第3話 それでも明日はやってくる
コズモら、リトル・チーキーのクルーたちが地下へと向かうころ、同じ建物から外へ出る三つの人影があった。
グレース、サンティティ、ダニーの三人である。三人とも、白衣を身に纏っている。
「じ、実験室の更衣室のロッカーから勝手に持って来ちゃったけど、い、いいのかな。」
そんな言葉を発したサンティティにダニーとグレースが白い目を向ける。
「あ、あのな〜。こんな状況で、よくそんな事を気にすることができるな。時々俺は、お前が恐ろしくバカなのか、天才すぎて大物なのかよくわからなくなるぜ。」
ダニーは呆れたような口調で言った。
「ま、まあ…浮世離れしている、貴方らしいわ。でもね…」
グレースはサンティティの目の前までくると両手でほっぺをつねる。
「これから皆んなで生きるか死ぬかっていう時に、しょうもないことばかり考えていちゃダメよ〜。」
「い、痛い、痛い、分かったよ。」
グレースはそういうと手を離したが、思わず笑いが込み上げてきて笑い始めてしまった。
ダニーはそれを見て、やれやれといったように頭を抱え、サンティティは何が起きているのか分からなかったが、とにかくグレースが笑っているので安心した。
「ねえ、ダニーさん。」
「なんだ?」
「正直、ダニーさんがいてくれることはすごく心強いんだけど、わざわざ危険を冒してまで私たちに付いてこなくても大丈夫ですよ。いっそ、リトル・チーキーの人々と合流した方が…」
「なんだ、俺が邪魔か?」
グレースは全力で首を振る。
「ち、違います!正直この人だけだと心細いのは本当です!でも、なんか私が両親に会いに行きたいっていう我儘に付き合わせているようで…」
これを聞いた瞬間、サンティティはしょぼんとする。
−僕はそんなに頼りなく見えますか〜〜!
ここでダニーは手をかざしてグレースの言葉を遮ると、少しニヤリとした笑みを浮かべる。
「おいおい、お前たちがスクープをくれるって話、あれは嘘だったのか?言っておくが、お前たちにくっついていた方が面白いネタが入って来そうだと思ったから、ついていくだけだ。」
それを聞いて、グレースの表情はパッと明るくなり、振り向いてその表情を見たサンティティからも笑みが溢れた。
その時、突然後ろから声がかかる。
「…お嬢様。」
振り向くと、そこにはブラストライト家に仕え、グレースの運転手だったヴァレリーがいた。
「あ!ヴァレリー!」
グレースが大きな声を上げると、ヴァレリーは突然膝から落ちる。
「…よ、よかった。お嬢様にもしものことがあったら、旦那様にどう弁明ができたでしょうか……」
「もう〜、大袈裟よ!この通り、ピンピンしてるわ!」
これにはサンティティもダニーも苦笑いした。
ついさっきまで、病気で死にかけていたくせに!
「じゃあ、一緒に行きましょう!」
グレースはヴァレリーの手をとり彼を起こす。
「あ、あの〜。」
またしても声をかけてくる人がいる。
「私も、気になっていル人がいマス。途中まで、ご一緒しても大丈夫でスカ?」
今度はマリアンヌがいた。
「マリアンヌさん!!いいの?リトル・チーキーの人たちは別のところへいったみたいよ!?」
「えっト、オムニ・ジェネシスの奥の方で恋人がいまシテ…」
それを聞いて、グレースはまたパッと顔が明るくなり、みんな、各々に顔を合わせ、頷きあった。
「もちろん!マリアンヌさんもついて来てくれるなら、もう百人力ですよ!!」
「それでハ、よろしくお願いいたしマス。」
こうして、グレース、ダニー、サンティティ、ヴァレリー、マリアンヌの一向は、とりあえずグレースの実家、ブラストライト家のある*第五区を目指す事になった。
*オムニジェネシスは第七区まであるが、今は第七区が切り離されてしまい、第六区までしかない。
落下物の被害を受けないために、地下道を通る一向。
グレースは軽快な歩みで先頭を歩く。
「な、なんか、生きるか死ぬか、とか言っていた割に、やけに楽しそうじゃない。」
サンティティは、やり返してやるつもりでグレースにツッコミを入れる。
グレースは、くるりと振り返る。
「だってさ!」
少しだけ沈黙すると、グレースは一人一人の顔を見る。
「このメンバーだったら、なんとかなっちゃう気がするんだもん!これから色々あるだろうけど、クヨクヨしたって始まらない。それでも明日は来るんだから!」
「そうだ!!良いこと言った!」
ダニーが激しく同意する。
「ですネ!希望をもっテ!」
「お嬢様、さすがです!」
マリアンヌとヴァレリーも感心した様子だ。
「よ、よ〜し!僕も燃えてきたぞ〜。みんな、夕日に向かって、じゃなくて、第二区までダッシュだ!!」
皆が一瞬で硬まる。
「それは、貴方だけで行って…」
グレースが小声でサンティティに伝える。
第4話「招かざる客」へと続く
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