第9話
メディアの周りには常に小さき声で取り囲まれていた。
遊ぼう、遊ぼう、あれをしよう、これがやりたい、あいつにあれをしたいなあ。
己以外の人間には誰も聞こえた者はいない。審問官仲間の少年少女、大人達でさえもが反応すら示さない。
天使さま、メディアはそう呼んでいる。おとぎ話の少女達みたいに天使に導かれ、常人の域を超えた結果を迎えるのかな、と自惚れかもしれない事をよく考える。
声達はそれを聞くと、違うよぼくらはメディアと遊びたいんだ。そのうちすごい事が起こるかもね、等といった様々な反応を示している。
遊ぼう、遊ぼう、それ行こう。
審問の鎧を纏っているメディアは声達に導びかれて、廃屋の集落へと歩を進めた。
邪教徒がどこへ隠れていようともすぐに分かる。屋根が半分崩落した居住跡地に入ると、血溜まりと悪魔像を誂えた集団がはっとした面持ちでメディアへ視線を向けていた。
「さあ皆、遊ぼうね」
はーい、とメディアにしか聞こえない、ワクワクした返事達と共に、鎧の表面にある複数のコブの様な金属体が浮かび上がる。それぞれが小型の翔翼を展開し、「金属の虫」の軍隊が邪教徒どもへと殺到した。
立っているだけのメディアだが、邪教徒の集団は七転八倒の嵐である。
あっちに逃げたよ、そうね追って、メディアは指示をするだけだ。
大方片付いた。邪教徒達は虫の口に当たりそうな箇所から繰り出される針に刺され続け、絶叫の合唱と共に、血肉の晩餐を捧げていた。
「そろそろ燃やそうか」
”火刑承認”
たかって針を突き刺していた虫達が炎を注入し、対象の邪教徒達が内側から燃え上がる。
一瞬にして奇妙な焚き火に囲まれたが、メディアは涼やかに虫を回収し、後を去る。
「帰ってご飯にしよ。トウィートと今日は何を話そうかなあ」
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