第4話 青春の寄り道カフェ

「俺たちの青春を返してくれ!」 第4話:青春の寄り道カフェ


星鳴高校の校則には、「放課後の寄り道禁止」がある。

理由は「寄り道が勉学の妨げとなり、事故やトラブルの原因になるから」というものだが、蓮見翔にとっては単なる「自由を奪う言い訳」にしか思えなかった。


「なあ、今日はちょっと寄り道していこうぜ」


放課後の教室で、翔は隣の席の柊花恋にそう持ちかけた。


「寄り道? それ、思いっきり校則違反じゃん」


花恋は呆れた顔をしながらも、その提案に少しだけ興味をそそられていた。翔が何を考えているのか、知りたかったのだ。


「だからいいんだよ。青春は校則を破るところから始まるんだろ?」


翔がそう笑いながら言うと、花恋は肩をすくめた。


「まあ、付き合ってあげるけどさ……ちゃんと安全なところにしてよね」


「おう! 駅前のカフェにしよう。ちょっとくらいなら大丈夫だろ」


翔は花恋を促しながら教室を出て行った。


二人が向かったのは、駅前のカフェだった。放課後の時間帯には学生が集まり、賑やかな雰囲気が漂っている。

翔は何の躊躇もなく店内に入り、窓際の席を確保した。一方で、花恋は少し落ち着かない様子で周囲を見回していた。


「本当に大丈夫かな。知り合いとかいないよね?」


「大丈夫だって。こんなとこで誰かに会ったら、それはそれで運命だろ?」


翔がそう軽口を叩いた瞬間だった。


「ん? 翔じゃん!」


カフェの奥から声が響き、翔と花恋が思わず振り返ると、そこにはクラスメイトの風間遼(かざま りょう)が立っていた。


「……運命って、こういうこと?」


花恋が半眼で翔を見つめる中、遼は二人の席に駆け寄ってきた。


「お前ら、こんなところで何やってんの?」


遼はニヤニヤと笑いながら、翔の肩を叩いた。彼は同じクラスの中でも明るく社交的な性格で、友達の多いタイプだ。


「いや、ちょっと寄り道してただけだよ」


翔が答えると、遼は目を輝かせた。


「寄り道? それって校則違反じゃん! お前、そんな大胆なことする奴だったっけ?」


「まあ、最近ちょっと自由を取り戻そうと思ってさ」


「自由って……お前、ついに反逆する気か?」


遼が興味津々で問い詰める中、花恋は困ったように口を挟んだ。


「遼くん、お願いだから先生に言ったりしないでよね。私たち、ただカフェに来ただけだから」


「もちろん言わないって。そんな野暮なことするかよ。むしろ――」


遼は一瞬間を置いてからニヤリと笑った。


「俺も混ぜろよ。青春するんだろ?」


「え、遼まで?」


花恋が驚きの声を上げる中、翔は「仲間が増えるのも悪くないか」と笑った。


「いいじゃん、どうせ青春するなら賑やかなほうが楽しいだろ」


「はぁ……しょうがないな」


花恋はため息をつきながらも、どこか楽しそうに見えた。


カフェでの青春談義


三人で注文したドリンクを飲みながら、翔と遼は「青春」について熱く語り合い始めた。


「やっぱさ、青春ってのはスリルが必要なんだよ」


「それな! こうやって寄り道するだけで、なんかドキドキするもんな」


「そういう意味では、俺たちの学校は青春の敵だよな。校則厳しすぎて何もできねぇし」


「だよなぁ。俺、恋愛禁止の校則とか、正直笑っちゃうよ。青春の定番なのに禁止とか、意味わかんねぇよな」


遼がそう言うと、翔は頷き、ふと花恋の方を見た。


「花恋はどう思う?」


「私?」


突然話を振られて、花恋は少し戸惑った。ストローをくるくると回しながら、慎重に言葉を選ぶ。


「私は……別に青春がどうとか、考えたことなかったかも。翔に誘われるまではね」


「じゃあ今は?」


「んー……今は、少しずつ楽しくなってきたかも。翔のおかげで、なんか違う景色が見えてきた気がするよ」


その言葉に、翔は思わず顔を赤くした。遼はそれを見逃さず、「おお、なんだなんだ」とニヤニヤと冷やかす。


「お前ら、そういう感じ?」


「違うって!」


翔と花恋が声を揃えると、遼は声を上げて笑った。


青春はこれからだ


カフェを出た帰り道、三人は駅前の夕焼けに染まる通りを歩いていた。


「いいね、こういうの。俺たち、これから青春するぞーって感じだな!」


遼が声を張り上げると、翔と花恋も思わず笑った。


「バカみたいに言うけど、ちょっと同意しちゃうのが悔しいかも」


花恋が肩をすくめながら呟き、翔は笑いながら頷いた。


「そうだな。青春はこれからだ」


三人の影が長く伸びる夕暮れの道――その中で、翔と花恋の心には、新しい日々への期待が確かに芽生えていた。


(第4話・完)

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俺たちの青春を返してくれ!! @didi3

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