童話「オーロラちゃんとわたし」
ありもと優
第1話
わたしは妖精が見える
そう大人に伝えると
みんなヘンテコな表情になる
ああ、困っているんだなぁと思って
わたしは静かに黙る
学校へ行く途中の道端に
花壇があるの
春には綺麗なお花が咲く
チューリップもかわいいよ
だけどね
近くの木の枝から伸びた
葉っぱさん
そこには妖精さんがいるんだ
わたしは妖精オーロラちゃんと
時々お話するんだ
オーロラちゃんは わたしに
小さな声で話さないとだめだよと言う
わたしが変な子供だと思われるんだって
オーロラちゃん賢いね
わたしはオーロラちゃんから
ちいさな石ころビーズをもらったよ
キラキラ黄色に光る石なんだ
少し穴があいていて
そこに糸を通して
ネックレスを作ったよ
うれしくて
どきどきして
わくわくして
すぐにオーロラちゃんに見せたかった
でも金曜日だった
月曜日の学校の日まで辛抱しなきゃ
土曜日も日曜日も
ふわふわしたこころ
やさしい気持ちで
ネックレスを見ていたよ
月曜日の朝
学校へ行く道の花壇が
なくなっていた
近くの木の枝は切り落とされていた
オーロラちゃんは
どこにもいなかった
一日中、目のすみから
涙がにじんだ
小袋に入れたネックレス
スカートのポケットに入れて
服の上からずっと触っていた
どうして
どうして
オーロラちゃん
午後の授業中に
突然 大雨が降ってきた
体操が中止になった
窓際で着替えが終わって
スカートのポケットを確かめた
ない!
ネックレスの小袋がない!
わたしは すぐに
机のなか、ランドセル、身の回りを
一生懸命に調べた
どうしても
ネックレスの小袋はなかった
級友が
「どうしたの?さがしもの?」
と言って、わたしに見せたもの
わたしのネックレス!!
「こんなの、学校に持ってきちゃダメだよ。先生に渡すからね」
「お願い!!返して!!」
「だめーー!!」
そのとき誰かが一気にカーテンを開いた。
大雨は止んでいた。
教室にひかりが射して
明るくて まぶしい
西の空に虹の橋が架かっている
「わあ!きれい!こんなネックレスより何倍もきれい!!」
そう言って級友は、
わたしにネックレスを返してくれた
わたしは、その虹を見た。
虹の真上にオーロラちゃんの笑顔があった。
わたしは
こころの中でひとり呟いた。
「オーロラちゃん、ありがとう」
童話「オーロラちゃんとわたし」 ありもと優 @sekai279
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