第2話 クレイジーモード
素敵な力の名は「The Choice」。
未だに姿も見せないオカシな神様によると、人生の岐路に立ったとき選択肢が眼前に浮かび上がるという。そのなかから、これはと思う選択肢を選べばいいそうだ。
ただし、つぎのような縛りもある。
①Choiceが発動すると世界の時間が止まる。
②Choice発動中、選択者は選択以外の行動をとることができない。
③選択者自身の経験、能力を超える選択肢は現れない。
④選択後、選択肢と異なる行動をとることはできない。
⑤選択にあたり制限時間は原則として設定されていない。ただし、長考すると「神の苛立ち」が発動することがある。その場合、最悪の選択肢を強制選択。
Choiceか。どうなんだ?
運命の分かれ道で、落ち着いて「選択」できるのは悪くない。少なくとも不慮の事故なんかは回避できるかも。
今まさに、不慮の事故に遭いそうなんだが、これも回避できるんだろうか?
『いかがです? The Choice。ちょっと体験してみませんか?』
神様が力を貸してくれるというのだから借りない手はない。ただ、気になることがある。
「アンタの目的は何だ? なぜオレを選んだ?」
『じつをいいますと話は長くなりますが、涙なくして語れない深いワケがありまして……。あ、いえ、お時間はとらせません』
時間止まってるしな。
『そもそも、ワタシがこのような活動を始めたきっかけはですね……』
というカンジで話し始めた。
……神様の話て、長ぇのな。
要点を掻い摘んでまとめると、
自分を人間たちに知らしめ、名前を付けてもらい、信仰を得る。小さくてもいいからネコがいてプール(池)のある神殿に祀られるのが夢。
そこで、あわよくばSNSで拡散してくれたらと、たまたま目についたオレを選んだ。
つまり、神様の営業活動。そして、オレを選んだ理由が雑すぎる。
けれど、妙に共感できるところもあったりする。
「ネコがいてプール(池)のある小さな神殿か。なんつーか、庶民的な神様だな」
『会いに行ける神様がコンセプトです』
どこのアイドルグループだ。
「……話はわかった。アンタの計画に乗ってやろう」
『おおっ! そうこなくては。では、まずモード選択しましょう』
モード選択?
するとオレの目の前に三つの「モード」が現れた。それぞれにモード説明もつけられている。
A 叫モード
身も心も凍りつく恐怖のChoiceに思わず絶叫! 人生は谷あり沼あり。奈落の底でも強く生きて。 ¥100。
B 狂モード
イカレたChoiceを集めた神推しスペシャルエディション。退屈な人生にサマーソルトキック! ¥1000。
C 兆モード
夢とロマンが詰まったウハウハChoice。人生なんて楽勝~。
¥10000。
……って、まてや。
ひとつを除いて他が不穏すぎだろ。兆モードと他のモードとの落差はなんなんだ?
つーか、金取るのか。手持ち1000円しかねーよ!
つまり、今のオレが選べるモードは実質二つ。
こんなことなら、やっぱ銀行へ寄って今月のバイト代を下せばよかった。
身体が動かないので銀行へ行くことはできない。
くそ、まさにあそこが人生の岐路だったというワケか。
思えば、ここまで何ということもなかった17年。
そんなオレにも、ささやかな夢がある。
高校卒業したら、それなりの大学へ進学して、まずまずの会社へ就職して、結婚して……。
平穏で安定した生活を送ることができればいいんだ。
だから兆モードでなくてもいい。モード説明もちょっとイラつくし。
けどな。
叫モードとか、人生詰むわっ! 人生谷あり沼ありって、落ちるか沈むかしかねーじゃんか!
狂モード? 1000円て。全財産はたいてイカレたChoiceとか、ふざけんな。神推しスペシャルエディションて何だよ?
けれどここで時間をかけ過ぎると、たぶん強制選択で叫モード。それだけはゴメンだ。
「……ビ、Bの狂モードで」
心で血涙を溢しながら、オレはモード選択した。
『狂モードですね。体験料1000円頂戴いたします』
ジャラララ、チャリーンという効果音。
後ろのポケットに入っている財布が心なしか冷たくなった気がする。
おそらく神様が、オレの財布から千円札を抜き取った音に違いない。
『では、良き人生を』
「ん? あっ、ちょまて。くっそ……」
オレは、自分が直面している危機的状況を思い出した。
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クロスロード~未来のオレ、学年一美少女の彼氏 わら けんたろう @waraken
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