第19話「晴彦を追って」

第十九話「晴彦を追って」


 俺たちは、またボス部屋に来ていた。

 しん、としている。


 そんな中、俺たちはボス部屋を調べまくった。特に、何ということもなかった。


「くそっ!! ここから先に行かないと、何もならねえよな」

「繭村。あまり、自分を責めるな。あれは誰でも止められなかった」

「俺が何もできなかったことに悔やんでいるんじゃない」

「じゃあ、何だ?」

「何もわかっていないことが、悔しいんだ」


 俺たちは次の街へ向かった。


「都市、コーンコープ」

「それが次の街か。どこを見ても、トウモロコシがあるな」

「トウモロコシの街ってわけか」

「腹が減ってきた」

「ああ。今まで、トウモロコシはなかったからな」


 トウモロコシをもぎ取って、火で焼いた。


「美味しそう……。食べていいんですか?」

「NPCに、聞いたら、食べていいそうだ」

「へえ。しばらく食には困りませんね」

「ああ。全部無料だそうだ。何でも食べないと、勝手に生えてくるんだと」


 晴彦はいま、何をしているのだろうか。


「晴彦さん、どこ行っちゃったんでしょうね。お腹、空かしているでしょうか」

「触手のモンスターなのか、触手を持った人間なのか」

「人間だっていう見立てなんですよね」

「そうだ。じゃなきゃ、ボス部屋に入れないはず――だ」

「じゃあ、この街にいるかもしれない――と」

「それはわからない。あとで、聞いてみる」


 ありがとう、美優。と、言った。


 じゅう、じゅう、とトウモロコシが水分を噴き出してきたところで、焼くのをやめた。

 その時、醤油を塗った。

 少しだけあぶって、みんなに配る。


「うわあ……じゅるり」

「とりあえず、食べよう」


 元気のない言葉だったが、みんな、一生懸命にそれを食べた。


「はぐ、はぐっ! 熱っ! 美味しい!!」

「うまいな、これ」

「これがタダなのか」

「そうみたいだぜ」

「こんなの、ヨシワラでも食べたことない」


 みんな、それぞれに言って、すぐに平らげてしまった。


「よし。俺は、情報収集をする。みんなは、街でゆっくり休んでてくれ」

「わかりました」


 俺は単独で、トウモロコシを二、三本常備させながら、街の郊外に住む、NPCに話を聞いていた。


「触手のモンスターか。見たことあるぜ。きっと、次のボスだろう」

「次のボスが触手のモンスターなんですか?」

「そうだな。次というか、この上の層だが……」

「なるほどな……」


 つまり、ボスしかボス部屋には入れないという見解で合っていたということだ。

 ならば、人間しか入れないから、人間がモンスターに化けて、来た――と考えたが、その次のボス級モンスターであると考えれば、辻褄は合う。

 だから、ボス部屋にはボス級モンスターしか入れない。それで合っている。


「よし。そこに晴彦はいるというわけだ――」


 すぐに、次のボス部屋へ向かった。


 ギギギ……。

 扉をゆっくりと開ける。


 もう、慣れたことだった。


「触手……だ!!」


 NPCに聞いた通り、触手のモンスターに変わりはなかった。


「お前えええ!!」


 剣を引き抜き、それに向かっていった。

 伸びてくる触手を斬り上げる!! それから、思いっきり、怒りに任せて、顔を斬った。


 そして、口から、ドルンと、晴彦が出てきた。

 俺は、それを抱えながら、ボス部屋から出た。


「はあ、はあ、はあ……」


「晴彦!! 晴彦!! 起きろ!!」

「う、うう……俺は……」

「晴彦!! 晴彦!!」


 何度も、晴彦の名前を呼んだ。


「うるさいな……。起きてるよ……。もう少しで胃酸で溶けるところだったぜ……」

「ははは!! よかった……」


 そのよかったには、いろんな意味が込められていた。


「トウモロコシを食べよう。というか、食べろ」

「うまそうだな……ありがとう」


 晴彦はトウモロコシを齧った。


「うまっ。焼いてるのか?」

「焼くしか能がないからな」

「ははは。もっとうまいのがあるのか?」

「あるぞ。俺たちは、街へ到着した。トウモロコシの街――コーンコープだ」

「そんなうまい街があるのか」


 そして、コーンコープへ戻った。

 服を着替えて、みんなのもとへ向かった。


「お前ら!! 生きてたか!! よかった!!」

「ああ。胃酸で溶けそうだったぜ」

「そうか……。よし!! みんなで、トウモロコシパーティーだ!!」


 うおおお!! と叫んだ。


 トウモロコシを齧りまくる。


「うめえ!!」


 レンダと陰で、話した。


「次のボスが、来たから入れたというわけか」

「そうだ」

「なるほど。じゃあ、まだ人間=モンスターではないとも、まだ言えるわけだな」

「そうだ。モンスターが人間である。つまり、人間からモンスターへ変わるという説は一旦否定できる」

「じゃあ、あの人型モンスターは何なんだろう?」

「そこはまだわからない」

「ああ」


 そして、俺たちはみんなのもとへ戻り、トウモロコシを食べまくった。


「ふああ。腹いっぱいだ!!」

「とにかく、晴彦が戻ってきて、よかった」

「本当ですよ。みんなお通夜ムードでしたからね」

「はは……すまなかったな」


 それから、トウモロコシを食えなくなったところで、宿屋で爆睡した。

 最近、疲れていたのだな――と思った。



あとがき


どうも。今回もお読みくださり、ありがとうございました。


今回の街は、食べ物の街、トウモロコシの街です!


美味しそうですよね。


しばらく、この街での話になると思います。


触手モンスターはなぜ、あのボス部屋にいたのか?


それはまだまだわかりません。

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