ベランダとお姉さん
@nekomiori
プロローグ
蝉の鳴く声が耳を塞ぎたくなるくらいに響く夏のある日、16歳の少女七瀬あきのがいつも通り学校から帰ってきて家に入ると、
ベランダに見知らぬお姉さんが立っていた。
「きゃああああ!!」
思わず悲鳴をあげながらも本能で鞄からスマホを取り出し警察に通報しようとすると、お姉さんが慌てた様子で近づいてきてこんなことを言ってきた。
「落ち着いて!私はあなたの親戚で、あなたの家族に言われてきただけなの!だから不審者とか泥棒じゃないからお願い通報しないで!」
まぁそんなことを言われても「そうだったんですね分かりました!」なんて納得できる訳もなく、通報ボタンをタップしようとすると今度は、
「本当なの!信じて!証拠だって沢山あるから!」
と若干涙ながらに言われ、信じた訳では無いが証拠があるというのが気になり、
「じゃあ早くその証拠を見せてください!」
と言うとお姉さんは慌てふためきながら何枚かの紙とスマホをその場に出した。
あきのは紙に書かれているものを見て目を見開いて驚いた。
それは紛れもなく自分の母の書いた手紙だったからだ。
間違えるはずがない、何故ならあきのの母の字はでかい上にぐにゃぐにゃしていて特徴しかなく、ましてや内容に自分と家族以外は知るはずもない思い出が書いてあったのだ。
これを外部の人間が、それこそ家族と仲の良い親戚でなければ手に入れることは出来ないだろう。
この手紙を見た時点でもう信じるしかないのだが、
やっぱり納得がいかずスマホの中身を見ることにした。
だが、開いたメールの中も自分の知る親戚の話やあきのの姉とのやり取りがあったりと、もう信じるしかなかった。
「信じてくれてほんとによかったぁー!通報されてたら今頃どうなってたか」
あれから通報しようとしたこと、なかなか信じられなかったことを謝り取り敢えず飲み物でも飲みませんかと聞いてお茶を出すと、 お姉さんは1口こくんと飲んでほっと息をついてそんなふうに話した。
「でも何の説明もよこさずに家にいたらそりゃあ、誰でも驚きますって」
そうあきのが言うと、長く太い後ろでひとつにされた三つ編みを揺らしながら
「うーんまぁそうだよねぇ、ごめんね来る前に連絡のひとつでもあきのちゃんのお母さんに入れてもらえばよかったねぇ」
そうなのだ。お姉さんからは勿論、家族の誰一人からも来るという話を聞いていなかったのだ。
家族とは日頃から頻繁に連絡をとっているというのに、だ。
「はぁ〜」
どうして何も言ってくれなかったのかと少々呆れていると、
「あ!私が来ること自体聞いてないってことは、私が今日からここにあきのちゃんと一緒に住むってことも聞いてない?」
「え?」
ベランダとお姉さん @nekomiori
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