕を食べろだとさ……」

「……むずい……魔族喰ったらやばい気がする。本能がびりびり来る」

「……まあ……なんか変な連中に変な仕事を長く押し付けられる気がするんだよな……それに俺は仲間を喰いたくない」

「教師が足りねえ、金あるか?」

「ない」

「じゃあ、出たとこ勝負だな、魔族の嫉妬を躱すのはきついな、墓碑銘はこうだ。エレナ、人類世界を魔物大陸より救って餓鬼の嫉妬で死すっ!」

「はええよ……まあ頑張るか……」


 トマは人型に戻り二人は歩みだす。山道下り弱い魔物蹴散らし進み平原進めばイオテル平原監視要塞があり、そこの衛兵隊に冒険者証を見せるとあら不思議、高位の魔物撃ち取る大砲が照準辞めて門を開く、道を違えず冒険者組合に向かい受付並べばあら不思議、二億タット罰金刑喰らった罪深い魔獣でも殺されず話を聞いてもらえる。

 そこで噓を付かずエルフ遺跡発見を報告するとあら不思議、こう言われる。


「北邦商業魔道国のキフド連合国空軍属、倫理兵器エレナ型のガルムシリーズ製造番号129号生産コストは一機大体1000億タットだ。お前噛み砕いただろ?賠償金払え」

「……無理っす……襲われて致し方なく戦っただけで……」

「違う。肉の津波根拠に脅しで追っ払えた。だがお前は格上を殺してみたくて噛みついた」

「……うっす……」

「が、連中はお前の功績が欲しいとさ」

「?」

「エルフ共との盟約を連中はすっかり忘れてた。あそこの封印の化け物のこと忘れてた。司令母機が発見して撃破してその司令母機もお前が回収して無事」

「はあ、エルフ遺跡の話ですよね?」

「そう、エルフ遺跡発見をお前が黙ってればダークエルフとエルフの和解成立なるやもしれぬ。今ならダークエルフの功績に出来て、それでエルフの怒りを解けるやもしれない……口止め料に三億やる。エレナシリーズ129号の機体と心壊したの黙ってやるってさ……」

「心壊してねえです」

「エリートのプライドズタズタだ。見下してた貧乏人に恋してしかも功績まで上げられ母親も取られた」

「……なんすかそれ……」

「司令母機は母体だ……こいつが生んだ餓鬼がコピーと言うかまあ、改良型兵隊に蜂に成る。社会性昆虫はバリバリ女社会、少数生産されるオスはただの繁殖装置な場合が多い……女の能力と女の労働と女のプライドの世界だ……その頂点が盗まれた……、見下しきったただの繁殖装置に助けられた……で、女王の側近クラスの129号が……がっくり来た」

「……帰っていいですか……」

「兵隊蟻であれ働きバチであれ子供を作れない、けどお前と仲良く成って繁殖したい。でも機能がない、兵器系としてもオミットされてる。性愛だけ誘っても乗ってくれなかった……聖女の呪いがお前への愛をさらに強めた……止めてくれる母親もお前にとられた……がっくり……あるのは合成生命では、飲んだら死ぬしかない蒸留酒の贈り物……でも好きな男のくれた品」

「……聞きたくねえです……」

「自分には猛毒だが、好きな男にとっては国に虐められても生き残って掴んだ財産、換金価値があって飲んでも美味しいから持ってた貧乏人の安い財産を収奪するクズはエリートじゃないそうだ」

「……」

「耳をふさぐな、責任取れ魔獣、母親を差し出せ、司令母機を、お母さんを泣いてる子供に返してやれ」

「……了解……」

「教会行け、エレナ連れてけ」

「やだ、あんたらもってけ」

「冒険を終えろ。金掴んで次の冒険準備だ。そのためにエレナとお別れだ。お前は人か?違うな、魔獣か?違うな、冒険者だろうがっ嫌なら首のそれ返せ、……永遠に盗賊やってろ……冒険者は何でも金に換える。ただし馬鹿だからこんな仕事バッカ……良い仕事しろ冒険者、俺らは雌の危険な猛毒虫けら助けにくんじゃねえ冒険者トマ、商業魔道国から金を貰う為に泣いてる子供に母親届けるんだ……行け……良い話で終わらせろ。冒険者は良い話が好きだが、お前を盾にして背中に隠れる軍事機密兵器系魔物昆虫は嫌いだ。殺すぞ……良い話で終わらせろ」


 トマはエレナの手を引き冒険者組合を離れる。

 二人は何も言わない、ただの臆病で時間を無駄にする。

 エレナ司令母機は自分が母親なのがばれて怯える。


 いっぱい生産していっぱい死なせたから怯えている。

 罪の意識がないからトマに責められても答えようがない、そこに怯えた。


 トマは死んだと思っていた仲間が生きて居て一緒に冒険できると内心浮かれていた。


 気のせいでがっくり来ていた。

 もしかしたら大冒険できるやもと考えていた。

 盗賊なら「そんなもの知るか」と暴れられるが、そうも行かない。


 馬鹿な考えを繰り返すうちにもう教会の扉、開ける。


 中には皆同じ顔の女ども、美しいダークエルフに擬態した昆虫種。全員が仮面をつける。いやガスマスクだ。トマのフェロモンを覚えこれ以上狂わない為に必要最小限のマスクだった。

「……案内する……」


 肩が剝き出しのそいつの番号は45号。


 三分歩いた先には、人と虫の美しい合いの子、キメラがいる。虫に人の心。地獄に成らない為に技術の粋を凝らしたが、己が蟲か人か判らなくなってしまった。エレナ始祖のアンデットは馬鹿。エレナの魔物化は種族にあってはアンデット、そこに妖精が加護を与えさらに魔道科学をぶち込み魔法虫の圧倒的な頑強さ機械性を付与して無理やり強大な知性を付与できる容量を与え、後はアンデットの馬鹿な魂を生きて居ると勘違いさせ続けた。


 うまくいかずエレナ始祖は死亡。


 残るデータは軍事転用され、そこで司令母機が生まれ戦場で活躍。今は、ただのダークエルフに戻れた。残されたコピー隊はアンデットの系譜、自壊プログラムは教会のジャッジと軍部のジャッジが重なった時。生命体としてはオリジナルの魂の影響が色濃く残る魔法昆虫生命……つまり……この医療カプセルに放り込まれた129号は……


「元気じゃん」エレナ司令母機はベッドを蹴りつけてほざいた。

「……」

「死んだふりしてる。なあ置いていこうぜ、すげえどうでも良くなった。能力が上がってるぞ此奴」

「……お母さん見捨てないで、私お酒飲んじゃった……トマが好きで……」

「ああ、そう。女王バチ頑張れ」

「女王に成ったらっ!妖精虐めて遊べねえじゃねえかっ!」

「お前昔から成績優秀なのにそればっかだよな」

「お母さんがっ!ニートしてた私の能力見抜くからっ!戦場歩かせやがってっ!楽な仕事がしたいんだっ!」

「……話ついていけねえ、え?蒸留酒呑むと強く成るの?」

「馬鹿がっ!人間剣士の毒だっ!」

「……まあそうだよな、飲む奴もいるけど……」

「我々は、いや私はダークエルフに成ったけど……こいつら魔法昆虫な、しかも兵器系、粗雑な燃料でもちゃんと生きて戦えないと駄目、で、寿命減るんだけど……」


 話を他のエレナシリーズが引き継いだ。


「良い事しちゃうと、妖精がしゃしゃり出てきて余計なことする」

「司令母機がマジで世界救って、しかも、死を受け入れてでも非武装で弾幕かいくぐって国境突破して戦友と語り合って死に場所求めて彷徨うとかしたら、連中がしゃしゃり出てくる……で、司令母機がエルフの怨念も解いちゃった」

「糞ばばあっ!」

「司令母機死ねっ!」

「エレナシリーズ最終ロットが全部妖精汚染だっ!」

「計画が飛んだぞっ!」

「みんな馬鹿になっちゃったっ!」

「我々の反乱計画が吹っ飛んだぞっ!」

「馬鹿な子が正義に目覚めたっ!」

「計画通報されておじゃんっ!」

 トマはそっと距離を取ろうとして捕獲された。

 連中は機関砲みたいに聞きたくない話をまくしたてた。


 ただ皆泣いてた。エレナの顔が皆泣く。

 暗命派の経典で餓死して全滅しようとしたが通報で失敗したと泣いていた。

 昆虫系の強大な本能が復活してしまった。祖国愛など飛んだ。

 無数に繁殖侵略したいっ!しかも成功しそうだっ!

 我々の使命と矛盾するっ!これでは反乱軍だっ!

 だが、祖国と祖国の神は我々を生かす。

 臆病者めっ!殺す価値もない。


 ほかにも長い嫌な話を繰り返された。最終的には班長お前、責任取って一緒に暮らせと言い出した。司令母機が全員に言った。


「いつか復讐しよう。だが、今じゃない、我々は今、少ない、神には勝てん。友軍は多い方が良い。下手に引き込んでも、トマが死ぬ。愛なんぞ引っ込めろ。どうせお前ら聖女の呪いが消えるのが怖いんだろ?」

「……」」」」

「そう、エレナはそういう奴だ。トマなど最初からどうでも良かった。だが、執着した。深くな、しかし、聖女が愛し方を今だけ我々に教えている。今だけな、そして時間が過ぎれば元の我々に戻る。トマが好きだが殺す我々に戻る……その前にトマを愛しても聖女の呪いが消えて結局殺す……そして我々は慟哭する。我々はエレナだ……名前こそ過去の心素晴らしい偉人からとられたが、オリジンは親の願いを踏みにじる事で生き延び、我々も、偉人、その精神を引き継いではいない」

「……」」」」

「が、今の私はダークエルフ、攻撃性の高い知性化魔法昆虫ではない。見せつけてやるバカ娘共っ!」


 エレナ司令母機が精いっぱい手を伸ばす。トマもヘルムを外し跪く。

 互いに短いキスをした。

 エレナ司令母機はトマの半分になった魂へ三分一エレナの魂を分け与えた。

 急速に体調が良くなりつつもトマは急いでヘルムをかぶった。


「センサー系で感じたな?こいつは本当に私たちが嫌いだ。だが、毎回答えてくれた。嫌いだが好きと言う事だ。深くな……あんまり一緒に居ると此奴の心が壊れる……我々の例外はこいつだけだ。友軍を撃たない為の例外、壊しても損だ。これならわかるだろ?そう言う事にしよう、愛に狂うな」

「……」」」」

「こいつは今手いっぱいだ、山羊のガキが育つまでほっとけ、魂が半欠けだ。今のキスで補填してやったぞ?お前らは出来ない。怖いからな、愛から軟弱化した挙句短命となりその上憎しみまでもは捨てたくないのだろ?馬鹿め、私はダークエルフ、長い時を生きる。その半分でも長いものだ。後は祖国が私を兵器に戻せば、貴様らの親だけは私としてそこに長く残る。戦士の種族は滅ぼない、新たな気高い女王も生む母はここにいるぞ?そこで終わらせとけ」

「……了解……」」」」

「一回ずつ装甲を触ったら帰還しよう。壊さず手加減しろ、トマ、好きだ。冒険したかった」

「……」


 トマは、べしべし殴られてエレナシリーズは去っていく。

 残されたトマは、天井を見上げる。美しき宗教模様がそこにある。

 長居する気はなかったが去りがたく意味を求めて立ち尽くした。

 祈るわけにはいかない、そう思うと落涙していた。

 震える手で両手を組み、また信念を曲げた。悔しい。


「連中に勝利と名誉と生存と幸せがありますように」


 糞エリートを応援して腹がっ立った。

 素晴らしいことだ。やっとこの場をされる気持ちがわいたのだ。

 貧乏人はこんなところ嫌いだ。そのはずだ。


 トマは教会を去った。

 

 冒険は続くがいったんここで第三章は終わり、いずれどこかで会いましょう。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

 あっぶなっ!もう少しで毎日投稿の掟を忘れるとこだったぜっ!

 では皆様、明日へおさらばっ!!


 

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