心霊系配信者が、廃トンネル探索系配信者とコラボしたら怖くなくなる説
古手花チロ犬
前半
今夜、サトカヤがやって来たのは、山奥にある100年以上前の廃トンネル。ここは心霊スポットとして有名な場所である。
「皆さんこんばんは。心霊系配信者のサトカヤです。今夜は心霊現象が度々報告されている山奥の某トンネルの前に来ています。このトンネルは過去に女性の焼身自〇があったらしいということで、女性の悲痛な声が聞こえたり、姿も多数目撃されています。そこで今回も霊と会話が出来るスプライトボックスとスマホの顔認証機能を使って検証していきたいと思います。そして、今夜はスペシャルコラボとしまして、廃トンネル探索系配信者のタヌキマンさんにお越しいただいています」
「はい! どうも! 廃隧道探索系配信者のタヌキマンです! 今日はよろしくお願いします!」
サトカヤの前に現れたこの男が、今回のコラボ相手のタヌキマン。彼の身なりは作業着に白いヘルメットを被り、長靴を履いていた。
「えーと、廃隧道?」
「トンネルのことです。1970年代辺りより以前のトンネルは隧道と呼んでまして、今回は100年以上前の隧道ということで、楽しみにしています」
「あー、はい……でも、凄い恰好ですね。まるで保守点検の人みたいです」
「そうですか!? はっはっはー。今回は遠征して来てますので、初めての隧道になりますので、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
「あっ、ちょっといいですかね」
一通り挨拶を終えると、タヌキマンは何かに異変を感じたのか、坑口の方へ歩き出した。そして、ライトを照らして何かを探しているようだ。
「今、タヌキマンさんが坑口周辺をライトを照らして何かを探しています。もしかして、人影のようなものが見えたのでしょうか? ちょっと僕もスマホの顔認証を使ってみましょう」
しばらく2人は調査を続けた。一体そこに何があったというのか?
「タヌキマンさん、何かを探しているみたいですけど、さっき何か見えましたか?」
「あ、いや、銘板を探していたけど、崩れたのかありませんね」
「銘板?」
「この隧道の銘板です。これがあれば隧道名、完成日、全長とか分かるんですよ」
「へぇー、そうなんですか。うっううん、まぁ、ともあれ、トンネルの前までやって来ました。見て下さい、この不気味なトンネルを。とても嫌な空気を感じます」
二人の目の前に現れた100年以上前のトンネルはレンガ造りで、自然の浸食で変色やひび割れが不気味さを際立てる。そして、トンネルの中の暗闇と嫌な空気が、まるで二人を「入って来るな!」と拒んでいるようだ。
「この空気の流れがあるということは、この隧道は貫通していますね。廃隧道は崩落や意図的に塞がれているのが多いので、貫通していると助かりますね」
「あっ、はぁー、いやでも、ライトを照らしても先が見えませんね。流石の僕でもこの中に入るのは怖いです」
「大丈夫ですよ。超高輝度100000ルーメンで照射距離は1000メートル以上のLEDライトがありますので」
「へ?」
そう言い残すとタヌキマンは背負っていた鞄から、それ程大きくないハンディライトを取り出した。すると……。
ブィィィィィーーーーーン!!
「うわ!! めっちゃ明るい!! 明る過ぎる!! それにこの音は一体!?」
「これは冷却ファンの音ですね。熱が凄いので」
静寂をぶち破る冷却ファンの音が響く中、トンネルの中はまるで昼間のような明るさで、隅々まではっきりと照らされていた。
「中は途中で曲がっているようですね。それにしても、この隧道とても状態がいいですよ。水没もしていないし、とても綺麗です」
「あの……確かによく見えますけど、今回は心霊系ということで……ちょっと明る過ぎるかな……せっかく夜に来たわけだし……ね」
「ああ、ごめんなさいね。こっちの通常のライトを使います」
「それも結構明るいですけど、仕方ないですね」
「概要欄にリンク張ります?」
「それはいいです。じゃあ、それでは気を取り直してこの暗闇の中に入って行きますか」
こうして再び静寂と暗闇に戻った廃トンネル、いよいよ二人は中に入ることになった。しかし、サトカヤはすぐに異変を察知した。
「うわっ! これは!? やばいやばいやばい! マジでやばいよこれ!」
「どうしました?」
「タヌキマンさん、上を見て下さい! レンガが黒ずんでいます! これは何かが燃えた後ですか!? ま、まさかここで女性が……」
「ああ、これは昔SLが走っていた時のすすですね。レンガ造りの鉄道の隧道だから、明治か大正辺りに造られて、昭和まで走っていたんでしょう。こんな所にSLが走っていたなんて、なんか凄いですよね」
「あー、そうなんですか……」
結局、手掛かりも何も無く、二人はトンネルの奥へと進んで行った。
そして、カーブに差し掛かった時、突然サトカヤは立ち止まった。
「タヌキマンさん、ここで今回の目的の心霊現象を検証していきたいと思いますので、ちょっとライトを消してもらってもいいですかね? ちょっと明るいので僕のライトでやります」
「いいですよ。今回は心霊企画ですものね」
タヌキマンさんのライトを消すと、サトカヤが持つ薄暗いライトの光のみとなった。
「うわっ暗っ! 暗いと怖いですね。どうですか? タヌキマンさん」
「いやー、こんなに暗いと私も怖いですわ」
「ではここからね、霊と会話が出来るスプライトボックスとスマホの顔認証機能を使って検証していきたいと思います」
―――後半へ続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます