後半
サトカヤがスプライトボックスの電源を入れると、ザーザーザーという音が鳴り響いた。
「僕はサトカヤといいます。誰かここに居ますか? 何らかの形で反応して頂けると助かります」
サトカヤが霊に呼びかけた。すると……
ザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーいるザーザーザーザー
「今『いる』っていいましたよね!?」
「凄いですねこの機械。私も『いる』って聞こえたような気がします。私も声を掛けてもいいですか?」
「どうぞタヌキマンさんも」
「えーと、今返事してくれたあなたは、この隧道の工事関係者ですか!?」
「いや、そんなわけないでしょう。事故とかは無いそうですから」
ザーザーザーザーいるザーザーザーザーザーザーいるザーザーザーいるザーザー
「ちょっと待って! 今、3人から返事がありましたよ! もしかして、工事関係者の方ですか?」
ザーザーザーザーザーザーザーザーないザーザーザーザーザーザー
「今、『ない』と聞こえましたけど、違うのかもしれません」
「それは残念ですね。当時のトンネル工事の状況を聞きたかったね」
「この機械ではそんな会話は出来ませんよ。簡単な質問でなくては。えーと、この中に女性の方はいますか?」
ザーザーザーザーザーザーザーうざザーザーザーザーザーザー
「やばいやばい!今『うざ』って聞こえたよね?」
「歓迎されてないのかな」
「もう少しここに僕たちが居てもいいですか?」
ザーザーザーいやーザーザーザだめザーザーザーされーザーザーザー
「これはマジでやばいかも! 複数の方から拒否られています!」
と、その時! 設置してあったスマホの顔認証機能が、誰も居ないはずのトンネルの中で認識した。
「スマホの顔認証も反応してます! 今ここに霊が集まっているのでしょうか!?」
「工事関係者の方も居ますかね?」
「それはもういいですぅ!」
そして、 スプライトボックスの赤い色のランプが点灯した。
「赤いランプはやばいですね。ここを出た方がいいかもしれません」
「信号機みたいですね」
「うっうーん」
しかし、心霊現象はまだ止まらない……。
突然、サトカヤのライトに異変が……。
「うわ!! え!? 何!? やばいやばいやばい! ライトが消えそう! え!? なんでなんで!?」
「予備の電池ありますよ。単三ですか?」
「いや、それはいいですぅ~! ここはまずいので一回出ましょう!」
しかし、ついにサトカヤのライトは消え、暗闇が二人を襲った。
「うわーー!! これは本当にやばい! 過去イチやばいかも! やばやばやばやば!
」
「100000ルーメンのライトで照らしますね」
「それはやめて~!!」
ブィィィィィーーーーーン!!
「うわー目がぁー! 目がぁー、僕には……明る過ぎた……」
タヌキマンが持つ強力な光源のライトのおかげで、この空間だけは夜とは思えない明るさになった。二人はそのままトンネルの出口に進んだが、サトカヤの表情は冴えなかった。
「えーと、出口までやって来ましたけど、いかがだったでしょうか。まぁ、色々ありましたが、女性の霊は確認出来ませんでした。けど、複数の霊がいるのは分かりました。どうでしたか? タヌキマンさん」
「いやー、100年経っているのにこの隧道は――」
「遮ってすみません。今回の心霊企画のお話を……」
「ああ、そうでしたね。まぁ、私も配信で色んな隧道に入ったりするわけですけど、大体の場所が心霊スポットだったりするわけですね。だから、おかしな事が起こったり、体調が急に悪くなったりする時があるわけですよ」
「それ! そういう話を聞きたいのですよ」
「聞きます? 私もね隧道を見たい欲望は抑えられませんので、そういう時は霊にお願いするんですよ」
「お願い?」
「すいやっせん! 隧道に興味があるだけです! 撮影したらすぐに帰りますので通らせて下さい! ってお願いするんですよ。そうすると自然に収まってくるのです。霊も変なやつが来たと思って諦めているかもしれませんけどね。はっはっはっはー」
山奥の夜中にタヌキマンさんの笑い声が響くが、サトカヤは返す言葉が見つからないのか、落胆してしまったのか沈黙してしまった。
そして、この後は特に何も無く、二人は山を下りて広い駐車場までやって来た。
「今日は私サトカヤとコラボして頂きありがとうございました」
「こちらこそありがとうございます」
「最後にタヌキマンさん。今回はサトカヤとタヌキマンさんの両方の視聴者さんが見ていると思いますけど、何かコメントありますか?」
「そうですね、今回は鉄道の廃隧道でしたけど、廃隧道というのは結構意外な所にあったりするんですね。皆さんも山道を運転する時、割と新しいトンネルを通る時があると思います。トンネルを出入口付近に脇に逸れる旧道みたいな道がある場合があると思うですけど、そこに昭和時代の隧道があったりします。更に周辺を探索すると明治時代のレンガ造りの廃隧道がある場合があるんですよね。歴史のある所なら江戸時代以前からの街道があったりします。そうやって昔は徒歩で山を越えて、明治になれば馬車が通れるように隧道を造って、昭和になると自動車が通れる隧道を造って、平成、令和になると大型トラックが余裕で通れるトンネルを造って、今に至るわけですよ。
そして、現役のトンネルに役目を引き継いだ廃隧道は、ゆっくりと自然に風化されながら長い眠りにつくわけです。私はそういった廃隧道に当時の状況、人々の想いや、まだ重機が無い時代にこれだけの立派な隧道を造ったことに感銘を受けるわけです。そして、その素晴らしさを伝えたくて、配信をやっております。今回も素晴らしい隧道を紹介して頂いて感謝しています。サトカヤさん、ありがとうございました」
「あー、はい、こちらこそありがとうございました。以上、タヌキマンさんでした。
ということで、今回の企画……何でしたっけ? あ、そうそう、女性の声が聞こえるという廃トンネルの検証いかがだったでしょうか? 今回の動画が良かったーっと思われた方はチャンネル登録と高評価をお願いします。また、廃隧道に興味を持たれた方はタヌキマンさんのチャンネル登録、心霊に興味を持った方はサトカヤに登録お願いします。では、また次回の動画で!」
終わり
□□お読み頂いてありがとうございました。少しでも面白いと思って下さったら作品フォローと☆評価をよろしくお願いします。
只今、『廃ダンジョン探索者~廃墟化したダンジョンばっかり探索していたら、いつの間にか最強になっていたことに気づいていない件』を短編で公開しています。
https://kakuyomu.jp/works/16818093087388830807
よろしければこちらもよろしくお願いします。
心霊系配信者が、廃トンネル探索系配信者とコラボしたら怖くなくなる説 古手花チロ犬 @1033688
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