第11話 カリスマに喋ってもらわないとね
ブゥゥゥン、ブルルルルル…
ミズナのアナウンスがあってから、間も無くバイクの音がする。
はて?オムニジェネシスの交通機能は完全に麻痺しているはず…
しかも、バイクなんて、最初に壊れしまいそうなものなのに…
コミュニティの人間たちは通り過ぎていく一台のバイクを不思議そうに眺めていた。
そのバイクはコズモたちが陣を張っている場所まで一直線に向かう。
コズモの護衛たちが道を塞ぐ。
「止まれ!!何者だ!止まれ!」
バイクは右に傾くと、ドリフトをし始めて護衛たちを迂回した。
そして、そのままのスピードでコズモのほぼ目の前まで来て急停止をする。
コズモは思わず身構えた。
乗っていた人間は、バイクから降りるなり喋り始める。
「ちょっと〜〜、別に怪しい者ってわけじゃないんだからさ〜。急いでいるからここに来たっていうのに〜。」
ヘルメットを外すと、紫色のボブヘアーをした小柄な女性が顔が出てくる。
「こ、この声は!?」
間違えるはずもない。
人間のミズナとは会ったことがないが、AIのミズナとはもう100年以上も付き合っていて、同じ声をしているのだ。
「あ、もう説明要らないわよね。そうそう、私がミズナっち。とにかく天才なかなかプリティ、よろしくね!」
サバサバと自己紹介っぽい紹介を受ける。
そ、そういえば、AIのミズナも空気を読まないというか、破天荒というか、そんなところがある。明らかに、この女性がAIミズナの産みの親だ。
「キモ、自分で天才とか言っちゃって…」
スタンプがつい正直な感想をボソリと言う。
ミズナ《水菜》がスタンプを一瞥すると、スタンプはやべって言うような感じで目を逸らす。
「まあまあ、いいわ。スタンプちゃんね〜。キモいはストーカーには言われたかないけど、まあまあ、そんな事はどうでもナッシングなので、とにかく本題に入るわ。」
スタンプはギョッとした。
なんで私のこと知ってるのよ!?
コズモ及び周辺の人間にとっては何が起きているのか全く思考が追いついていない。ここで護衛が追いついてくる。
「こいつ、コズモ船長に何の用だ。」
護衛がミズナの腕を強く掴む。
「あ、何するのよ!強引なのは嫌いじゃないけど、これはダメだわ!」
とにかくあらゆることの急展開にコズモは言葉を失っていたが、ようやくここで、
「離しなさい、彼女は、私に会いに来たようだ。害のある人じゃない……多分。」
護衛が手を離すと、ミズナはキッと男を睨みつける。
⭐︎⭐︎⭐︎
「要するに、貴方について行き、私に船内放送をしろ、ということですな。」
「そう!もう船内はパニック状態よ!簡単なドローンを作って、外の様子を見てみたんだけど、変な生物はいるわ下敷きになっている人はいるわで大変!だからね、一早く音声を復旧させたの!みんなも、コズモ船長の声を聞いたら、それが一番安心するわ!っていうか、船長、本物もめっちゃ良い男じゃない!」
ステラが怪訝な顔をする。
「え、ドローンって何?かっこいいんだけど。」
スタンプが珍しく口を挟んでくる。
普段は聞いているだけで何も言わないのに。
グラシリアは意外に思った。
「ふふん、そこに反応しちゃいますか。本体を修理するのは簡単だったわ。バッテリーの修復には時間がかかっちゃったけどね。ちなみにこのベースもドローンで見つけたのよ。」
へえぇ〜っとスタンプが感心したような声を上げた。
グラシリアはそんなスタンプを物珍しそうに見ていた。
オタク活動にしか興味がないのかなと思っていたら、こういうのは好きらしい。
いや、ドローンもオタクっぽいのか?
「さてさて、約束の二時間後も、後一時間ってところね。じゃあ、乗せてあげるから、コズモ船長、乗って私に掴まってください。」
「え、ちょ、ちょっと待ってください!」
ステラが止めに入る。
「なんですか?ステラ副船長?私は船長1人いれば十分に効果があると思いますけど…」
「そうではなくて、なんで急に出てきた貴方を信用することができるというのですか。」
「信用って…別に、この状況で私がコズモ船長を連れて行くことに問題ありますか?誘拐犯だったとしても、身代金請求する行為とか意味ないですよ。」
「…で、でも、危険かもしれません。」
「私の部屋に行くまでのルートは大丈夫です。道は平坦だし、安全ですよ。このバイクは随分と旧式に見えますけど、ご覧になった通り、ちゃんと走ります。大体、自動操縦機能とかバランス装置とか、元々私にはいらないほど運転テクニックもあります。」
「あ、あなたの言葉を全部鵜呑みにするのも……」
「何をそこまで…あ!なんですか!?私がコズモ船長を襲うと思っているんですか!?大丈夫ですよ、そこまで分別ないやつじゃありません。」
スタンプがゲラゲラと笑いだす。
ステラは顔がカーッと熱くなるのを感じたが、あくまでも冷静を装う。
「と、とにかく、もう1人ぐらい、護衛でつけさせてください。」
「う〜ん、そうは言っても、このバイク3人乗るとそれこそ危ないよ。」
「……俺が行こう。」
名乗りを上げたのは、黒豹ことジミー・ワンであった。
「俺ならば、このウルトラカーボングレーム仕様の自転車でバイクに追いつけるぜ。」
どこから持ってきたのか、片手に軽そうな自転車を抱えている。
コミュニティ内でもよく黒豹が自転車に乗っているのは見かけたものだ。
「んなバカな…まあ、いいか。それでいいなら、もういいですか?」
ステラは渋々応じた。
「黒豹さん、しっかりと追いつくのよ。」
ステラが念を押す。
「さあさあ、時間がないので、もういきますよ〜!」
ブルルルルっという音と共に一台のバイクと一台の自転車が去っていった。
第12話「ミジーとキュリーとモリーマなんです!」へと続く。
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