三十と一夜は明けて
白川津 中々
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昔、合同企画に参加していた。
企画名は……まぁいい。内容としては参加者が特定のテーマに沿って執筆し、0時丁度、一斉に送信するというもの。賛否あったものの、予約投稿によって同一テーマの作品が大量表示されるのは圧巻で面白かった。
この企画に参加した経緯はたまたまメンバー募集の投稿が目に留まったからである。コメントに"参加します"と書いて執筆を開始。確か黒人と子供の話だったような気がするがあまり覚えていない。ただ、あの時の胸の高鳴りはいまでも克明に胸に刻まれている。書いて予約投稿して、見直して修正してまた予約投稿して、誤ってそのまま公開して、修正して見直しての繰り返し。誰かに読まれる。評価される。そんな気持ちが心臓を急かして、何度も何度も作り直した。それで実際読んでもらって、作品にコメントを残してもらった時の感動は筆舌に尽くしがたかった。書いたものに言葉をもらえるのは幸せだ。
最近、その企画を主催した方のページを見たら活動が止まっていた。最後の作品も、先述の企画として書かれたものだった。
あの人は今なにをしているのだろう。作家としてお金を貰えるようになったのだろうか。それとも筆を折ってしまったのか。もはや、知る術はない。
俺は未だにアマチュアで書き続けている。しかし、あの時、はじめて企画に参加した時のような高鳴りは感じられない。ただ、コメントをもらった時は同じく幸せだ。
……幸せだが、不安は消えない。いつか読んでもらえなくなるのではないかと、記憶から俺の作品が消えてしまうのではないかと悲観が飛躍し、苦しくなる。アマチュアの書いたものは脆い。
俺はいつまで小説を書き続けられるのだろう。下手なまま終わるか、次に進めるか、ページの先は分からない。分からないが今日も書く。何故だろう。何故かな。分からない、分からない。
三十と一夜は明けて 白川津 中々 @taka1212384
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