第8話
月夜の風に乗って歌声が舞う。
星の明かりのように儚く、かといえば月のように輝く時もある。
トウィートは喉笛を止めて、一息を吐いた。
食事の席での一興の歌で一時的に気持ちが良くなったが、その後の胸の蟠りを鎮める為に外でも歌った。
聖歌隊に所属していた頃は軽い気持ちで晴れやかに喉を躍らせたが、今では薄汚い人買いの前で品定めされるかの様である。
とりわけライルには違和感を覚える。近い年代でありながら、己以外には目もくれず機械の様に動き続ける事が不安なのだ。
暗 い毎日を晴らす為に一席を設けたが、完全に無視をする彼に対しては思う所があった。
ガイストと仕方の無い奴だと苦笑したが、あっちには思わず不満を漏らしてしまった。
それでも私はまとめなきゃ
トウィートは年長者であるが故に、己の背に自ら責務を背負わせてしまう。それが無ければ枷を感じる様な生活は薄まるのであるが、聖歌隊では周りの後をついて行く状態であったために、責務を全うしたかったのだ。
「よし、明日はあいつをとっちめちゃお!」
以前もライルに挑戦して敗退しているのだが、数こそ結果に繋がるのである。
体が冷えてきた。中に戻って温かい茶を飲もうと動こうとした時である。
「あ」
流れ星が見えた。星空の天蓋を裂くかの様に、見惚れる一筋が目を奪った。
(明日は良いことあるかも)
流れ星は願い事を叶える幸運である。しかし、時には凶兆を指す事も、姿を消したトウィートは知らなかった。
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