第3話目覚め
長い夢を見ていた。それだけを覚えていた。
直前の夢の記憶は、俺の手をするりと抜けてどこかへ行ってしまった。
何だか悲しかった。そんなぼやけた印象だけが、心に跡となって残っている。
意識はしばらく夢と現実の狭間をふらふらと飛び回っていたが、やがて重力に引っ張られるかのように現実に不時着した。
目を開ける。
暗かった。少し目を彷徨わせるが、いまいち何があるかわからない。
手を動かすと、さらさらとした生地の感触が腕全体に伝わってきた。布団だ。掛け布団が俺の上に乗っている。
俺はそれを確認すると、とりあえず枕元に右手を伸ばした。習慣だった。俺は寝る時、メガネは必ず右上の置き時計の横に置く。伸ばした右手はいやに重く、同時に音が鳴った。
チャリッ
んっ?
何かがおかしい。
俺は違和感を探るべく、左手を右腕に沿わせた。手が右手首に達した時、何かに触れる。
ひやりとした硬い感触。一瞬指を離すが、すぐにもう一度触れる。
それは金属だった。俺の右手首に、ガムテープの芯のような金属の筒が嵌まっている。
そして、その筒から何かが伸びていた。
これ・・・鎖だ。
金属の冷たさに吸われるように、ぼんやりとした微睡の熱が一気に冷めていく。
そうだ。俺、異世界転生して。
おばちゃんがくれた果物を食べて。
意識を失った。
そうだ。そうだ。そうだ。
じゃあ、ここはどこ?
左腕を回し、敷布団の外を確かめる。左手が、冷たいざらざらとした床に触れる。
畳だ。
・・・・・・畳?
何度左手の位置を変えても、よく知ったあの感触が伝わってくる。
ここは・・・異世界じゃ、ない?じゃあ、今俺の右手に繋がれているこの鎖は何だというんだ?
異世界とは思えない。でも、元の世界だとしたら意味が分からない。
俺は今、どこにいる?
異世界でメガネを守り抜け! @sssuo
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