第5話 獣狩り

エリア36は、第六区で最後尾にあたり、それはつまりオムニ・ジェネシス最後尾でもある。


第七区からギリギリ避難が間に合った暗殺組織、黒血ブラックブラッドのNo.3でもあるマニーシャは1人、第六区内の武器庫を目指して歩いていた。


(武器庫に濃霧対策用ゴーグルはあったかしらね。)


このエリアは一足先にハルモニアの大気と混じり合ったので、すでに霧がかっていた。


武器庫のある建物の手前ではちょっとした水たまりができていた。


−普通の水たまりではない。。。。


マニーシャの嗅覚はすでに異常をとらえていた。マニーシャの足が止まる。


(この匂い……かなりの血の量ね。)


血の匂いを辿ると、すぐに正体が分かった。


(何かと思えば、でっかい芋虫が人間を食っているじゃないか。)


見た目は針のついていないサボテンのような、キュウリのような生物。

大聖堂に現れた化け物と同種と見られる。


口のようなものはなく、全身で血を吸っているようにも見えた。


(クソ虫けらが!)


マニーシャは突如に頭に血が登っていくのを感じると、大きく舌打ちをして銃を取り出し、弾丸をその生物にお見舞いする。


「シャアアアアア!!」


どこから出ているのかわからないような雄叫びをあげると、ビクビクとし始め

て、地面を転がる。マニーシャは追加で何発か見舞う。

その表情は蚊を叩き潰すかのごとく無感情だった。


「シャアア!シャアア!」


奇声を発し続けて、いずれは息絶えた。


まもなく、そこいら中で悲鳴が聞こえてくる。


(本当に、面倒くさいわね!)


目の座ったマニーシャは武器庫へと急いだ。


⭐︎⭐︎⭐︎


同じころ、マニーシャと同じように暗殺組織、黒血ブラックブラッドのメンバーでNo.2のウールは一足先に武器庫に来て、すでに外へと出ていた。


この奇妙な生物の存在にも気付いていて、濃霧対策用獣人ゴーグルをつけながら、フル装備で片っ端からこれらを駆逐していた。


(こいつら、霧に乗じて襲ってくるからやられいる連中もいるが、実際のスピードは大したことない。しかし、直接触れたらなかなか離れない、蛭のようなものか。)


そして、外部へとつながる扉を発見する。ウールの後ろには、ウールに命を助けられた2人がくっついて来ていた。戦闘力の高いウールの近くにいれば助けてくれるとでも思っていたのだろう。


「…おい、お前たち。その扉を開けろ。」


ウールは銃を構えながら後ろについて来ていた男に命令する。


「え…あ、あ!」


ウールは目を細める。


「いいか、俺はお前たちを助ける気など毛頭ない。必要あらば、いつでも殺す。分かったな。」


「あ、は、はい!」


そういうと、男は震えながら扉へ出向き、ハンドルを回して扉を開く。


開けた先は、見たこともないような植物が生い茂る森だった。


ウールがゆっくりと扉に近づいていくと、これまたゆっくりと大きな生物が扉から入ってきた。


(な、キュウリの次はでかいミジンコか!?)


ウールがでかいミジンコと称した生物は、半透明で脚が複数。

身体の何か所かにレンズのようなものがついていて、その目は発光していた。


(あの形状、恐らく目だな。そしてイエローライト・・・霧の中でもよく見

える目、というわけか。)


ウールはマシンガンを取り出し、その生物に容赦なく弾丸の雨を浴びせた。


ところが、この透明の生物の外皮によって弾かれてしまう。

一部はの弾が、おそらく関節部に当たったようで、「カチカチカチ」、と音を立てながらこの巨大なミジンコのような生物は扉の外へと逃げて行った。


「おい!今だ!扉を閉めろ!」


しかし、2人ともガタガタと震えていて、腰が抜けてしまっているようだ。


「ッチ!」


ウールは不快感を隠さず、銃を片手に自分で扉を閉めた。


(通常の銃が効かない連中がいるのは厄介だ。貫通弾はそもそも弾数がそれほどないし、レーザー銃の類はエネルギー使用の関係で限りがあるからな。いや、精密機械が壊れた今だと、もうレーザー銃の類は使えないだろう。となると、一番このタイプの相手との戦闘で効率が良いのが高周波刀、ということか?)


比較的エネルギーの消費が少なくても済む高周波刀ならば、何時間でも戦い続け

ることができる。ウールはとりあえず侵入してきたサボテンのような見た目の生

物を今度は高周波刀で倒していった。


そんな折、フル装備で表に出てきたマニーシャがウールの姿を捉える。


「さすが、手際よく処理しているのね。」


マニーシャがウールに声をかける。


「マニーシャか、お前も武器庫に行ったのか。」


「そうね…で、こいつらは何なんだい。」


ウールは顎に手を当てる。


「おそらく不時着した場所の近くにこいつらの群れがあったのだろう。あとついさっき、外につながる扉を開いたらこいつらとは別の生物もここに入りかけていたぞ。大きなミジンコのような生物だ。弾丸を弾くほどの外皮をもっている。やるには関節を狙え。そいつは目のような器官が確認できたが、このサボテンのような連中にはないな。観察していると、パニックになっておどおどしている人間を襲っているようだ。恐らく、目はないが、なにかしらの感覚器官で弱そうな人間を襲っているのであろう。」


「なるほどね、私のところにはこのキュウリもどきはなかなかやって来ないなと思っていたけど、そういうことか。」


まもなく、これまたフル装備でNo.5のバシリスクが合流する。近辺のキュウリもどきは全滅させた後だ。


「おやおや、お二人さん、流石ですね。仕事がお早い。」


バシリスクは相変わらずのマイペースな様子だ。


「さて、どうしますかね。こんな状態だと、組織も機能していないでしょう

し。」


「この3人は一緒に行動するべきだろう。生存確率を上げたいならな。」


「私もウールの旦那には賛成よ。」


三人がこんな話をしていると、近くに何人かが集まってきた。


「あ、あの〜。我々も、貴方たちと一緒にいてもいいですか?あ、いや決してお邪魔するようなことはしません!食料も調達してきます!」


マニーシャが眉を顰める。


「旦那、いつの間にこんなに人気者になったんだい。」


「…俺たちについていれば、死なないとでも思っているんだろう。」


ウールは今度は集まった人々に呼びかける。


「いいか、俺たちの邪魔をするようならば、容赦なく殺す。それでもいいならばついてこい。シェルター、食料調達、近辺調査、やることは山積みだ。


「はい!!」

「はい!」

「はい!!」


各々が声を上げる。


「本当、面倒臭いわねえ…」


マニーシャはさも面倒そうに小声で呟き、武器を刀を鞘に収めた。




第6話「運命はどちらへ」へと続く。


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