春爛漫

第24話

桜の花びらが、近所の公園からうちの前まで飛んできている。


「がわい゛い!! がわい゛いぃ!!」


限界みたいな声を出しながらシャッターを切り続けている音がしていた。


「そんな泣かないでよ……あとで園の門の前でみんなでも写真撮るんだから」

「だって! こんなん無理じゃない?! 泣くに決まってる!!」

「分かったよ」


家の前で俊介くんの被写体になりながら、新品の制服を纏ってはるも満更でもなさそう。モデルさん気取りであれやこれやとキュートなポーズを取っている。

制服を受け取りに行った日、はるに着方を教えていると俊介くんは真っ先に圭介さんのお墓に連れて行った。『着たとこ1番に見せたい』って。


『ねえはる』

『なあに』

『あっは! その聞き方お母さんにそっくり。……ねえ、はるのお父さんはね、お星さまになっちゃったでしょう』

『うん。お星さまからみてるのと、あとここでねてるの』

『そうだね。でね、おいたんははるとひよとお母さんのことが大好きだから、はるたちのお父さんの代わりにならせてほしいの』

『おいたんがおとうさんになるの』

『うん』

『いいよ』


お墓の前で、はるの前に屈んで一生懸命語ってくれる彼を私はずっと見ていた。

ぎゅうう、と俊介くんははるを抱きしめる。


『俺、はるが大好きだからね』

『うん、しってるー』

『っは、そんなとこもそっくり。ねえ、おいたんのことは?! 好き?! ……あ、もうおいたんじゃないんだった』

『すきすきー』

『はるってばドライね!』


思い出しては胸が温かくなる。壊れた家族の欠片が埋まって、きっとまた新しい形になっていく。


「ほらそろそろ行こ?」


俊介くんとの間にはるを挟んで手を繋いだ。グレーのスーツを着た彼はひよを反対の腕に抱き、ひよからも「えへえへへへ!」と終始嬉しげな笑い声が聞こえている。


「「「いってきます!」」」

「「いってらっしゃーい!」」


振り返ったらお義父さんとお義母さんが庭まで出てきて手を振ってくれていた。じわ、と涙が滲む。慌てて空いている手で拭った。


「俊介くん。……わたし、幸せだ」

「おっ……。やめてよ、決壊するから……!」

「もうしてるじゃん」

「せっかく泣き止んだのに! 手塞がってて拭けねえし」

「もー! おいたんほんとなきむし!」


はるがよしよしと届く範囲のズボンを撫で、ひよまでがぺちぺちと俊介くんの頰に触れる。私に笑われながらハンカチで顔を拭かれ、俊介くんはぎゅっと私達を纏めて抱きしめて泣き笑いをした。

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お嫁さんと義弟くん。 @NatsunoMarin

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