第15話 頼らなければならない存在

ある日、店が落ち着いていた時にあいつが来た。

ふんわり香る酒の匂い。


「ママー。お金貸してー。」

「あんたに貸す金なんかないよ。帰って。それにここはあんたの来る場所じゃない。」


すると、そいつは僕のところに来て体を寄せてきた。…凄く酒の匂いがする。こっちが酔いそうなくらいだ。。


「涼太…いかせてあげようか?」

「いい。断る。ルイの言う通り帰れ。」

「この間はあんなに悦んでたのに?おまけに足りなくて動画まで送ってきたの誰?」


そいつは僕の首にお構い無しに噛み付いた。


「んっ…」

「我慢しなくていいのに」


すると、机で作業していた結月が立ち上がって、無言でその人を僕から剥がして店から引きずり出した。


少しすると冷静な顔で帰ってきた。


「…涼太、あの人出禁。ルイさんいいよね?」

「いいよそれで。ごめんね。」


僕は無言で結月の手を引いて資材庫へ入った。



「結月…」

「ふざけんな。」

「はぁっ……」


「ちょうだい。中に出していいから。」


結月が僕に体を寄せて直接体に爪を立てて来た。


「結月…」

「本当だったらルイさんとも縁切って欲しいぐらいだから。でもそんな事したらあたしも涼太もやってけない。だから頼ってんの。居ないと困るの。わかるよね?」


「わかるよ。」

「……出会う順番はあたしの方が後だったけど涼ちゃんは私のものなんだからね。」




26歳になる大人の結月。

でも毎日が可愛くて、毎日が愛しくて…。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Dear Princess 海星 @Kaisei123

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る