12 なんの話ですか

実は今、私は彼女に軟禁されている。きっかけはなんやかんやあって、初めての町の市場で自由を満喫していた時のことだ。目に映るものすべてが新鮮で刺激的で浮かれていたのもあるが、私は全てにおいて無知だった。


だから不意に突然、視界がなくなった。頭から麻の袋をかぶらされたのだ。連れの親もない貧相な子供が一人でいれば当然の結果だ。人さらいにあった私は荷馬車へ放り込まれた。


当時の私は言葉が理解できておらず状況がよくわかっていなかった。何もできないまま馬車に揺られ、しばらく経つと眠ってしまっていたのだ。


そして声をかけられ目覚めると、夕刻の町外れの小高い森にある、朽ちた小屋近くの外の檻の中だった。


「……おい、起きろ!」


黒頭巾マントの格好をした人物が、布を巻いた長物で、私を小突いていた。


「……お前、ここで何やってんだ?」


「おい! てめぇ誰だ?!」


不意に背後に男二人が現れた。その声に反応し、そっと振り返るマントの人物。黒頭巾の中のその瞳が、ほんのり赤紫色に輝いている。


「おい……こいつ魔宝少女じゃねぇか?!」


「ああ、俺たちとやろーってのかい? お嬢ちゃん!」


「はぁぁ?? ちげぇーし。きんもー、近寄らないでよ変態サル!」


「おい……こいつ何か勘違いしてねーか? 一触即発って意味だぞ?」


「ああ、たぶん、アホの娘だな。しかもこいつは絶賛欲情中、ってやつだぜ」


「はぁ? これ見てそんなこと言えんの!」


お姉さんは勢いよく豪快に黒頭巾マントを取っ払うと、片足を近くの小岩に乗っけた。そして黒ワンピのスカートの裾をたくし上げて、脚線美をこれでもかと露出させた。


「どぉ? すんごいでしょ。ほらほら、胸だってあるんだからね! でもぉ、おサルさんたちには触らせてあげないよーん」


お姉さんはドヤ顔だが、裾を上げ過ぎておパンツがチラ見えしています。ついでに太もも付近にあるガーターベルトの仕込み銃も、露出しています。


「ゴクリ……お、おぉ、確かにこいつはすんげーな」


「お、おぉ、よくよく見れば……って、おい! これなんの話だ?!」


「ヤベーな、こいつに関わってると俺らまでアホになっちまう」


「あぶねー、あやうく俺のアニバーがサリーしちゃうところだったぜ」


「気合を入れろ! 仕切り直して本題に戻るぞ!!」


「おお! 俺たちを始末しに来たのか!」


「苺のパンツの魔宝少女ちゃんよぉ!!」


「私のパンツはストロベリーじゃねぇえー! ラズベリーだぁあー!!」


パンッ! パンッ!


チン! チン!


「う……うぅ……」


お姉さんは仕込み銃であっさり男二人を倒した。ちなみに弾はゴム弾なので殺してはいない。その銃弾が至近距離から、おサルさんたちの無防備な股間にクリティカルヒットし、悶絶しているのだ。


お姉さん曰く、『これでおサルさんたちの弱点もまるわかり、お色気モッコリ作戦!』らしい。そして残念なお知らせが。彼らのそれが立ち上がることは、もう二度となかった……。ありがとうアニバー。さようならサリー。


こうして奴隷商人たちから解放された私は、黒ワンピのお姉さんことラズベリーに連れさられて軟禁──じゃなかった、今のお屋敷に保護された。


【12 なんの話ですか】────




────【13 まだ続けますか】(予告)


月夜の光で満たされるその部屋に入ると、やわらかい炎の明かりのもと、物書きをしている人物がいた。

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