第7話
ボレイヌは小貴族の出である。
地方にて箱庭暮らしをしていたが、父親の叱咤により、将来の為にこの砦で暮らしている。
任務にはクビにならぬ程度に放棄している。
ライルとガイストがいれば基本的に事足りるし、気持ち悪い人間相手に七面倒臭い作業を好んで行う馬鹿はいない。
さりとて図に乗る発想は決して持てなかった。ガイストに頼るしか無いのは己自身も分かっている。その上ライルは鬼である。明らかに同年代にはない殺気を放ち、言葉を交わす事すら睨みを利かせているのだ。
安全ではあるが、針の筵。一寸先は闇。時折、後の無さを感じては操り人形の様に邪教徒を捕まえに行くしかない。ユダのゆりかご(読者の為に名を使う)で痛めつけ、脅す事は出来るが、未だに血を見て立ち眩み、飯の前に思い切り吐いてはまずいものを口にする事が辛い。
しかし、彼にも癒しがあった。聖歌隊に所属していたというトウィート、近い年齢の歌姫の一興で明日への活力を今日得る事が出来たのだ。
いつか彼女をモノにしたい、頭の中で必死に考えた口説き文句を今こそ言おうと足に力を込めるが、立ち上がるまでには至らなかった。
ライルが蛋白に飯を終えてさっさと出ていく事に心配そうに目をやるトウィート。今日も頭の中でライルをしばく妄想でお茶を濁すしかなかった。
小物に見えるかもしれない。しかし、ライルよりかは子供らしい子供だと安堵する大人がきちんと存在している。
貴族の倅が突然襲ってきた不幸な毎日にもんどり打っているだけなのだ。
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