第5話 おっさん、日本語が通じない
「おい、大丈夫か!」
俺が馬車の中を見ると。
「ひいいいい!!!お助けを」
おっさんがうずくまっていた。
「なんだよ。姫様じゃないのかよ。おいあんた、盗賊は俺が倒してやったぞ」
「ひいいいい!!!命だけはお助けを」
「だから俺は盗賊じゃないって」
「ひいいいい!!!何をおっしゃっているのかわかりませんが、お金はお渡ししますので、どうか!!!」
おっさんは土下座して硬貨の入った袋を差し出す。
「日本語が通じねえなあ」
ん?まてよ?日本語が通じない?
日本語が通じないのか。
俺がチート制作で作ったスキルは「言語理解」だ。
つまり相手の言語が理解できても、自分が話しているのは日本語のままということじゃないか。
「そういうことか」
俺は「異世界語を話すスキル」を制作した。
「モデ、ゲノセノポリフ、ドッペセモリ」
俺は流暢に異世界語を話し始めた。
「え?金じゃなくて女を出せ。ですか?あいにく食品や日用品しか積んでおりませんので」
「ドレンゲセプ、ネグレベッソュ!!!」
「ひいいいい!!!お尻だけはご勘弁を!」
俺の異世界語がおっさんに通じたようだ。
いや、ちょっとまってくれ。俺はいったい何を言ってるんだ。
自分の意志とは無関係に口が動いて異世界語を発しているんだが。
「『異世界語を話すスキル』いったん停止だ!」
俺は「自分が話す日本語を異世界語に変換するスキル」を改めて作った。
「すまん今のは無しだ。女もお前の尻もいらん」
「は、はあ」
おっさんは困惑しているようだ。
とりあえず言葉は通じているな。
「あんたを襲っていた盗賊は俺が倒した。俺は盗賊じゃないぞ」
「そうなのでございますか?」
「外を見てみろ」
おっさんが外を見ると謎の縛られ方をした盗賊たちが地面の上でもぞもぞと蠢いていた。
「俺は寛大だからな。殺さずに生け捕りにしてやったのさ」
「は、はあ」
「捕まえたのはいいが、この盗賊たちはどうしたらいいんだ?」
「う~~ん。これから私はボッカ村に向かいますので、そこで村長に相談してみますよ」
「そうか、あんたもボッカ村に行くのか。俺も行くところだったんだ。馬車に乗せて行ってくれ」
「もちろん、いいですとも」
盗賊も村まで運んでいくか。
俺は「馬車を作るスキル」で馬車を作った。
「いでよ馬車!」
ゴオオオオオォォォ
白色をベースにピンク色のラインなどが入ったメルヘンチックな馬車が地面から出てきた。俺の趣味じゃないな。
しかし、このチート制作、本当になんでもできるんだな。家も建てられるんじゃないか?
「うわあ、なんですかこれ!?召喚魔法ですか」
「そのようなものだ。この馬車に盗賊を入れて運ぶから、あんたの馬車と連結させてくれ」
「馬車2台だと重くて馬が動きませんよ」
そういうもんか。
俺は「一時的に筋力を2倍に上げるスキル」で馬の筋力を上げることにした。
馬にスキルを使うと馬がムキムキになった。
「ひええええ!!!」
「一時的にだが馬の筋力を上げた。これなら問題ないだろう」
「いったいあなたは何者なのですか!?」
「通りすがりの旅人さ」
ところで、この世界の馬というのは、ツノがないサイみたいな見た目なんだな。
騎士が乗るようなスマートさを感じないが、運搬用限定で使う動物なのだろうか。
俺は自分にも筋力を上げるスキルを使って盗賊を馬車に詰め込む。
メルヘン馬車に詰め込まれる盗賊。実に異様な光景だ。
「さあボッカ村に向かって出発だ」
おっさんでも異世界転生したい。チートを作るスキルで成り上がる 架空の世界を旅する物語 @kakunotabibito
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