『博徒対テキ屋』(1964年/主演:鶴田浩二)


監督 小沢茂弘

脚本 小沢茂弘、村尾昭

出演 鶴田浩二、片岡千恵蔵、松方弘樹、島倉千代子、近衛十四郎



 こんなタイトルだけど、博徒要素は薄めで、ガッツリテキ屋の話。

 テキ屋一家の長男でありながら、いろいろあって家を飛び出し、博徒となった主人公を中心にテキ屋一家同士の対立を描く。

 テキ屋の世界ということもあってか、聞き馴染みのない言葉が飛び交い、正直解説がほしいほど。テキ屋用語なのか、それとも舞台となっている浅草の言葉なのか。


 オープニング・クレジットでは主演の鶴田浩二より先に御大、片岡千恵蔵の名前がデデーンと登場。片岡は主人公の父親役、つまり、テキ屋一家の親分でもあるので、さすがの貫禄を披露。

 主人公の弟役は松方弘樹で、なんとも濃いぃ親子だが、敵側の親分を演じるのは松方の実父、近衛十四郎なのだから、ややこしいにもほどがある。

 松方が近衛のもとへ殴り込み、殺そうとするのを鶴田が止めに入る虚実入り混じったシーンにはキャスティングの妙が感じられた。


 クライマックスの殴り込みでは、舞台となる遊廓のセットをフル活用。玄関から始まり、上へ上へと登っていく縦スクロール。ついは屋根の上がボスステージとなり、敵親分と対決。ここからオープンセットに切り替わって、屋根の上の鶴田と近衛、路上の野次馬と警官隊を同一画面に収めるカットの数々は90分のプログラム・ピクチャーとは思えぬスケール感。


 正直、描写不足の部分はあるし、前2作に比べるとパワーダウンしているが、それでも十分に楽しめる。なにより1年でシリーズ3作を撮り上げた小沢弘茂の職人ぶりに感服。



前作のレビューはこちら。

『博徒』

https://kakuyomu.jp/works/16818093088964222392/episodes/16818093089363888845


『監獄博徒』

https://kakuyomu.jp/works/16818093088964222392/episodes/16818093089922937083




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