まおーそりすと
錠千るい
プロローグ
人間の本質は、どうであれ変わらない。
結果論だけ見れば。
己を変える柔軟性が強さなら、変わらない不変性もまた強さに分類される世論はどっちつかずとも言うべきだけど、あるいはどちらの人種も存在し得るという希望を指し示しているのかもしれない。
きっと彼女は
「変わろうって
と言うのだろう。
現実よりも、理想だと。
結果論よりも、過程論だと。
「人間が本当に変われないのなら刑務所は更生施設でなくなるし、教会は懺悔の場じゃなくなるだろ。前例がないなら施設なんて作られない」
刑務所は更生施設の前に隔離施設として存在している。告解室はそもそもプロテスタント系の教会には存在しない。カトリックは神への懺悔に司祭を経由する必要があるから、モノがあるだけのこと。現実は打算的にできている。
「変われるよ。変わろうとしてんなら」
変わりたいどころか、自己を消し去りたいとまで足掻いている彼女にとってそれは、確信などではなくやはり希望論なのかもしれない。心の底から願っている——希望。彼女の場合はその希望が科学の進歩によって報われる可能性を秘めているけれど。より源流の、
本分は、本質は——本性は、変わらない。変わらないし変われない。
彼女の本質は、最初から眩しかった。
喜びも悲哀も苦悩も等しく眩しく、こちらの目さえ眩ませて、あわよくば『変われるかもしれない』と幻想すら見させるほどに。
そして私の本性は、最初から穢らわしかった。
人間の本質は、どうであれ変わらない。
人間は変われない。変わらないし変われない。
結果論だけ見れば。
だけど——変わらなくてよかったのかもしれない。
変われなくてよかったのかもしれないね。
そう、13歳のときだったかな。
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