不揃いの旅人たち 〜自分のことが好きすぎる女子たちと嫌いすぎる男子と一緒にに異世界転移した結果〜

筆無/フデナシ

第0話 世間一般ではプロローグと呼ばれるやつ

NO side

ある日のこと、駅から少し離れた道路を、2人の男女が話しながら歩いていた。


男1「限定イベントでさ、今期間限定のステージが解禁されててさ」

女1「どんなステージなの?」

男1「なんかめっちゃ山奥みたいなとこでさ、高低差がすごいのよ」

男(男1)は、スマートフォンで画像を示しながら女(女1)に説明する。


女1「これは確かにすごいね…登れるの?」

男1「一応このステージでお試しで使えるキャラ使えば、ある程度は行けるんだけどね…こんな感じに」

そう言って男は、実際にキャラクターを使って崖を登ったときの映像を見せる。


女1「本当に、相馬はすごいね…私にはこんなのできないよ…」

男1「姫華の言うほどすごくないよ…。単純にめっちゃやり込んでるだけで、基本操作に慣れれば簡単なんだよ?」


男...もとい相馬悠雅(そうまゆうが)と、女...古屋姫華(ふるやひめか)は、そんな話をしながら道路を進んでいく。

道はかなり開けているが、人通りはほとんどなく、会話する声が延々と広がっていった。


悠雅「だいたい、姫華はやったことがないからできないって感じるだけなんじゃないか?別に俺の家で練習しててもいいが。」

姫華「いやいや…今は成績のほうが優先だよ…」

悠雅「真面目だねぇ…」


まず前提として、この2人は付き合っている。あまり気が合わなそうに見えるかもしれないが、うまくやっていけているようだ。

この2人が付き合い始めるのには、複雑な時系列を一から説明する必要があるため、今は省くものとする。


悠雅「それでさ…あ」

そんな他愛もない会話をしていた時、悠雅の目の前に2人組の女の姿が。

女2「…あ」


悠雅と姫華が足を止めると、それに気づいた2人も足を止めた。

片方の女は赤いカラコンをつけており、もう一人の女は紺色の髪をしていた。


女2「…よう。久しぶりだな、悠雅」

赤いカラコンの女は、気まずそうな顔をしつつも気さくに話しかける。


悠雅「上村も、元気そうでなによりだよ。それにナ………唯月も」


悠雅は、居合わせた2人組の女...上村舞夕(かみむらまゆ)と、唯月奈緒(ゆずきなお)を嫌そうな表情で見つめながら答える。

(赤いカラコンつけてるほうが上村舞夕で、髪の毛紺色なのが唯月奈緒)

舞夕と奈緒の2人は、悠雅と姫華に見せつけるように腕を組んでいる。


姫華「久しぶりだね、ふたりとも。」

舞夕「久しぶり。」

悠雅「…。」


姫華と舞夕は普通に会話を進めるが、悠雅はさっきの挨拶以降声を出さなくなってしまった。先ほどまでの元気はどこに行ったことやら。


奈緒「僕達はこれからデート行くところなんだ。そっちは?」

悠雅「それは…」

姫華「奇遇だね。私達もこれからデートだよ」


口ごもりながらも発言しようとする悠雅を遮って、姫華は、悠雅の腕に手を回し、無理やり腕を組んだ。

姫華は言葉のテンションは高いが、目が明らかに笑っておらず、まるで2人を敵視しているようだった。


舞夕&奈緒「…え?」

姫華「…え?」


周囲にとてつもなく気まずい空気が流れる。


舞夕「2人って…付き合ってたの?」

姫華「あれ、言ってなかったっけ?今年の5月くらいから正式にお付き合いしてるけど。」


困惑する舞夕に、姫華は目を細めながら言った。


奈緒「…それは正しいのか?悠雅。」

悠雅「…言わなくてもわかるだろ。」

悠雅に視線を向ける奈緒に、悠雅は少し怒り気味に言った。

舞夕&奈緒「………」

悠雅&姫華「………」


周囲に、またとてつもなく気まずい空気が流れる。


舞夕「…ふたりとも、ちょっとタンマ」


そう言うと、舞夕は奈緒を連れて2人から数歩離れ、コソコソ話を始めた。


舞夕「どうしようどうしよう!?あの2人付き合っちゃったよ!?私達の告白大作戦丸つぶれじゃん!!」


奈緒「いやいやいやいや、まだ焦っちゃいけないし!逆にこの状態を活かしてもっと案を作れれば…!」

※会話のテンション的に『!』を入れているが、この会話は悠雅と姫華の耳には届いていない。


奈緒「…それに、僕達ならきっと大丈夫だよ。焦っちゃいけない」

舞夕「そうだね奈緒ちゃん。よーし…」


そんな会話をすると、2人は悠雅たちの方へ戻ってきた。


舞夕「いやぁ〜びっくりしちゃったよ…まさか2人が付き合ってたなんて」

悠雅「そんなに驚くことか?」

舞夕「驚くでしょ…言い方悪いかもしれないけど、中学の時はそんな気が全然なさそうだったんだもの。」

姫華「なにか問題が?」

舞夕「そういうわけじゃ…」

奈緒「そんなことより!…今はそれぞれのデートに集中しない?」


姫華の舞夕を睨む目つきが更に鋭くなり、まさに一触即発の状態だったところで、奈緒が無理やり場を収めた。


悠雅「…それもそうだな。行こう、姫華。」

舞夕「そうだね。またね。」

姫華「またね2人とも。あ、相馬。腕組むのはやめていいよね。相馬が背高いからちょっと大変で…」


そう言葉を交わし、2組がそれぞれの方向へ歩いていこうとした時


男2「おっと!全員こんなところで何してんだよ!なんか4人で盛り上がっちゃってさあ…」


その言葉を聞くやいなや、4人は足を止め、声の方向を向く。そこには、1人の男がいた。


奈緒「お前…」

姫華「なんでこんなところに…」


その男の姿を見るやいなや、奈緒はまるで漫画で主人公が因縁の強敵と対峙したときのように警戒心丸出しの目つきをし、

姫華は相手を強く睨みながらも悠雅の後ろに隠れるように回り込んだ。


男2「おいおい…なんでそんなに警戒するんだよ…」

悠雅「それはお前が中学の時に警戒心が上がるほどやんちゃしてたからじゃないか?並木。」


悠雅はその男...並木神次に向かってそう言った。


神次「お前はいっつも俺を苛つかせるようなことしかわねぇな…まぁいい。」

神次は少し大げさな身振り手振りをしながら4人に声をかける。

神次「にしても懐かしいメンツが揃ってるなぁ。相馬、古屋、唯月、それに上村さんもね。」


神次は、悠雅にだけ口調を強め、なおかつ舞夕にだけ不自然に敬語をつけて話す。


奈緒「…なんの用?」

神次「おいおい。そんな敵対した目で見ないでくれよ。俺は“たまたま”ここを通っただけだ。」

神次は『たまたま』の部分をやたら強調させながら言う。


悠雅「並木の場合、この先の駅に用があるならこっちだとだいぶ遠回りなんじゃないのか?」

神次「ケッ、うるさいなぁ…別に理由もなく遠回りしたって良いじゃねぇかよ…」

悠雅「…それもそうだな。」

悠雅のもっともな意見に、神次は相当怒りをあらわにして言う。


神次「まぁそれはともかくだ。楽しそうなことしてんだったら俺も混ぜてくれよ。そのほうが面白い。」

悠雅「あいにくだが、俺達は別に楽しそうなことしてたわけじゃないぞ」

神次「…なんだと?」

舞夕「お互いデート中にたまたま会っただけだよ。」

神次「…はぁ?」

そう言って首をかしげた神次は、悠雅に目線を向ける。


神次「そうかぁ…お前…今度は古屋なんかと付き合い始めたのか…へぇ…」

そう言って、神次は悠雅の方へ少しずつ歩いていく。


神次「たしかお前は…ちょっと前…中学卒業するまでは『唯月と付き合ってた』よな…一体どういう風の吹き回しだ?」

奈緒「お前…」

舞夕「言ってはいけないことを…」

悠雅「あいつは…唯月は、俺じゃなくて上村を選んだらしい。」


悠雅はうつむきながらそう答える。

姫華「相馬…」

神次「つまりあれか?自分にとって都合の良い女がいなくなったから、代わりに違う女選んだってわけか?確かに古屋はお前と教室でいっつも一緒にいたし、そういう雰囲気作ったらおとせそうだけどよぉ…」


悠雅「そんなんじゃ…」

神次「どうせそんなんだろ!そんな短期間で前の女諦められるほど!お前の精神が強いとは思えねぇけどなぁ!!!」

神次はうつむいたまま動かない悠雅の顔を下から覗き込んでそう言った。


奈緒「お前…!」

その言葉にしびれを切らした奈緒が、神次に殴りかかろうとした時____

ゴーン........ゴーン........

どこからとも無く、なるはずのない鐘の音が鳴り響く。

そして、5人の足元一帯に、大きな魔法陣のようなものが展開される。


神次「………は?」


奈緒「鐘の音………?」


舞夕「なんで………?」


姫華「…………え?」


悠雅「なんだ………これ?」



その瞬間、5人はまるで地面が突然なくなったかのように、その魔法陣に吸い込まれていった。



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読んでいただきありがとうございます。筆無と申します。

まちまちペースで書き進めていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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