サクッと軽い読み味の中にも、確かな人間ドラマが光る良作
- ★★★ Excellent!!!
キャラクター小説ってこういうことなんだなと、はっきりと理解させられました。
コンテストの大賞に見事輝かれたということで、普段さしてラブコメを読まない人間ながら読んでみたのですが……いや、率直に言って面白いです。すらすらっと読み終わってしまいました。
今作で何より魅力的なのはキャラクター。特にメア先輩の可愛さは群を抜いています。あまりにもまっすぐで、危なっかしくて、だからこそ放っておけない。かと思えば恋には臆病で、自分の気持ちに言い訳してばかりで素直になれない。この「子どもみたいな無邪気さ」と「年相応の乙女心」を持つ二面性が大きな魅力です。
対する主人公はメア先輩以上にまっすぐで、自分の気持ちに常に素直です。もうメア先輩を落とすと決めたら、うじうじと悩まずそれに全力な姿勢が大変好感が持てます。この二人の関係性が見ていてとても楽しい。
文体もしつこさがなくすらすらと読めて、内容も一話完結形式の話が多くあり非常に読みやすいです。かと思えば、二人の恋を軸にした葛藤を中心に展開される、ちょっぴりシリアスめなパートでしっかりと人間ドラマを展開できている。このおかげで物語が単調にならず、しっかりと波があって楽しめます。明るく軽い雰囲気が続いていたところに、器の件でメア先輩が落ち込んじゃうシーンとか、もうね、刺さる。ラストシーンも本当に良いです。お前らはやく結婚しろ。
展開が少々飛ばし気味な部分はありますが、おそらくコンテストの規定に収めるためだったのかな、と思います。書籍化されることがあれば、ぜひ追記していただいてもっともっと二人の焦ったくてあまあまな物語を読ませていただきたい!
総じて完成度が高く、コンテストの受賞も納得の出来栄えの良作です。楽しい作品をありがとうございます!