第10話 皆んなで聴いてくださいね
不時着が成功してから、あれよあれよという間に二週間ほどが経った。
ある者は武器を手にし他惑星の生物たちと戦い、ある者は怯えて逃げ回り、ある者は独自のコミュニティを形成し、またある者は無事家に辿り着くことができていた。
グラシリアはスタンプとドクター・ムニエル、そして護衛数人を引き連れて、サインを頼りにリトル・チーキーのクルーたちのいる最大級のべースへと脚を運んだ。
グラシリアたちも第一区で独自にコミュニティを形成していたが、コズモのいるコミュニティがここまで大きくなっていることに驚いた。人口は増え続けて、今や30万人は超えているのではないかと思われるほどの人口であった。
コズモはグラシリアたちを大いに歓迎した。
区の代表者と再会できたのは今回が初めてだという。
防衛のための準備にここ二週間奔走していたため、まだ遠くにまで使いを出したりはしていなかったという。
そんなこともあり、ブライアンたちが遭遇した生物たちの話や、ドクター・ムニエルの見解はとても貴重なものとなった。
もっとも、ドクター・ムニエルの変人っぷりにグラシリアはドッと疲れてしまっていたので、彼がこのコミュニティに残ると言った時は心底ほっとした。
「あ、そうですか。あのキュウリみたいなやつ、こっちでも出たのですわね。あのマリモみたいなぴょんぴょん飛ぶやつも…」
グラシリアの報告と共に、互いに情報を交換する。
「ドクター・ムニエル、一体あれらの生物は、何なのでしょうか。ゾアンも襲ってきませんし…」
コズモが意見を求める。
「うむ、あの生物たち、先ずは名前でも決めましょうか。キュウリみたいとか、サボテンみたいとか、だと喋りづらくてしょうがない。」
「は、はあ…確かにそうですね。では、何と名づけましょうか。」
「私は既に考えておりました!あのキュウリみたいなやつは、{キュリー}と名付けましょう。」
「キュ、キュリーですか?そんな安直でいいのですか?」
「分かりやすいでしょう。そもそも、科学名なんてもはや通用しない世界にいるのです。分類的にはもう少し工夫しますが、名称はわかりやすいようにしておきましょう。」
ムニエルは生き物に愛着が湧いてしまい、本当は可愛らしい名称で呼びたかっただけである。
「それで、あの巨大ミジンコ、あいつは、{ミジー}ですよ!」
「は、はあ…私は異論はないですが、他の方々は。」
「ハハハハハ、ドクター、やっぱ面白いっすね。」
スタンプがツボっているようだ。
なぜかは分からないがスタンプはドクター・ムニエルの変人っぷりがお気に入りらしい。
「じゃ、じゃあ、あの、マリモみたいな生物は…」
「そうですね…流石にマリーだと世にいるマリーさん達と混合します…なので、{モリーマ}!これでいきましょう。」
「キャハハハ!じゃあこれから、ミジーとキュリーとモリーマ出現しました、とか言うんですか。センスヤバッ、ドクター最高!」
スタンプが笑い転げている。何がそんなに面白いのか…
そのモリーマに人が殺されたっていうのに。
ああ、ダメ、ダメ、この子に一般的な倫理観を求めてはいけないわ…
グラシリアは白い目でスタンプを見る。
⭐︎⭐︎⭐︎
そんな話の最中、唐突に大きな声がコミュニティ中に響いた。
『あ、あ、あ〜、聞こえますか〜?って、そっちから何を言っても私には何も聞こえないってよ!』
皆がギョッとして周囲をキョロキョロするが、声の主はみんなが聞いたことのある声である。
『ええ、っと。もうご存知の通り、ミズナ《水菜》です。AIの方じゃないよ。とりあえずは、音声システムだけ一部修復出来ました。旧式構造のスピーカーが使われてる場所、外層圏なら聞こえていると思います。』
コミュニティの全員はアナウンスに聞き入る。ここ2週間で初めて聴く機械音声である。
『なぜ外層にスピーカーがあるのかって?詳しい話には突っ込まないでくださいね。バッテリーの無駄です。一応あるんですよ、AI達にも耳があるからね…って、言っちゃった。まあいいか。』
なんだ、なんだ、この一方的なアナウンスは?という様子で皆んなが混乱する。
『え〜、外層圏に避難している方々もおられると思いますので、このアナウンスが聞こえている方々は、内層にいる方々を集めて、外層に連れてきておいてください。』
ここで一旦咳払いが入ると、さらに大きな声で喋り始める。
『バッテリー節約のため、一旦音声を切らせてもらいます。二時間後にまたアナウンスをかけます。繰り返します。二時間後に再びアナウンスを入れます。もし知り合いが内層にいる場合、外層に連れてきておいてください。以上です。』
ここで一旦アナウンスメントが途切れる。
「……一応、内層に使いを出して、人がいたら連れてくるか?」
コズモにとってミズナの意図は不明だが、皆んなに聞いて欲しいようだから出来るだけ人を集める提案をする。
「…そう、ですね。とにかく一部でも復旧できたのは喜ばしい事ですが…一体どこからアナウンスしているのでしょう。」
こちらからコンタクトが取れない以上、難しいところだが…
なんらかの理由で正体を隠したいならそれで構わないが、音声は使わせて欲しい…コズモは願っていた。
第11話 「カリスマに喋ってもらわないとね」へと続く
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