02 はじまるよ
夕暮れのこと。とある街へ続く道を青年が荷馬車を進めていると、小岩の上で少女が脚をさすっていた。
「大丈夫ですか?!」
「はい。脚を少々くじいてしまいまして……」
「自分は医者見習いの者です。よろしければ拝見させてください」
小岩に腰掛けていた少女が、スルスルと黒地のコルセットスカートの裾をたくし上げると、脚線美が露出した。
「……軽傷のようですね。どうぞ、これをお使いください」
青年はカバンから青い小瓶を取り出し、蓋を開けて少女に差し出した。
「……これは?」
「万能薬、妖精の粉です。傷口に軽く塗ると痛みが和らいで、治りも早くなりますよ」
少女は中の黄色いその粉を手に取り、半信半疑ながらも傷口に塗布した。
「まあ、本当です。痛みが嘘のように消えました」
「それはよか──」
青年が顔を上げると、前屈みになっていた少女の胸部が目の前にあった。二つの美しいたわみが視界に入ったのだ。
「おぉっつ!! こ、これはっ、失礼しました!」
顔を赤く染めた少女が、慌てて胸を抑える。
「わ、わたくしとしたことが、お見苦しいものをお見せしてしまって……」
「とんでもない! 素晴らしいものを拝見させてい──ではなくて! すいません、わざとではないんです!」
「いいえ。殿方が婦人の胸部に視線を向けてしまうのは、美しい花を愛でることと同様だと承知していますので、どうぞお気になさらないでください」
「あの、失礼とは存じますが、そのお言葉使い、どちらかのご令嬢さまですか?」
「……はい。街で催し物があると聞き及びまして。実はお忍びなんです……」
「そういえば4年ぶりの開催でしたっけ? はじまるようですね。ちょうど街に向かっているところなので、自分の荷馬車に乗りませんか? よろしければご案内させてください」
「ありがとう存じます。お言葉に甘えさせてください」
【02 はじまるよ】────
────【11 どんな話ですか】(予告)
ここはお屋敷の図書室。そこに薔薇のような真紅の瞳、ツーサイドアップの銀髪、そして手元にクマのぬいぐるみを添える、黒い制服姿の幼い少女……そう、お察しの通り、ゴリゴリのロリっ娘である。
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