20 ギルバート

 大通りを埋め尽くす人! 

 空でゆれる吊るされた赤、黄、オレンジの三角旗! 

 まだ燃えていない松明と蝋燭の列! 

 道路脇に並んだ屋台!

 脂っこくて食欲をそそる匂い! 

 屋根の上で酒を飲む大人たちに、道路わきで駆け回る子供!


 俺は城を出るとまずはその光景を目に焼き付けた。


 城は少し高めの丘にあって、祭りの中心地である広場まで緩い坂が続いている。その道沿いの全てが、ド派手なお祭り騒ぎなんだから圧巻だ。それにあの丘にある大神殿まで続く道も、こんな感じらしい。

 俺は大神殿を見上げた。この位置からだと、神殿の真っ平らな屋根だけが見えていた。


 やっぱ祭りってすげーよな。

 何年ぶりだろうな、この景色。最後に見たのは孤児院に居たときだ。あの時はまだ小さかったし、よく覚えていないけど、花火の音のデカさに驚いたのと、濃い味付けのフライが旨かったことだけは何となく覚えている。


「楽しそうだね、ギル」

「そりゃあそうさ。この空気感! 楽しいだろ?」

 俺は両手を大きく広げた。

 シャルも楽しそうに笑っている。


「ほら、行こうぜ。今日は食いまくり、買いまくりだ!」


 俺は屋台の列に照準を合わせると、人の群れ目掛けて一気に駆けだした。

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