第36話 私が話します

ゴーストとサンティティらが話していた場所から少し離れたところでは、第六区コミュニティのメンバーたちが集まって議論していた。


彼らの言い分が二組に分かれて対立していた。


今まではウールをリーダー、マニーシャを副リーダーとして立ててきた第六区だが、暗殺組織のメンバーという予期せぬ情報が入ったせいで、その意思が揺らいでいた。


A級の犯罪者をリーダーに据える…果たして今後もそれでいいのか、と主張する組と、そんな事は気にせずに今まで通りウールたちをリーダーとして立てよう、と主張する組である。


「俺たちは確かにならず者が多いコミュニティだが、犯罪者集団になった覚えはねえ。確かにヤバイ連中だとは思っていたが、暗殺組織に加わった覚えはねえぞ。」


ある者が主張すると、


「この状況で組織がどうとか関係あるか!あの人たちがいたから今まで生き延びてきた連中だって沢山いただろう?今回のディアボロの件だって、もしあんなのがまた出てきたら、あの人たちに頼らないでどう生き延びるっていうんだ。」


またある者がこのような事を言う。


「い、いや、オレァ、正直あの人たちが怖くてよ…ほら、一晩で何人もの首を落としただろう。聖女様が襲われてたのを助けたらしいが、要はあの人たちが気に食わなかったら、俺たちもすぐに殺されるってことだよ。今は動けねえから…な、分かるだろ?」


こんな意見も出ると、


「てめえ、あの神父を見なかったのかよ。あのまま副リーダーが介入しなかったら、殴り殺されてたぜ。聖女様もな。自分を襲ってきたらから殺したんだろ。自業自得だろ。」


こんな調子で言い返す。


「いや、待てよ!今までは良かったかもしれねえけど、暗殺組織の事がバレた今だったら、あいつら何するか分からないぞ。俺たちみんな殺されちまうかも…」


「バカ言ってんじゃねえ。この状況、明らかにもう暗殺組織なんて機能してないだろう。今はみんな協力して生き延びてるってのに、なんで素性がバレただけで殺すことになるんだよ。頭使え!」


「あぁ?バカにすんじゃねえよ!」


議論はヒートアップしていくと、大人数で一瞬即発という事態に発展し始めていた。



「ちょ、ちょっと、何が起こってるの?」


ゴーストと話をしてから戻ってきたグレースが周囲の人から事情を聞く。


「やんのかてめえ!? 」


「この分からず屋が!」


「どっちがだよ!」


「ちょっと待ったぁぁぁ!!」


見兼ねてグレースが立ち入る。


ブラストライト家は、ミカヅチらの尊い犠牲とノアやグレースやウィンストンの活躍により、第六区のコミュニティ内では最大限の信頼と尊重を得ていたため、グレースの一言はまさに鶴の一声であった、


争いは一瞬で鎮まり、みんながグレースに注目する。


(え?思ったより効果あったんだけど。)


グレースは苦笑いをする。


「え、ええ〜っと、要するに、このまま暗殺組織の人たちをリーダーとして迎え、これまで通りにするのか、それとも…どうしたいの?」


「檻の中に入れておく。」


「バカ、逃げられたら殺されるぞ。動けない今やっちまう方がいいんだよ。」


そんな声が聞こえてくる。


「ええっと、拘束するか、殺害するか、という事ですか?殺害、というよりも死刑ですか?仮にも法の世界で生きてきた者として言わせていただくと、今この場であの人たちを死刑にするなどは、もっての外です。既に司法が機能していないとはいえ、我々は蛮族ではない、人間でしょう?先ずは彼らとも話し合いましょう。処遇に関しては、それから決定しても良いのでは?」


「話し合いって…そんな簡単に行く連中でしょうか?」


「死刑を逃れるために、いくらでも嘘をつくでしょ。」


口々に意見が飛び交う。


「私は、他人の嘘に敏感です。私が特別な能力を有していることは、すでに皆さんも聞き及んでいると思います。私に話させてください。よろしいですか?」


皆グレースの言うことに従う意思を見せている。


「それに、罪を償わせるにしても、先ずは証拠も必要です。それらの証拠も集めていきましょう。」


「あ、そ、それなら、心当たりあるぜ。この先に、あいつらがアジトがどうとか言っていた建物があるって聞いたことあるんだ。あいつらが怖くて誰も近づいたことねえけど、多分そこに色々あるんじゃねえのか。」


「…分かりました、では、役に立ちそうな物を全部集めてきてください。私は、暗殺組織の方々と話をします。」


上手く場を納めたグレースを見て、サンティティは感情に任せてウールたちを襲わないで良かったと思った。


グレースが、そんなことを喜ぶわけがない…



第37話「真実はピリリと辛い」へ続く。

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