平凡リーマン、異世界でスローライフしようと思ったら最強に成り上がった件
白金豪
第1話 異世界転生
「はぁぁ〜。今日も深夜での帰宅か」
ブラック企業で働く俺(高橋悠真)は真夜中の道を進みながら大きな溜息をつく。
頭は働かないまま身体だけを動かして帰路を進む。
「もう働きたくない。楽な生活を送りたいよ」
俺は弱々しく現実に対する不満を口にする。
自宅のアパートの前に1つの横断歩道がある。ここを通らないと自宅まで帰れない。
「明日も朝から仕事だから早く寝ないとな」
憂鬱な気分を味わいながら、特に周囲を注意せずに横断歩道を渡る。
ブォ゙ォ゙ォ゙〜〜。
車のエンジン音が俺の耳に響き渡る。音のした方向に視線を向けると、大型のトラックが自身に接近していた。
気づくのが遅かった俺は呆気なくトラックに轢かれた。
多大な痛みを一瞬だけ感じた後、俺はあっさりと即死した。目の前は瞬時に真っ暗になった。
「うぅ〜ん」
なぜか目が覚める俺。
「俺は確かトラックに轢かれて死んだはずだ」
理解が追いつかない俺。自身の身体を確認するが、以前と変化はない。トラックに轢かれたはずなのに血が身体から流れていない。
「ここはどこなんだ? 」
俺は周囲を見渡し、戸惑いながら呟く。
俺の目には見覚えのない森が広がる。
「あなたは1度死んだのですよ」
聞き覚えのない声が俺の耳に届く。
突如、神々しい光が生まれ、俺の目の前に銀髪の美女が出現する。その美女は存在が光り輝いており、女神と錯覚するほど美しかった。
「あなたは前の世界でトラックに轢かれて死んだ。そして、この世界に転生した」
「転生ってラノベの異世界転生で出るあれか? 」
俺は転生という言葉に反応し、初対面の相手にも関わらず、無礼にもタメ口で尋ねる。
「ラノベの異世界転生かは分かりませんが、違う世界に転生したのは間違いないでしょう」
目の前の銀髪の女性は丁寧な口調で淡白に答える。
「そうか。そうなのか」
俺は思った通りの返答が得られずに、少し気分を落とす。ラノベの主人公のような経験が少なからず出来たのではないかと思っていた。
「転生のおまけというべきでしょうか。あなたに3つのスキルを差し上げました。全ての武器を極める能力、他者のスキルや魔法を即座にコピする能力、自然と動物を操る能力。これらの能力が3つのスキルの内容です」
銀髪の女性は口調を変化させずに、衝撃の事実を口にする。なに! 転生のおまけで3つのスキルを差し上げた? これはラノベの異世界転生と似た展開じゃないか?
俺は少なからず高揚感を覚える。
「俺はこのスキルを使って何をすれば良いんだ? 使命でもあるのか? 」
俺は恐る恐る尋ねる。
前の世界?のブラック企業で散々働いた俺は、できる限り身を削りたくなかった。平穏な生活を送りたいのが願望だ。
「別に使命など存在しませんよ。3つのスキルをどう使うかも、どう生きるかもあなた次第です」
「それはつまり俺が自由にこの世界で生きて良いということか? 」
「そういうことです。この世界を十分堪能してくださいね」
銀髪の女性はニコッと最後に笑みを浮かべると、俺の目の前から姿を消した。
目の前の信じられない光景に驚きを隠せない。
しばらく呆然としてしまう。
俺は周囲を見渡す。確かに女性の言っていた通り、異世界の雰囲気が漂う。前の世界とは空気が異なる気がした。
どうやら俺は死んで転生してブラック企業の労働から解放されたようだ。
そう思うと身体中が熱くなり、嬉しさが込み上げる。
「よっしゃ〜〜。これからあの労働をする必要がないんだ!! この世界で好きに平穏なスローライフを楽しむぞ〜 」
俺は森の中で大きな声で叫んだ。
平凡リーマン、異世界でスローライフしようと思ったら最強に成り上がった件 白金豪 @shirogane4869
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